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Himeyuri ―魔法を嫌う元学園最強の主人公ー  作者: 小鳥遊 千夜
第六章 マジック・ウィザード・トーナメント前夜祭――魔導客船テティス編

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第222想 帝国軍残党最強の剣士!真田龍牙


 ――その頃。

 燈也(ともや)達はヴォルフを追い、客船の通路を全力で駆け抜けていた。


「急げ!ヴォルフを逃がすな!」


 その瞬間、通路の奥から怒号が轟く。


「ヴォルフ様をお守りしろ!!」

「親衛隊として命に代えても止めろ!ここで一歩たりとも通すなぁぁぁッ!!」


 黒い軍服を纏った帝国兵達が、一斉に銃口を向ける。


 バンッ!!バババババッ!!


 魔力弾が雨のように降り注いだ。


「チッ! 護衛か……めんどくせぇな!」

 ベルガが舌打ちする。


「文句を言っている暇はありませんことよ。ここは突破するだけですわ。」

 紅音(あかね)は一歩前へ出ると優雅に右手を掲げ、魔法陣が幾重にも重なる。


『燃え盛る翼よ。

 空を裂き、獲物を焼き尽くせ。』

≪上級炎魔法Lv4・フラム・アクィラ≫


 ゴォォォォッ!!

 巨大な炎の鳥が翼を広げ、通路を一直線に駆け抜けた。


「ぐあああああぁぁ!!熱い!!」

「バカ!!隊列を崩すな!!」

 帝国兵達が吹き飛ばされる。


 その隙を逃さず、ベルガが飛び出した。

「言われなくても分かってるよ!」


 右腕へ漆黒の魔力が集まる。


『闇よ集え!魔神の刃となり、我が敵を断ち切れ!』

≪上級闇魔法 魔神(ディアブロ・)影刃(シャドウエッジ)!!≫


 ズバァァッ!!


