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Himeyuri ―魔法を嫌う元学園最強の主人公ー  作者: 小鳥遊 千夜
第六章 マジック・ウィザード・トーナメント前夜祭――魔導客船テティス編

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219/230

第218想 起死回生の一手

 

 ――魔導客船テティス 大ホール


 ヴォルフが軍刀を静かに構える。


「総員。撃て。」


 ダダダダダダダッ!!


 轟音と共に、四方八方から無数の銃弾が燈也(ともや)達へ襲い掛かった。


『穿て大地、守り抜け――』

 ≪上級岩魔法 岩壁城塞(グラン・ウォール)!!≫

 鉄景(てつかげ)が岩の防壁を作り出す。


 ガガガガガッ!!

 しかしあまりにも数が多い、岩壁が徐々に削られ、表面には無数の亀裂が走り始める。


「おいっ…。押されてるぞ!?」

 ベルガが叫ぶ。


魔法障壁(プロテクション)!』

 鉄景の岩壁に重ねるように怜花が両手を突き出し、

 淡い光の障壁が展開され、雨のような銃弾を受け止める。


「私も……!」

 怜花(れいか)の額から汗が流れ落ち、リエラも両手を重ね魔力を注ぎ込んだ。



「だが、どうする?長くは持たんぞ。」

 鉄景が魔法を維持しながら話しかける。


「だったら、俺が一気にアイツらぶっ飛ばしてやる。!」

 ベルガが前へ踏み出そうとするが、紅音(あかね)が即座に制した。


「駄目よ。この数じゃ近付く前に蜂の巣よ!」


「くそ、…何か手は…」

 燈也は歯を食いしばる。


 このままではヴォルフまで辿り着くことも出来ずに、全員が撃ち抜かれる。


「これで終わりだ。」

 ヴォルフは静かに告げる。

 手を振り下ろし、帝国兵達が一斉に引き金へ指を掛けた。



 その瞬間だった――


 ズドォォォォン!!


 天井が爆音と共に吹き飛んだ。


「なっ!?」

 巨大な瓦礫が降り注ぎ、帝国兵達が一斉に上を見上げる。


「上から敵襲!?」

「まだ仲間がいたのか!」


 舞い上がる土煙、その中心から三つの影が飛び降りる。


 着地と同時に、爆風が大ホールを吹き抜けた。

 魔法執行部の帝亜、英明。そして風紀委員の白金凛(しろがねりん)


「どうやら、ぎりぎり間に合ったようだな。」

 凛が静かに拳を構える。


「……まったく。だから無茶はするなって言ったでしょう。」

 帝亜が眼鏡を押し上げ、小さくため息をつく。


「部長、説教は後だ。」

 英明は刀の鞘に手を置きながら周囲を見渡す。


「部長さん、工藤さん、それに白金さんまで!」

 怜花が目を見開く。


「助っ人か?ハハッ遅ぇじゃねぇか!」

 ベルガが豪快に笑う。


「船酔いでね。

 それにピンチに駆けつける方が漫画らしくてカッコイイでしょ?」

 帝亜は肩をすくめる。

 その一言に、燈也達の表情から僅かに張り詰めた空気が消える。


 一方で帝国兵達は完全に動揺していた。


「侵入者が三人増えた!囲め!」

「いや、人質を見ろ!」

「隊列が崩れるぞ!」


 ヴォルフだけは静かに帝亜を見据える。

「……貴様達か。」



「残念だけど。計画通りには進まないわ。

 幹部が一人。落ちたもの。」

 帝亜は不敵に微笑んだ。


 その言葉に、大ホールが静まり返る。


「……!」

「まさか……!」

「神代隊長が……?」

 帝国兵達の間に動揺が走る。


「……そうか。神代も逝ったか。」

 ヴォルフは静かに目を閉じた。


「話は後だ。まずは、この状況をひっくり返す。」

 英明が一歩前へ出る。


「分かってるわ。ここから反撃──」

 帝亜がゆっくりと前へ踏み出す。


 そこまで言いかけた、その時だった。

「……。」

 帝亜は思わず口元を緩める。


「ふふ。その心配は無さそうよ。」


 英明も気付く。

「……そうみたいだな。」


次回  『第219想 眠れる獅子』


 帝亜たちの乱入が戦場を揺らす。

 その一瞬の隙を、誰よりも待ち続けていた者たちがいた。

 本当の反撃は、ここからだ――

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