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Himeyuri ―魔法を嫌う元学園最強の主人公ー  作者: 小鳥遊 千夜
第六章 マジック・ウィザード・トーナメント前夜祭――魔導客船テティス編

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第225想 交差する覚悟!死を懸けた一太刀

 

 ――魔導客船テティス船内


 爆弾解除に向かうレイリアス達は全速力で船内を駆ける。


「爆弾の反応まであと五百メートルです!」

 レイリアスが電気で爆弾の場所を探知している。


「ええ、急ぎましょう!」

 帝亜(てぃあ)が頷く。



 しかし、

 

 ドォォン!!


 前方の通路の天井が爆発し瓦礫が行く手を塞ぐ。


「ちっ…時間稼ぎか!面倒な奴らだ」

 英明(ひであき)が舌打ちする。


「ここから先へは行かせん!」

 瓦礫の向こうから帝国兵が現れ、対魔法使い用ライフルが一斉に向けられる。


 ズバババッ!!!


「この程度の弾幕など、造作もない」

 英明が刀を抜き、弾を打ち落とす。 


「いまのうちだ!!」


「分かってるわ!」


 ≪最上級魔法 黒月(エクリプス・)雷砲(バルバロス)!!≫

 帝亜が闇の雷を弾丸のように放つ。


「ぐぁああああ……!!」


 しかし倒しても倒しても敵兵は次々に現れる。

「もうキリが無いわね!」


「時間を稼げ!そうすれば我々の勝ちだ!」

 帝国兵達は陣形を組みながら、弾幕を貼り続ける。


「敵も必死というわけですね…!」

 レイリアスが歯を食いしばる。



 ――大ホール、指令室へ続く階段付近。


 ギィィィィン!!

 高周波軍刀と岩の拳が激しくぶつかり合い、衝撃が大ホール全体へ駆け抜けた。


「ぐはっ……!」


 鉄景(てつかげ)が数歩押し込まれ足元の床が砕け靴跡が一直線に刻まれていく。


 雪村(ゆきむら)は淡々と軍刀を振り抜き、次の攻撃に備えている。


「……その膂力(りょりょく)は賞賛に値します。

 ですが、それだけでは私を倒すことなど出来ませんよ。」


 雪村が一瞬で距離を詰める。


「ッ!」

 鉄景も拳を振り抜くが、


 ギィン!!


 雪村は軍刀の腹で攻撃を受け流し、そのまま身体を滑らせるように懐へ潜り込む。


≪帝国式雪村流剣術 修羅(しゅら)!!≫


 横薙ぎの一閃が迫り、鉄景は咄嗟に腕を交差させる。


 ガギィィン!!


 硬化した岩肌が火花を散らすが、全ての衝撃までは殺し切れない。


「ぐああっ……!」

 鉄景の身体が吹き飛び、床を滑った。


「黒鉄殿!」

 凛がすぐさま駆け寄る。


「大丈夫だ……問題ない。」

 鉄景は片膝をついたまま短く答えた。


 凛は安堵する間もなく雪村へ向き直る。


『 天地の息吹を聴け。』

≪白金流格闘術奥義 天籟(てんらい)!!≫


 風を裂きながら一気に踏み込み、息をつかせぬ連撃。


 しかし、雪村は全ての攻撃を軍刀で捌いていく。

「中々良い技です。しかし経験が違う……。」


「……。流石は歴戦の軍人。私の技が見切られるとは…!!」

 凛は眉をひそめる。


 ギィィィィン……

 雪村は静かに軍刀を構え、静かに告げた。

「さて……これ以上、お時間をいただくわけには参りません。

 ここで終わりにしましょう。」


 ドンッ!!

 床が爆ぜ、雪村の姿が消えた。


「…っ!どこに消えた!?」

 凛が叫ぶ。


「そこか!!」

 気配に気づき、鉄景は咄嗟に拳を振り上げる。



「遅いですよ。」

 耳元で雪村の声が聞こえる。


 ギィィン!!


「ぐっ…!!」

 鉄景の肩口が深く裂け、鮮血が宙を舞った。


「良くも、黒鉄殿を!!」

 凛が飛び込む。


『一息、一拳。その威、風となれ。』

≪白金流格闘術!威風(いふう)!!≫


 拳から暴風のような拳圧を飛ばすが、それも全て弾かれてしまう。


「そんな……!」

 凛の表情が歪む。


「言ったでしょう?経験が違うと……」

 雪村は淡々と答えると、凛の隙を突いて、柄による一撃が凛の腹部へと突き刺さる。


「かはっ……!」


 一瞬、呼吸が止まり身体はくの字に折れそのまま蹴り飛ばされる。


「白金!!」

 鉄景が飛び出す。


「おおおおおっ!!」


 ≪黒鉄流 山茶花(さざんか)!!≫

 鉱物を腕に纏い、硬質化した拳で殴りかかる。


 雪村は真正面から迎え撃ち拳と軍刀が激突する。


「このまま押し切る!!」


「流石ですね。力比べでは貴方に敵いません。……ですので。」


 スッ……っと軍刀を逸らし力を逃がす。


「利用させて頂きますよ。」


「しまっ……!」

 鉄景の体勢が崩れ、流れるような軍刀の一閃で鉄景の脇腹が切り裂かれた。


「がはっ……!」

 激痛で膝が揺れるが、それでも倒れない。


「ほう、その傷でまだ立ち上がるとは……。」

 雪村は感心したように呟く。


 鉄景は傷口を押さえながら息を整える。


 凛もまた腹を押さえながら立ち上がった。


「黒鉄殿……。その傷では…」


「大丈夫だ。お前もまだやれるか?」

 鉄景が凛を横目で見る。


「ああ、まだ戦ってはいないからな。」

 凛もゆっくり構え直す。

 腕は震え、足元には血が落ちているが闘志はまだ消えてはいない。


「……満身創痍になってなお。退かない。 その気概、実に見事です。」

 雪村はそんな二人を見て小さく目を伏せた後、軍刀を静かに正眼へ向ける。


「だからこそ、次の一太刀で終わらせてあげましょう。」


 ギィィィィン……

 刀身の魔導回路が今まで以上に青白く輝き始める。


「黒鉄殿。…次が勝負だな。」

 凛は静かに息を整える。


「ああ。俺が前に出る。」

 鉄景は視線を雪村から逸らさず、小さく頷きながら拳を握り、両腕が岩の鎧で覆われていく。

「お前はその……一瞬を狙え。」


「了解した。」

 二人は互いの覚悟を確かめ合う。


「さぁ、二人の小さな英雄よ、帝国再建の礎と成りなさい!!」

 雪村もまた、その構えを見て静かに口を開いた。



次回予告 『第226想 死してなお、任務の為に』


 傷付き倒れながらも立ち上がり、帝国の未来のため、ヴォルフ閣下の命に応えるため。

 雪村は、最後の切り札を手に取る。


「私は……まだ終われない。」


 対する鉄景と凛も、退くことはない。

 命を懸けて戦う者へ、自分達もまた命を懸けて全力で応える。



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