第218想 起死回生の一手
――魔導客船テティス 大ホール
ヴォルフが軍刀を静かに構える。
「総員。撃て。」
ダダダダダダダッ!!
轟音と共に、四方八方から無数の銃弾が燈也達へ襲い掛かった。
『穿て大地、守り抜け――』
≪上級岩魔法 岩壁城塞!!≫
鉄景が岩の防壁を作り出す。
ガガガガガッ!!
しかしあまりにも数が多い、岩壁が徐々に削られ、表面には無数の亀裂が走り始める。
「おいっ…。押されてるぞ!?」
ベルガが叫ぶ。
『魔法障壁!』
鉄景の岩壁に重ねるように怜花が両手を突き出し、
淡い光の障壁が展開され、雨のような銃弾を受け止める。
「私も……!」
怜花の額から汗が流れ落ち、リエラも両手を重ね魔力を注ぎ込んだ。
「だが、どうする?長くは持たんぞ。」
鉄景が魔法を維持しながら話しかける。
「だったら、俺が一気にアイツらぶっ飛ばしてやる。!」
ベルガが前へ踏み出そうとするが、紅音が即座に制した。
「駄目よ。この数じゃ近付く前に蜂の巣よ!」
「くそ、…何か手は…」
燈也は歯を食いしばる。
このままではヴォルフまで辿り着くことも出来ずに、全員が撃ち抜かれる。
「これで終わりだ。」
ヴォルフは静かに告げる。
手を振り下ろし、帝国兵達が一斉に引き金へ指を掛けた。
その瞬間だった――
ズドォォォォン!!
天井が爆音と共に吹き飛んだ。
「なっ!?」
巨大な瓦礫が降り注ぎ、帝国兵達が一斉に上を見上げる。
「上から敵襲!?」
「まだ仲間がいたのか!」
舞い上がる土煙、その中心から三つの影が飛び降りる。
着地と同時に、爆風が大ホールを吹き抜けた。
魔法執行部の帝亜、英明。そして風紀委員の白金凛。
「どうやら、ぎりぎり間に合ったようだな。」
凛が静かに拳を構える。
「……まったく。だから無茶はするなって言ったでしょう。」
帝亜が眼鏡を押し上げ、小さくため息をつく。
「部長、説教は後だ。」
英明は刀の鞘に手を置きながら周囲を見渡す。
「部長さん、工藤さん、それに白金さんまで!」
怜花が目を見開く。
「助っ人か?ハハッ遅ぇじゃねぇか!」
ベルガが豪快に笑う。
「船酔いでね。
それにピンチに駆けつける方が漫画らしくてカッコイイでしょ?」
帝亜は肩をすくめる。
その一言に、燈也達の表情から僅かに張り詰めた空気が消える。
一方で帝国兵達は完全に動揺していた。
「侵入者が三人増えた!囲め!」
「いや、人質を見ろ!」
「隊列が崩れるぞ!」
ヴォルフだけは静かに帝亜を見据える。
「……貴様達か。」
「残念だけど。計画通りには進まないわ。
幹部が一人。落ちたもの。」
帝亜は不敵に微笑んだ。
その言葉に、大ホールが静まり返る。
「……!」
「まさか……!」
「神代隊長が……?」
帝国兵達の間に動揺が走る。
「……そうか。神代も逝ったか。」
ヴォルフは静かに目を閉じた。
「話は後だ。まずは、この状況をひっくり返す。」
英明が一歩前へ出る。
「分かってるわ。ここから反撃──」
帝亜がゆっくりと前へ踏み出す。
そこまで言いかけた、その時だった。
「……。」
帝亜は思わず口元を緩める。
「ふふ。その心配は無さそうよ。」
英明も気付く。
「……そうみたいだな。」
次回 『第219想 眠れる獅子』
帝亜たちの乱入が戦場を揺らす。
その一瞬の隙を、誰よりも待ち続けていた者たちがいた。
本当の反撃は、ここからだ――




