第222想 帝国軍残党最強の剣士!真田龍牙
――その頃。
燈也達はヴォルフを追い、客船の通路を全力で駆け抜けていた。
「急げ!ヴォルフを逃がすな!」
その瞬間、通路の奥から怒号が轟く。
「ヴォルフ様をお守りしろ!!」
「親衛隊として命に代えても止めろ!ここで一歩たりとも通すなぁぁぁッ!!」
黒い軍服を纏った帝国兵達が、一斉に銃口を向ける。
バンッ!!バババババッ!!
魔力弾が雨のように降り注いだ。
「チッ! 護衛か……めんどくせぇな!」
ベルガが舌打ちする。
「文句を言っている暇はありませんことよ。ここは突破するだけですわ。」
紅音は一歩前へ出ると優雅に右手を掲げ、魔法陣が幾重にも重なる。
『燃え盛る翼よ。
空を裂き、獲物を焼き尽くせ。』
≪上級炎魔法Lv4・フラム・アクィラ≫
ゴォォォォッ!!
巨大な炎の鳥が翼を広げ、通路を一直線に駆け抜けた。
「ぐあああああぁぁ!!熱い!!」
「バカ!!隊列を崩すな!!」
帝国兵達が吹き飛ばされる。
その隙を逃さず、ベルガが飛び出した。
「言われなくても分かってるよ!」
右腕へ漆黒の魔力が集まる。
『闇よ集え!魔神の刃となり、我が敵を断ち切れ!』
≪上級闇魔法 魔神影刃!!≫
ズバァァッ!!
黒き斬撃が通路を駆け抜け、兵士達の武器ごと薙ぎ払う。
「ぐっ!学生だと侮るな!」
「撃て!撃てぇぇぇ!!」
魔力弾が再び飛び交う。
燈也は二人の背中を見据え、魔法陣を展開した。
「二人とも!一気に突っ切るぞ!」
「≪補助魔法・アクセル・ブースト≫!」
淡い光が三人を包み、身体が一気に軽くなる。
「おっしゃあ!この速さなら!」
三人が帝国兵の包囲を一気に突破した。
「もう少しで……!」
燈也が前を見た、その時だった。
不意に足が止まる。
「っ……待て!」
通路の先に一人の男が腕を組んだまま立っていた。
それなのに、その男が立っているだけで、通路全体が塞がれているような錯覚を覚える。
「……また幹部か。」
ベルガが眉をひそめた。
「ここまで来るとはな。」
男は静かに目を開き、腰へ差した二本の刀へ、ゆっくりと手を添える。
低く落ち着いた声で感情の起伏はほとんど感じられない。
二本の刀が静かに抜かれ刀身が露わになった瞬間、
ギィィィィン……
高周波振動が通路へ響き渡った。
刃が青白く震え、ベルガが思わず口角を上げる。
「へぇ……。ただの飾りじゃねぇってわけか。」
男が淡々と名乗る。
「帝国連合軍残党”アイゼン・レギオン”、強襲部隊隊長”真田龍牙”」
その名が響いた瞬間に燈也達は本能的に悟る。
目の前にいる男はこれまで戦ってきた帝国兵とも、幹部達とも違う。
"本物"だと――
紅音が一歩、静かに前へ出る。
「帝国の真田聞いたことがありますわ。あなたが……帝国最強の剣士。」
「そう呼ぶ者もいる。もっとも…」
真田は表情一つ変えず、小さく頷く。
「名など、勝者だけが覚えていれば十分だ。」
二振りの刀をゆっくり構える。
「はっ……言うじゃねぇか!」
ベルガが肩を鳴らしながら前へ出て
ゴキッ、と拳を鳴らす。
「…ようやく本命ってわけだ。」
その闘志に呼応するように、黒い魔力が腕へまとわりついた。
燈也もまた、一歩踏み出そうとする。
「なら俺も──」
だが、ベルガが片手を横へ伸ばし、その進路を塞いだ。
「待て。」
ベルガは真田から視線を逸らさないまま言う。
「ここは俺達の出番だ。」
「ええ。あなたが向かうべき相手は、この方ではありませんわ。
あなたが倒すべき敵は、その先にいるのでしょう?」
紅音も静かに頷いた。
「だけど……!相手は帝国最強だ!二人だけじゃ……!」
燈也は二人を見つめる。
その言葉を遮るように、真田が二刀をゆっくり構えた。
ギィィィン……二振りの振動ブレードが低く唸る。
「何人いようと結果は変わらぬ。ここで全員斬るだけだ。」
静かな宣告にベルガは口元を吊り上げる。
「へぇ。その台詞、あとで泣きながら取り消すなよ?」
真田の眉がわずかに動く。
「吠えるだけなら自由だ。実力で証明してみせろ。」
紅音の足元へ幾重もの炎の魔法陣が浮かび上がる。
「もちろんですわ。あなたを倒して、私達も必ず追いつきます。」
ベルガはようやく燈也へ視線だけ不敵に笑う。
「行けよ。ラスボスは任せたぜ!」
燈也は二人を見つめた。
言いたいことは山ほどある、三人なら勝てるかもしれない――
そんな思いが胸をよぎる。
だが、二人の背中は一歩も引く気がなかった。
その覚悟を見た瞬間、燈也は静かに笑った。
「ああ、分かった。」
力強く頷く。
踵を返し、ヴォルフが待つ通路の奥へ向かって、一気に駆け出した。
「…逃がさん!貴様の相手は──」
真田が一歩踏み込み、床が砕ける。
その瞬間。
「おっと!俺達を忘れちゃ困るぜ!」
ベルガが真田の前へ飛び込み、拳を振り上げた。
ドォンッ!!
漆黒の拳圧が真田へ迫り、片方の刀で受け流す。
キィィィン!!火花が散る。
「邪魔だ。」
「邪魔なのはそっちですわ!」
紅音が魔法を放ち、真田の動きを制限する。
「今です!」
燈也が振り返ることなく右手を掲げる。
≪攪乱魔法 アンチ・ヘイズ!!≫
燈也の残像が現れ、相手を翻弄する。
更に続けて魔法陣が輝く。
≪補助魔法アクセル・ブースト≫!
魔法が燈也の身体を包み込み、一気に加速し奥へと消えていく。
「……ちっ。逃がしたか。」
しかしその前へ、ベルガが堂々と立ち塞がりニヤリと笑った。
「言っただろ?お前の相手は俺達だって。」
紅音も静かに並ぶ。
真田は二人を見据え、静かに二刀を構え直した。
ギィィィン……
振動ブレードが鋭く唸る。
「……いいだろう。まずはお前達から斬り刻んでやる。真田龍牙、いざ参る!!」
「ハハッ…!帝国最強だか何だか知らねぇが、
最強って肩書きは、今日ここで俺達がもらっていくぜ!」
ベルガの全身から黒い魔力が噴き上がり、豪快に笑う。
次回予告 『第223想 帝国残党軍”アイゼン・レギオン”総帥!ヴォルフ・アイゼン』
ついに辿り着いた指令室。
帝国残党軍、総帥ヴォルフ・アイゼンが、その真の力を解き放つ!
夢を貫く少年か、帝国に全てを捧げた軍人か――
互いの信念が激突する、最後の決戦が今始まる!




