第21話 テスト
その後はシルバと別れて、大雅と合流した。
大雅に話を聞いてみたところ、『ツーライン』にいたら、突然重大発表があるとか言われたらしく、私を呼び出そうと思ったそうだ。
その後はしばらく大雅と一緒に遊んでから、ログアウト、現実の自分のベッドから起き上がり、カレンダーを確認する。
討伐作戦は10日後、私が参加できるとしても、東京に行くより前には終わっているのか.....
そう考えて、下に降りると、いつの間にやらもう午後6時、どうりで腹が減っているわけだと思って、ご飯を作り出す。
今日から6日間は両親が家にいない。というのも、二人はお母さんの実家、ロシアの方へ行ってるからだ。
こう言ってはなんだが、私はあまりロシアの方の祖父母には好まれていない。まあ、結婚すら反対していたらしいから当たり前なんだけど....
それに今回お母さんを呼んだのも、お母さんに新しい婚約者を見繕って、お父さんとは離婚させようとかいうのだろうから、私は行かないことにした。
まあ、そんなことはいいのだ。ここで重要なのは私が6日間好きにゲームできるということだ。
とりあえず、適当に野菜炒めなどを作ってから、食べる。
その後はお風呂に入り、歯を磨いて寝る準備を整えてから、再び仮想世界へと入る。
中世の街並みを軽く眺めてから、一言、
「これから、5日間でどれだけ上げられるかが勝負か......」
呟いてから、私は『悲しみの戦場』エリアへと踏み出した。
♦︎
そして、そこからの五日間は割と早く過ぎた気がする。
『ガールズ・オウス』のメンバーと共にフィールドに出たり、大雅やシルバと共に遊んだり、そういえば、どうしてあの時、セレネさんが私に『ツーライン』で演説することを伝えずに、ただ用事があると言って去っていったのかを聞いたら、
「いや〜、恥ずかしかったんですよ」
だ、そうだ。
まあ、大勢の前で演説させられるのを見られるのは誰でも嫌だよね.....
とりあえず、かっこよかったですと、フォローすると、彼女がジトッとした視線で睨んできたことを記しておこう。
現在、私は『ツーライン』の街にいる。
テストは午後7時から、とりあえず『ガールズ・オウス』のギルド内で、みんなとお茶を飲みながら話していると、セレネさんがやってきて、
「みんな、そろそろテストだから、広場に行きましょう」
と、行ってくる。
ちなみに、セレネさんとあの時ステージ上にいた男2人はもうメンバーとして決まってる。
私たちが広場の真ん中までくるとそこには50人ほどが集まっていた。
発売日からやってた人は大体1000人だから、もっと多いかと思ったけどそうでもないらしい。
まあ、戦闘組ではない人もいるよね、と考えながらふらふら歩いてると、
「はーい、じゃあこれからテストやりまーす」
と、非常にやる気のなさそうな声で話し始めた人がいた。あの人は......セレネさんとステージ上にいた人だ。
少ししか見れなかったがその記憶を頼りになんとか思い出す。
男は一本の剣をすらりと抜いて、一言、
「テスト内容は俺と30秒間戦って、HPを全損しないこと、タンクはバフとかかける時間は待ってやるよ」
随分と簡単な試験だなと、思って周りを見てみると、全員が非常に張り詰めた表情をしている。
不安になり、隣のセレネさんに事情を聞いて見ようとした瞬間、
「よし、じゃあこの子から行きまーす」
ポンと、軽く背中を押されて、広場の中央に出された。
周りからは勇者を見る目、つまり.....嵌められた....
セレネさんに視線を向けたら、彼女はぐっと、サムズアップして、
「相手はこのゲームNO.1プレイヤー、イクサスです。めっちゃ強いけど頑張ってくださいね」
「うっそでしょ!?」
私が戻ろうとするよりも早く、彼、イクサスは私に、
「お嬢さんが最初のチャレンジャーだな、よしやろう」
と、声をかけてくる。
も、もう逃げられない.......
♦︎
「よし、じゃあこのコインが地面に着いた瞬間からゲームスタート。HP全損せずに30秒か、おれに一撃加えたら勝ちだ。」
そう言ってくる彼に軽く頷きながら、彼を視る。
最近、習得した『危険察知』スキルを通して見た彼からは赤いオーラが漂っている。
これは相手のステータスが自分より高ければ高いほど、色が赤黒く変わっていくのだが、この赤はmobだとしたら多少気を引き締めてかかる程度、けれど相手をトッププレイヤーだと考えるならかなりまずい。
そこまで考えてから、スキルを解除、剣の柄に手を触れる。
そして、コインが軽い金属音と、共に宙に舞い、落ちた瞬間、私と彼の体がぶれて、立ち位置から、お互い少し近づいた場所で、二本の剣と一本の剣をぶつけあわせた。
左右の剣を残像が残るほどの速度で振るが、それを彼は一本の剣と反射神経のみで躱す。
時折、挟み込まれる攻撃はどれも速過ぎて、パリィなど取れそうにもない。
「ッッ!?」
剣を横振りした瞬間、彼の体がフッと消える。そして、次の瞬間には私の視界が空を向いていた。
まずいと思った瞬間には目の前の彼はすでに『闘技』を発動させている。
紅い輝きを纏った剣が私の首に迫るが、なんとか間に、『エルシオン』を挟み込み、一撃死を防ぐ。
軽く吹き飛んだが、そのおかげで距離を取ることができたと、思ったのも束の間、もう彼は私の方へと迫っている。
振り下ろしの一撃には蒼い輝き、普通ならここで負けだった。
実際に、イクサスも勝利を確信してるだろう。
けれど、彼はまだ知らない、二刀流の『闘技』には、今まで確認された『闘技』の中でも二番目に技の出が早い『闘技』が存在することを、
私は、最後の望みをかけて、その『闘技』の発動体勢を整える。使う技の名前は『リーヴァ・レイド』、二刀流の熟練度400ボーナスの技だ。
蒼い輝きと共に振り下ろされたその一撃に、ほとんど真横から、『エルシオン』を叩きつけて、その軌道を変えながら、『エンブレスフレイム』をイクサスの胸元に叩き込む。
このスキルは5連撃、まだ終わりじゃない。
さらに紅い剣をそのまま切り上げて、黒い剣を振り下ろす。そして、ラスト一撃、『エンブレスフレイム』で胸元に突きを放ち、そのままイクサスを吹き飛ばした。
や.....やっちゃった......




