第225想 交差する覚悟!死を懸けた一太刀
――魔導客船テティス船内
爆弾解除に向かうレイリアス達は全速力で船内を駆ける。
「爆弾の反応まであと五百メートルです!」
レイリアスが電気で爆弾の場所を探知している。
「ええ、急ぎましょう!」
帝亜が頷く。
しかし、
ドォォン!!
前方の通路の天井が爆発し瓦礫が行く手を塞ぐ。
「ちっ…時間稼ぎか!面倒な奴らだ」
英明が舌打ちする。
「ここから先へは行かせん!」
瓦礫の向こうから帝国兵が現れ、対魔法使い用ライフルが一斉に向けられる。
ズバババッ!!!
「この程度の弾幕など、造作もない」
英明が刀を抜き、弾を打ち落とす。
「いまのうちだ!!」
「分かってるわ!」
≪最上級魔法 黒月雷砲!!≫
帝亜が闇の雷を弾丸のように放つ。
「ぐぁああああ……!!」
しかし倒しても倒しても敵兵は次々に現れる。
「もうキリが無いわね!」
「時間を稼げ!そうすれば我々の勝ちだ!」
帝国兵達は陣形を組みながら、弾幕を貼り続ける。
「敵も必死というわけですね…!」
レイリアスが歯を食いしばる。
――大ホール、指令室へ続く階段付近。
ギィィィィン!!
高周波軍刀と岩の拳が激しくぶつかり合い、衝撃が大ホール全体へ駆け抜けた。
「ぐはっ……!」
鉄景が数歩押し込まれ足元の床が砕け靴跡が一直線に刻まれていく。
雪村は淡々と軍刀を振り抜き、次の攻撃に備えている。
「……その膂力は賞賛に値します。
ですが、それだけでは私を倒すことなど出来ませんよ。」
雪村が一瞬で距離を詰める。
「ッ!」
鉄景も拳を振り抜くが、
ギィン!!
雪村は軍刀の腹で攻撃を受け流し、そのまま身体を滑らせるように懐へ潜り込む。
≪帝国式雪村流剣術 修羅!!≫
横薙ぎの一閃が迫り、鉄景は咄嗟に腕を交差させる。
ガギィィン!!
硬化した岩肌が火花を散らすが、全ての衝撃までは殺し切れない。
「ぐああっ……!」
鉄景の身体が吹き飛び、床を滑った。
「黒鉄殿!」
凛がすぐさま駆け寄る。
「大丈夫だ……問題ない。」
鉄景は片膝をついたまま短く答えた。
凛は安堵する間もなく雪村へ向き直る。
『 天地の息吹を聴け。』
≪白金流格闘術奥義 天籟!!≫
風を裂きながら一気に踏み込み、息をつかせぬ連撃。
しかし、雪村は全ての攻撃を軍刀で捌いていく。
「中々良い技です。しかし経験が違う……。」
「……。流石は歴戦の軍人。私の技が見切られるとは…!!」
凛は眉をひそめる。
ギィィィィン……
雪村は静かに軍刀を構え、静かに告げた。
「さて……これ以上、お時間をいただくわけには参りません。
ここで終わりにしましょう。」
ドンッ!!
床が爆ぜ、雪村の姿が消えた。
「…っ!どこに消えた!?」
凛が叫ぶ。
「そこか!!」
気配に気づき、鉄景は咄嗟に拳を振り上げる。
「遅いですよ。」
耳元で雪村の声が聞こえる。
ギィィン!!
「ぐっ…!!」
鉄景の肩口が深く裂け、鮮血が宙を舞った。
「良くも、黒鉄殿を!!」
凛が飛び込む。
『一息、一拳。その威、風となれ。』
≪白金流格闘術!威風!!≫
拳から暴風のような拳圧を飛ばすが、それも全て弾かれてしまう。
「そんな……!」
凛の表情が歪む。
「言ったでしょう?経験が違うと……」
雪村は淡々と答えると、凛の隙を突いて、柄による一撃が凛の腹部へと突き刺さる。
「かはっ……!」
一瞬、呼吸が止まり身体はくの字に折れそのまま蹴り飛ばされる。
「白金!!」
鉄景が飛び出す。
「おおおおおっ!!」
≪黒鉄流 山茶花!!≫
鉱物を腕に纏い、硬質化した拳で殴りかかる。
雪村は真正面から迎え撃ち拳と軍刀が激突する。
「このまま押し切る!!」
「流石ですね。力比べでは貴方に敵いません。……ですので。」
スッ……っと軍刀を逸らし力を逃がす。
「利用させて頂きますよ。」
「しまっ……!」
鉄景の体勢が崩れ、流れるような軍刀の一閃で鉄景の脇腹が切り裂かれた。
「がはっ……!」
激痛で膝が揺れるが、それでも倒れない。
「ほう、その傷でまだ立ち上がるとは……。」
雪村は感心したように呟く。
鉄景は傷口を押さえながら息を整える。
凛もまた腹を押さえながら立ち上がった。
「黒鉄殿……。その傷では…」
「大丈夫だ。お前もまだやれるか?」
鉄景が凛を横目で見る。
「ああ、まだ戦ってはいないからな。」
凛もゆっくり構え直す。
腕は震え、足元には血が落ちているが闘志はまだ消えてはいない。
「……満身創痍になってなお。退かない。 その気概、実に見事です。」
雪村はそんな二人を見て小さく目を伏せた後、軍刀を静かに正眼へ向ける。
「だからこそ、次の一太刀で終わらせてあげましょう。」
ギィィィィン……
刀身の魔導回路が今まで以上に青白く輝き始める。
「黒鉄殿。…次が勝負だな。」
凛は静かに息を整える。
「ああ。俺が前に出る。」
鉄景は視線を雪村から逸らさず、小さく頷きながら拳を握り、両腕が岩の鎧で覆われていく。
「お前はその……一瞬を狙え。」
「了解した。」
二人は互いの覚悟を確かめ合う。
「さぁ、二人の小さな英雄よ、帝国再建の礎と成りなさい!!」
雪村もまた、その構えを見て静かに口を開いた。
次回予告 『第226想 死してなお、任務の為に』
傷付き倒れながらも立ち上がり、帝国の未来のため、ヴォルフ閣下の命に応えるため。
雪村は、最後の切り札を手に取る。
「私は……まだ終われない。」
対する鉄景と凛も、退くことはない。
命を懸けて戦う者へ、自分達もまた命を懸けて全力で応える。




