第224想 決戦!それぞれの戦場
魔導客船テティス――簡易指令室
ヴォルフは燈也を静かに見据えた。
「……先ほどお前は言ったな。この船も、仲間もすべて守る、と……。」
「ああ、そのために俺は来た。」
燈也は魔力を右腕へ集中させ
青白い光が腕を包み込み、一本の刃となって形成されていく。
「ならば、一つ教えてやろう。」
ヴォルフは小さく頷いた。
「この船に仕掛けた爆弾は、既に起動している。」
「何だと……?」
燈也の眉が動く。
「時限式だ。私が何もしなくとも、およそ三時間後には起爆する。
その時、この船は海の底だ。」
カチ……
カチ……
指令室の時計が静かに時を刻んでいる中で、ヴォルフは淡々と続けた。
「つまり、私を倒したところで終わりではない。
爆弾を探し出し解除しなければ、諸君らの敗北だ。」
「お前の思い通りに行くかよ。
お前を倒して爆弾も全部止める。それが俺の答えだ!」
燈也は歯を食いしばる。
「……理想を語る者は嫌いではない。だが……。」
ヴォルフはわずかに口元を緩めた。
カチャ……
腰へ提げた軍刀を静かに抜き放つ。
刀身は内部を走る魔導回路が青白く発光し、高周波振動と共に光刃を形成する。
「理想は、力が伴って初めて現実となる。」
ヴォルフは軍刀を静かに構える。
「証明してみせろ。その力を。」
「望むところだ!」
燈也も腕に纏う魔法の刃を構える。
次の瞬間、二人の姿が同時に消え、
刃が激突する轟音が、指令室へ響き渡る。
一方、その頃。
大ホールから指令室に続く通路。
ガギィィィン!!
雪村の高速振動する軍刀が唸り、鉄景の岩壁を切り裂き、そのまま拳まで迫った。
「……っ!」
鉄景は最小限の動きで身を捻るが、刃が制服を掠め、肩口が裂けた。
鮮血が散るが、表情一つ変えない。
「浅かったみたいですね。」
雪村は冷静に言い放つ。
その直後、凛が雪村の死角へ踏み込む。
≪白金流格闘術!疾風』!≫
鋭い蹴りが雪村の側頭部を狙う。
キィン!!
しかし軍刀が正確に軌道へ割り込み、蹴りを受け止められ、凛はすぐさま距離を取った。
「……駄目か。」
雪村は静かに二人を見る。
「息は合っています。ですが、まだ甘いですよ。」
ヒュンッ!!
姿が掻き消える。
「くっ…どこに消えた!?」
「右だ!」
鉄景が短く叫び、凛は反射的に腕を交差させるが、
軍刀が腕へ叩きつけられる。
「くっ……!」
衝撃だけで数メートル吹き飛ばされ、床を滑りながら体勢を立て直す。
袖には大きな裂け目。
「硬化が一瞬でも遅れていたら……。」
凛は小さく息を吐く。
鉄景が凛を庇うように前へ出る。
その肩からは血が流れているが、本人は気にも留めない。
「黒鉄殿、その傷では……!!」
「大丈夫だ…問題ない。」
鉄景は短く答える。
雪村はそんな二人を静かに見つめる。
「傷を負ってなお退かない、実に見事です。
ですが、任務ですので容赦はしませんよ。」
鉄景が拳を握り、岩の魔力が腕を覆う。
「雪村……一つ聞く。」
雪村は軍刀を構えたまま答える。
「何でしょう?」
「なぜだ。そこまで命を懸ける理由は……ヴォルフという男は、お前にとって何だ?」
一瞬だけ、雪村の動きが止まりその瞳が静かに揺れた。
「……祖国です。戦争に負け国を追われ、家族も故郷も何もかも失いました。」
雪村は静かに軍刀を見つめる。
「ですが、ヴォルフ閣下だけは違った。
敗軍の兵である私達を、家族として迎えてくださいました。」
雪村は続ける。
「帝国は滅んだ。世界はそう言います。
ですが違う、ヴォルフ閣下が生きている限り。帝国の意思は滅んでいない。
祖国再建という、希望を持たせてくれる存在なのです。」
そう静かに語る、その一言一言には揺るぎない信念が宿っていた。
凛が静かに口を開く。
「その為なら、他人を巻き込んでも構わないと?」
凛が静かに口を開く。
「……。祖国を取り戻すためなら、犠牲は止む終えない。それが軍人です。」
雪村は少し迷いながらも真っ直ぐ目を向ける。
「……そうか。」
鉄景は目を閉じる。
「なら、俺達は最後まで相容れんな。」
ゆっくり拳を構える。
「ええ、貴方方にも守りたいものがあるように、私にも命より重いものがある。
だから、ここで斬らせて頂きます。」
雪村も軍刀を構え直す。
次回 『第225想 交差する覚悟!死を懸けた一太刀』
爆弾のタイムリミットが徐々に迫ってくる、しかし帝国残党兵達の命懸けの防衛がその道を阻む。
一方、幹部の雪村誠司の圧倒的な剣技の前に、鉄景と凛は追い詰められていく。
それでも二人は退かない。勝つのは帝国の執念か、それとも仲間を信じる想いか――




