船幽霊1
付喪神が終わり次は何書こうかなー?って口走ったら、「恋愛モノが見たい」と言われました。船幽霊です。
生温かい風に乗って気持ちの悪い雨がしとしとと降り続いていた。
毎日降り続く雨は人の心までもジメジメさせる。
天気予報でも全く予測できなかったその雨は、まるで陽の光が降りてくるのを拒んでいるかのようだった。
佇む女が一人、雨の中傘もささずに浜辺に座り、ただボーっと海を見つめていた。
寄せては返す波の音で雨音は聞こえない。
そんな空間だった。
砂を踏む音がする。
足音だ。
足音が少しずつ近づいてきて、女のすぐ後ろで立ち止まった。
「すいません。ちょっといいですか?」
男の声がした。
女がゆっくり振り返るとスーツ姿の男がやはり傘もささず立っていた。
「なんでしょうか?」
女は面倒くさそうに振り返ると返事をした。
「いやぁ、こんな雨の中、浜辺で女性が一人、何してるのかなって」
「何もしてません。海を見てるだけです」
言うと女は再び海の方へ体の向きを変えた。
「なんていうか、彼氏に振られ寂しくて海を見てるのかなって」
「違います!」
女は男に怒鳴りつけると視線を再び海へと戻した。
少し雨が強くなった気がした。
気のせいかもしれない。
男は顎に薄っすらと生えた無精髭を手で撫で、反対の手を自分の腰に当てた。
「まぁアレだ。ちょっとオジサンと珈琲でもどおかなぁ〜って」
「ナンパだったんですか?」
女は男の方を見向きもしなかった。
「天気もこんなだし、女性が一人海を見つめてるから、放っておけなくてね」
「お節介なんですね。でもそーいうのは間に合ってるんで」
「ふぅむ、つれないねぇ」
そう言うと男はくるりと女に背を向けた。
「またくるよ」
足音がし出した。
男が女から離れていくのだろう。
女はため息を漏らすと小さな声で言った。
「来なくていい」
雨が少しだけ弱くなったような気がした。
男は背を向けたまま手を振り去っていった。
小さな雨音と波の音を残して……。
小説版二作目スタートです。
のんびりやっていきます。




