第227想 迫り来る刻限
――大ホール、魔導客船テティス最大の広間は戦場と化していた。
ズガガガガガガッ!!
「撃てぇぇぇ!!」
帝国残党兵達が魔導のライフルを一斉に放ち
無数の魔力弾が、砕牙と鉄重へ迫る。
「来るぞ!」
「承知しておる。」
鉄重が杖を軽く掲げた瞬間床が隆起し、巨大な岩壁が立ち上がった。
「くそ、攻撃が全然当たらねぇ…!!」
「フォフォフォ……ぬるいのう。」
鉄重は眉一つ動かさず、髭を撫でた。
「爺さん、まだまだいけるか?」
「誰に物を言っておる?儂はまだ、杖を置いておらんぞ。」
鉄重が口元を僅かに吊り上げる。
「そう来なくちゃな!」
砕牙が床を蹴り、岩壁の脇を抜ける。
「なっ!?」
帝国兵の懐へ潜り込む。
「どりゃああっ!!」
ドゴォォォン!!
拳の拳圧で兵士が吹き飛び、次々と倒れていく。
「まだだ!包囲しろ!!」
兵士達が一斉に砕牙を包囲する。
「へぇ、大した根性だ。そういうの嫌いじゃないぜ。だがよ……」
砕牙が笑う。
普通なら逃げ場はないが、SSランクの人物にはそんな常識は通用しない。
「今は邪魔だぁっ!!」
ドゴォン!!
再び何人もの兵士を一撃で吹き飛ばす。
「ぐああああ!!!」
「怯むな!残っている者で前列を維持しろ!!」
「こいつら……!鬱陶しいったらねぇな…。
それに……どうもおかしい。」
砕牙の口元から笑みが消える。
「ふむ。少し変わったのう。」
同じ頃、鉄重もまた帝国兵達の動きを見ていた。
「気付いたか、爺さん。」
「無論じゃ。」
鉄重は魔導ライフルを構える敵兵達を見る。
「先ほどまでの連中は、儂らを倒すことを第一としておった。
じゃが今は違う、攻撃の手数を抑え隊列の維持を優先しておる。」
「ああ、まるで……。」
砕牙が頷く。
「この場に儂らを留めておきたいようじゃな。」
「だよな。こいつら時間を稼いでやがる。」
ただ。この場に足止めすること。そして、それが分かっていても。
「クソッ……!数が多すぎる!」
砕牙が兵士を吹き飛ばす。
「ふむ。敵も必死じゃな。」
鉄重が岩壁を展開する。
突破にはまだ時間が掛かる――
その事実だけが二人にもはっきりと見えていた。
――その頃。テティス船内、指令室に続く通路。
帝国残党軍の幹部”真田龍牙”とベルガ&紅音が交戦している。
ギィィィィン!!
二本の振動ブレードが低く唸り、真田が静かに腰を落とす。
「……来い。」
真田が短く言った。
「言われなくてもそのつもりだ!!」
ベルガが床を蹴る。
ドンッ!!
一気に間合いを詰めると、影を纏った拳を真田へ叩き込んだ。
『叩き潰せ! これが悪魔の拳だ!!』
《上級闇魔法 魔神衝撃》!!
重い一撃で床が大きく軋んだが、真田は二刀を交差させその衝撃を受け止める。
「……重いな。」
真田はそれだけ呟くとすぐに刃を滑らせる。
≪真田流二刀剣術――鍔風!!≫
ギィン!!
力を受け流され、ベルガの拳が僅かに逸らされ、隙を突くように真田が踏み込む。
≪ 真田流二刀剣術――隼牙!!≫
高速の踏み込みから、二刀が突きのように叩き込まれた。
「チッ……速ぇな!!」
ベルガは身体を捻って躱すが、刃先が脇腹を掠め、制服が裂けた。
「正面からは危険ですわ!一度距離を……!」
≪上級炎魔法Lv4 フラム・アクィラ!≫
紅音の声と共に、真田の足元に巨大な炎の魔法陣が展開している。
紅蓮の炎が一気に噴き上がり、真田を襲うが
真田は顔色一つ変えず炎の中へ二刀を振り下ろした。
≪真田流二刀剣術――月光双牙!!≫
左右に描かれた二つの斬撃が、炎の奔流を切り裂く。
「まさか、私の炎を裂くとは……。」
紅音が眉を寄せる。
真田は炎の向こうへ踏み込みながら、冷静に次の手を考えている。
「ベルガ。」
紅音が短く呼ぶ。
「ああ、分かってる!」
ベルガの周囲に影が集まり、黒い刃が巨大な剣へと形を変えた。
『闇よ集え。魔神の刃となり、我が敵を断ち切れ!』
≪上級闇魔法 魔神影刃!!≫
真っ黒な斬撃が真田へ振り下ろされ、真田は二刀を交差させて受ける。
「くっ……!なら、これはどうだ!?」
ベルガは一度距離を取り、
『闇は道。影は我が翼。』
《魔神影歩》!
影から影へ跳び、真田の死角へ回り込む。
「……そこだな。」
真田は振り返らないまま背後へ二刀を流し、影から現れたベルガの斬撃を、正確に捌く。
「クソ、見えてんのかよ!」
ベルガが歯を食いしばる。
「ああ……、その程度の技、俺には通用しない」
真田は冷静に二刀を構え直し、紅音の方を狙う。
「紅音、そっち行ってるぞ!」
ベルガが叫ぶ。
「分かってますわ。」
紅音は魔法陣を幾重にも重ね、氷の壁が張られた。
≪三重 氷の障壁展開!!≫
≪真田流二刀剣術――月光双牙!!≫
真田の放った斬撃で紅音の氷の壁は割られ、間一髪で後ろに下がり回避する。
「氷の壁をこんな簡単に……っ!」
紅音が息を呑む。
「後方を潰すのは基本だからな。先に消えて貰おう。」
「お前の思い通りにはさせねぇ!!」
ベルガが飛び込む。
『叩き潰せ!』
≪《魔神衝撃!!》≫
真田の横から重い一撃が迫る。
「さっきよりは良い攻撃だ。だがまだ足りん。」
だが真田は直撃の瞬間、脱力しダメージを受け流しており、涼しい顔で立ち上がる。
「ちっ、…取ったと思ったんだが、やっぱり強ぇな。」
ベルガが吠える。
「こうなったら、見切れねぇくらい殴るしかねぇ!!」
影が再びベルガの拳へ集まる。
『叩き潰せ!』
≪《魔神衝撃!!》≫
真田が二刀で受け、ベルガの魔力と体重を乗せた一撃が、真田の足を床へ沈ませる。
「うおおお……!」
ベルガが口元を吊り上げる。
「力だけで、俺を押し切れると思うなよ!」
真田の目が僅かに細くなる。
≪真田流二刀剣術奥義 双翼飛龍!!≫
二つの刀を別々の軌道で操り、ベルガの攻撃の上から切り崩す。
「ぐああああっ!」
ベルガは、思いっきり吹き飛ばされ、切り刻まれた腕からは血が流れている。
「ベルガッ!!!」
紅音の悲痛な声が響く。
「言っただろう……?任務の邪魔をする者は容赦しないと。」
真田は刀の剣先をベルガに向けて静かに見下ろす。
次回予告 『第228想 限界突破!』
魔力を解放し、限界を超えた燈也。
対するヴォルフもまた、帝国総帥としての全力を解き放つ。
爆弾のタイムリミットが刻一刻と迫る中で
仲間を守る意志と帝国を背負う覚悟がぶつかり合う。
最後に立っているのは、どちらだ――?




