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Himeyuri ―魔法を嫌う元学園最強の主人公ー  作者: 小鳥遊 千夜
第六章 マジック・ウィザード・トーナメント前夜祭――魔導客船テティス編

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第219想 眠れる獅子


 ――魔導客船テティス 大ホール


 帝亜達の乱入によって、帝国残党兵の意識は人質から完全に逸れていた。

 それは、ずっと待ち続けていた者達にとって唯一の好機。

 反撃の狼煙が静かに上がる。


「……ようやくか。」


 低く響く声に帝国兵の一人が目を見開いた。

「なっ!?……!」


 ミシッ……バキィィィン!!


 魔力拘束具が、まるで紙細工のように砕け散る。


「ば、馬鹿な!拘束具を素手で!?」


「ガハハハハッ!!良くやった、小僧共!!」

 学園長の”砕牙(さいが)”は首を鳴らしながら豪快に笑う。


 ズドォォォォン!!

 一歩踏み出しただけで床が陥没する。


「しまっ──」

 兵士が銃を向けるより早く、砕牙の拳が唸った。


 ドゴォォォォォン!!


 空気が爆ぜ、拳圧だけで数人の帝国兵がまとめて吹き飛び、壁へ激突した。


「ぐあぁぁぁっ!!」

「ば……化け物だ!」

「何なんだ、このジジイは!」


 砕牙は豪快に笑う。

「誰がジジイだっ…!!俺はまだまだ若いわ!!」


 兵士達が慌てて引き金を引き、銃弾が飛ぶ。


 だが、砕牙は人質の前へ一歩踏み出した。

「そんな豆鉄砲で、俺を傷付けられると思ったか?」


 拳を振るい、巻き起こった衝撃波だけで銃弾の軌道が逸れ、天井へ弾かれていく。


「なっ!?銃弾が……逸れた!?」


 砕牙は兵士の懐へ潜り込む。


「おい…お前ら…。」


 銃身を片手で掴む。


 ミシ……グシャァァァ!!


 鋼鉄の銃が握力だけで握り潰された。


「そんなの振り回して、ガキ共に当たったらどうする?」



「ひぃっ!!」

 兵士は腰を抜かし、砕牙の拳が腹へめり込む。


 ドォォォン!!

 兵士は十数メートル吹き飛び、そのまま気絶した。


「クソ……ひ、人質を盾にしろ!!」


 一人の兵士が叫び、周囲の兵士達が一斉に人質へ銃口を向ける。


「…遅いのう。」


 同じく校長の鉄重(てつしげ)の静かな声が響く。

 拘束具は、すでに足元へ砕け落ちている。

「ワシらを誰だと思っとる。学園を預かる校長じゃぞ?」


 杖で床を軽く叩き、床が唸る。


『山は動かず。岩は語らず。

 千年の時を越え、不動の理ここに在り。北方を鎮めし神獣よ、その堅牢を我が前に示せ――』

≪最上級土魔法 玄武(げんぶ)金剛壁(こんごうへき)!!≫


 大ホール全体が震え、人質を囲む床が隆起し、巨大な岩壁が幾重にも重なっていく。

 まるで巨大な城塞であり、最後の一枚が閉じた瞬間。


 ダダダダダダダッ!!


 無数の銃弾が岩壁へ叩き込まれるが、傷一つ付かない。


「嘘だろ!?破壊できない!?」


「ほっほっほ。守りは老人の役目じゃ。」

 鉄重は穏やかに笑った。


 その隣で校長の紅蘭(こうらん)が優雅に扇を広げると、淡い光が人質全体を包み込んだ。


「皆さん、安心してください。ここから先は私達教師の時間です。」


 ふわりと柔らかな光が一人、また一人と人質を包み込む。


 傷付いた者の傷が癒え、震えていた生徒達の表情が少しずつ落ち着いていく。


「怪我が治っていく……。」

「先生……」

 生徒達の瞳に希望が戻る。

 

 燈也達もその光景を見つめ、思わず息を呑む。


「すごい……!これが先生達の魔法……!」

 怜花も思わず息を呑む。


「これほど広範囲に……しかも同時に治癒と防御を……。」


「くぅ~! やっぱスゲェな、校長達は!」

 ベルガは豪快に笑う。


「……ああ。これが、SSランク。俺達とは次元が違う。」

 燈也は拳を握り締めた。


「ええ。悔しいですけれど……。雲の上の存在とは、まさにこの方達のことですわね。」

 紅音も静かに頷く。


「さて、帝国の亡霊共、ここからは大人の喧嘩だ。」

 砕牙は拳を鳴らしながら、不敵に笑う。


 その一歩に合わせるように、ホール全体へ凄まじい威圧感が広がり

 帝国兵達は思わず一歩後ずさった。


 校長達の参戦で戦況は完全に逆転しようとしていた――


次回  『第220想 『託された使命』


 校長たちの参戦により、戦況はついに逆転。だがヴォルフは次の一手を打つ。

 船内に残された最後の装置。その起動を阻止するため、燈也たちは再び走り出す。

 そこに、幹部の雪村が立ちはだかる。


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