第13話 上級者の横暴
翌日、私は学校に登校し、適当に話を聞き流してから、夏休みの宿題だのなんだのを貰って家に帰ってきた。
ちなみに大雅が、私に話しかけようとしてたけど、女子連中に夏休み一緒に遊ぼうと誘われまくってて、ダメだった。
.....後で私から聞いた方がいいのかな.....いや、いっか、どうしてもってことなら向こうから話しかけてくるはずだし。
まあ、私も結構誘われたけど、もちろん全部お断り、今の時期、海やプールみたいな人口密集地に行くよりも絶対VEの方が楽しいに決まってる。
そして、現在下校中、私は今後のスキルの割り振りなどを頭の中で考えながら、家までの道を歩く。
すると、
「おーい、紫織!」
ゼェゼェと、息を荒くした大雅がこちらに走って追いついてくる。
「一体どうしたってのさ」
とりあえず、なぜそんなになるまで走ってきたのかが気になる.....
私、気になります!
すると、彼は汗ばんだシャツをパタパタさせながら、
「いや、紫織はさ、クラスの奴らとかにめっちゃ誘われてたけど、誰かとその、海とかって行ったりするのか?」
彼にしては珍しく尻すぼみな声で聞いてくる。私が否定すると、彼は急に明るくなり、私の肩をバンバンと叩く。
痛い.....
そのあとは一緒に家まで雑談をしながら帰り、最後の別れ際、
「あ、そうだ!俺もさ、innocenceなんちゃら?ってやつ始めるからさ!夏休み一緒にやらねえか?」
と、言ってくる。私は一瞬驚いてから、
「もちろん、なんだったら今日もやろうよ、ログインしたら、パソコンのメールでこっちに位置教えてね、すぐいけると思うから」
と、了承の返事をする。
彼はおう、と楽しそうに言ってから家の方に走って行く。私は大雅のメールに応えるために、若干、小走りで家の方に向かった。
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ただいまと言って、足早に自分の部屋へと行く。
そして、エアコンをつけてから、V.Eを装着し、ベッドに寝転がって、
「innocence world、起動」
仮想世界へと足を踏み入れた。
入ってみたら、メールが一件、大雅かな?と思いつつ、開いて見ると
シャワー浴びてから行くから待ってて!
の一言、そういえば彼、汗だくだったな....
自分の観察力の無さに呆れてから、とりあえず熟練度上げのために『試練の山岳』エリアへと行く。
獲物はどこかな?とハンターの心境で走っていると、
「ちょっと、俺たち断るって言ってんじゃないですか!」
「そうです!」
「だから、ギルドでは報酬も出すっていってんだろ!」
なにやら揉め事の気配、私はお母さんから譲り受けた、野次馬根性でその近くまで走って行く。まあ、めんどくさくなったら逃げよう.....
近くまで行くと、そこには初心者プレイヤー二人と、明らかにいい装備をした、上級プレイヤー。
とりあえず、近くの岩陰に隠れ、話を聞いてると、どうやら上級者の方が入ってるギルドがダンジョンを見つけたらしく、そのダンジョンを攻略したいのだが、ダンジョンが広い上に敵も下に行けば行くほど強くなるそうだ。
そして、アイテム上限の問題から、ダンジョンを最下層まで攻略するのが非常に難しい。
とはいえ、誰かを補給係にするほどギルドに余裕はない。じゃあ、誰かにギルドに入って貰ってポーションとかを届けて貰うといった依頼をしよう。
ということらしい、まあ、つまるところバイトみたいなものか.....しかし、断られたんなら別の人に行けってんだよなぁ.....
それに上級者の方が報酬を出すとはいってるが、論点が違う。単純にそんなつまらん仕事をして金を稼ぐくらいだったら戦闘をして、少しの金を稼いだ方が楽しいと初心者はいってるのに.....
すると、上級者の方は業を煮やしたのか、腰のロングソードに手を触れると、
「なら、どうしても金が必要ならやるんだな?」
「まあ、よっぽどですけど」
「死んで、所持金ロストして、武器も破壊してやればいいんだな?」
「は?」
そこまで話すのが早いか、初心者の男性が右にかけていた剣になんらかのスキルを発動しながら攻撃をかける。
初心者の体が吹っ飛び、彼の腰にかけてある剣がポリゴンとなり砕け散る。上級者は得意げな顔で
「武器破壊、片手剣のスキルだよ」
と、言い放つ。
そして、女性が男性の方に駆け寄ろうとした瞬間、そちらにもその凶刃を向けた。
瞬間、理性では勝てるはずが無いとわかっているのに、私の体は勝手に動いていた。
「やめろ!」
AGIに、特化した私のステータスは果たして、凶刃が女性に届くよりも早く、上級者へと追いつき、その体へと武器を振るう。
狙う場所は鎧がない、頭。
彼は、その攻撃を避けるが、そのせいで女性に武器が当たることは無くなった。
彼はこちらを殺さんばかりに睨み付けると私に誰だお前、と聞いてくる。
私は無言で彼を睨みつけた。