 黒き斬撃が通路を駆け抜け、兵士達の武器ごと薙ぎ払う。


「ぐっ!学生だと侮るな!」

「撃て!撃てぇぇぇ!!」


 魔力弾が再び飛び交う。


 燈也は二人の背中を見据え、魔法陣を展開した。

「二人とも!一気に突っ切るぞ!」

「≪補助魔法・アクセル・ブースト≫!」


 淡い光が三人を包み、身体が一気に軽くなる。


「おっしゃあ!この速さなら!」

 三人が帝国兵の包囲を一気に突破した。


「もう少しで……!」

 燈也が前を見た、その時だった。


 不意に足が止まる。

「っ……待て!」


 通路の先に一人の男が腕を組んだまま立っていた。


 それなのに、その男が立っているだけで、通路全体が塞がれているような錯覚を覚える。


「……また幹部か。」

 ベルガが眉をひそめた。


「ここまで来るとはな。」

 男は静かに目を開き、腰へ差した二本の刀へ、ゆっくりと手を添える。

 低く落ち着いた声で感情の起伏はほとんど感じられない。


 二本の刀が静かに抜かれ刀身が露わになった瞬間、

 ギィィィィン……

 高周波振動が通路へ響き渡った。


 刃が青白く震え、ベルガが思わず口角を上げる。

「へぇ……。ただの飾りじゃねぇってわけか。」


 男が淡々と名乗る。

「帝国連合軍残党”アイゼン・レギオン”、強襲部隊隊長”真田龍牙(さなだりゅうが)”」


 その名が響いた瞬間に燈也達は本能的に悟る。

 目の前にいる男はこれまで戦ってきた帝国兵とも、幹部達とも違う。


 "本物"だと――


 紅音が一歩、静かに前へ出る。

「帝国の真田聞いたことがありますわ。あなたが……帝国最強の剣士。」


「そう呼ぶ者もいる。もっとも…」

 真田は表情一つ変えず、小さく頷く。


「名など、勝者だけが覚えていれば十分だ。」

 二振りの刀をゆっくり構える。


「はっ……言うじゃねぇか!」

 ベルガが肩を鳴らしながら前へ出て

 ゴキッ、と拳を鳴らす。


「…ようやく本命ってわけだ。」

 その闘志に呼応するように、黒い魔力が腕へまとわりついた。


 燈也もまた、一歩踏み出そうとする。

「なら俺も──」


 だが、ベルガが片手を横へ伸ばし、その進路を塞いだ。


「待て。」


 ベルガは真田から視線を逸らさないまま言う。

「ここは俺達の出番だ。」


「ええ。あなたが向かうべき相手は、この方ではありませんわ。

 あなたが倒すべき敵は、その先にいるのでしょう?」

 紅音も静かに頷いた。



「だけど……!相手は帝国最強だ!二人だけじゃ……!」

 燈也は二人を見つめる。


 その言葉を遮るように、真田が二刀をゆっくり構えた。


 ギィィィン……二振りの振動ブレードが低く唸る。


「何人いようと結果は変わらぬ。ここで全員斬るだけだ。」


 静かな宣告にベルガは口元を吊り上げる。

「へぇ。その台詞、あとで泣きながら取り消すなよ?」


 真田の眉がわずかに動く。

「吠えるだけなら自由だ。実力で証明してみせろ。」



 紅音の足元へ幾重もの炎の魔法陣が浮かび上がる。

「もちろんですわ。あなたを倒して、私達も必ず追いつきます。」


 ベルガはようやく燈也へ視線だけ不敵に笑う。


「行けよ。ラスボスは任せたぜ!」


 燈也は二人を見つめた。

 言いたいことは山ほどある、三人なら勝てるかもしれない――

 そんな思いが胸をよぎる。


 だが、二人の背中は一歩も引く気がなかった。


 その覚悟を見た瞬間、燈也は静かに笑った。


 「ああ、分かった。」

 力強く頷く。


 踵を返し、ヴォルフが待つ通路の奥へ向かって、一気に駆け出した。


「…逃がさん!貴様の相手は──」


 真田が一歩踏み込み、床が砕ける。


 その瞬間。


「おっと!俺達を忘れちゃ困るぜ!」

 ベルガが真田の前へ飛び込み、拳を振り上げた。


 ドォンッ!!


 漆黒の拳圧が真田へ迫り、片方の刀で受け流す。


 キィィィン!!火花が散る。


「邪魔だ。」


「邪魔なのはそっちですわ!」


 紅音が魔法を放ち、真田の動きを制限する。

「今です!」


 燈也が振り返ることなく右手を掲げる。

 ≪攪乱魔法 アンチ・ヘイズ!!≫


 燈也の残像が現れ、相手を翻弄する。

 更に続けて魔法陣が輝く。


 ≪補助魔法アクセル・ブースト≫!


 魔法が燈也の身体を包み込み、一気に加速し奥へと消えていく。


「……ちっ。逃がしたか。」


 しかしその前へ、ベルガが堂々と立ち塞がりニヤリと笑った。

「言っただろ?お前の相手は俺達だって。」


 紅音も静かに並ぶ。


 真田は二人を見据え、静かに二刀を構え直した。


 ギィィィン……


 振動ブレードが鋭く唸る。

「……いいだろう。まずはお前達から斬り刻んでやる。真田龍牙、いざ参る!!」


「ハハッ…!帝国最強だか何だか知らねぇが、

 最強って肩書きは、今日ここで俺達がもらっていくぜ!」

 ベルガの全身から黒い魔力が噴き上がり、豪快に笑う。


次回予告  『第223想 帝国残党軍”アイゼン・レギオン”総帥!ヴォルフ・アイゼン』


 ついに辿り着いた指令室。

 帝国残党軍、総帥ヴォルフ・アイゼンが、その真の力を解き放つ!


 夢を貫く少年か、帝国に全てを捧げた軍人か――


 互いの信念が激突する、最後の決戦が今始まる!


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