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Himeyuri ―魔法を嫌う元学園最強の主人公ー  作者: 小鳥遊 千夜
第六章 マジック・ウィザード・トーナメント前夜祭――魔導客船テティス編

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215/232

第214想 魔法 vs 技術

 

 ――時間は少し(さかのぼ)る。

 燈也(ともや)たちが鬼堂(きどう)と激突していたその頃、

 魔導客船テティスの地下区画。

 そこでもまた、もう一つの戦いの始まろうとしていた。


 向かい合うのは、魔法執行部の高天原帝亜(たかまがはらてぃあ)工藤英明(くどうひであき)

 対する相手は帝国残党軍幹部の一人、神代千景(かみしろちかげ)


 神代は眼鏡を指先で押し上げると、二人を静かに見据える。


「……観測終了。これより目標を排除します。」


 ガシャァァン!!


 重い金属音が地下通路へ響き渡り、装備が起動する。

 両腕へ大型ユニットが装着され、背部ユニットが左右へと展開し

 背後には十数機もの小型ドローンが浮かび上がり、神代を中心に円を描くように旋回している。


 まるで一つの戦闘群、その姿に英明が小さく息を吐く。


「……随分と物騒な装備だな。」


「当然です、帝国の科学技術は、魔法文明に劣るものではありませんから。」

 神代は口元だけをわずかに緩めた。


「さぁ、魔法に頼るあなた方へ、技術の力というものをお見せしましょう。」


 キィィィィィン!!


 耳を刺すような高周波音のEMPパルスが地下通路を駆け抜けた。


「……っ!」


 二人の魔力が乱れる。


「どうする?」

 英明が横にいる帝亜に声を掛ける。

  

「問題ないわ、魔法を消しているわけじゃない。

 魔力制御を乱しているだけ……。」

 冷静に魔力の流れを確認しながら呟く。


「……ほう。一瞬で解析しましたか。

 やはり、ただの学生ではありませんね。」

 神代の眉がわずかに動く。


「では、こちらから行きますよ。」


 次の瞬間、ブゥンッ!!


 ドローンの砲口が一斉に帝亜たちへ向く。


「ドローン一斉発射!!」


 無数の光弾が豪雨のように降り注ぐ。


「工藤クン!?」


「ああ、これぐらい問題ない。」


 英明が一歩踏み込む。


 ≪神楽流(かぐらりゅう)体術(たいじゅつ) 刹那(せつな)!!≫

 魔力が全身を駆け巡り、英明の姿が消え

 光弾の雨を紙一重で縫いながら、一瞬で神代の懐へと飛び込む。


「速い……!!」

 神代の瞳がわずかに見開かれる。


神楽一刀流(かぐらいっとうりゅう)弐式(にしき) (そう)!!≫


 英明が十字に斬りつける。

 だが――ガキン!!


 装甲に弾かれ、傷一つ付かない。


「残念、その程度の攻撃ではこの装甲は貫けませんよ。」


「……流石に硬いな」

 英明は身体を翻し一旦距離を取る。


 帝亜は静かに分析を続ける。

「工藤クンの剣が通用しないなんて、近接は厳しいわね。…なら」


 帝亜は左手を前へかざす。

 詠唱も無く、闇が一点へ集束していく。


≪最上級魔法 黒月(エクリプス)雷砲(バルバロス)!!≫


 黒き雷撃が一直線に神代へ走る。


「!」

 神代は即座に腕部シールドを展開。


 しかし衝撃を殺し切れず、その身体が数歩後方へ押し込まれた。


「……っ!」


 床には靴跡が深く刻まれ、神代はシールド越しに帝亜を見据え、小さく息を漏らした。

「これほどの威力を……。しかも詠唱も無しで放つとは。想像以上ですね。」


「フフッ…言葉にするほどワタシの魔法は軽くないわよ。」

 帝亜は肩の力を抜いたまま、小さく笑う。


「……いいでしょう。」

 神代は静かに笑みを深めた。


「ならば、こちらも少し本気をお見せします。」


 背部ユニットの内部から、十数枚もの円盤状ユニットがゆっくりと浮かび上がり

 神代の周囲を規則正しく旋回し始めた。


「今度は何かしら?」

 帝亜が目を細める。


「食らいなさい。」

 バシュッ!!円盤から無数の弾体が射出され、白い煙を噴き上げた。


 シュウウウウ……

 

 煙は瞬く間に地下通路を覆い尽くしていく。


「目眩し?…いやそれだけじゃない。身体の力が抜けて……」


「これは、対魔法拡散弾。魔力を乱し、魔法を著しく低下させることが出来る。

 対魔法使い用に私が改良した自信作の一つですよ。」

 神代が笑う。


「なるほど、厄介ね…。」


「魔法を封じられた魔法使いなど、赤子も同然。…大人しく諦めてはいかがですか?」


「魔法を封じたぐらいで勝った気になるのは早いわよ。」


「準備はいい?」

 帝亜は左手を軽く上げ英明に合図を送る。


「ああ、任せろ。」

 英明も即座に頷く。


 腰を低く落とし、静かに魔力を巡らせる。


神楽流(かぐらりゅう)体術(たいじゅつ) 無影(むえい)!!≫

 その瞬間、英明の姿が揺ぎ残像を作り出す。


 さらに帝亜が静かに指先を動かす。


『変化魔法 七彩(プリズム・)月化(ルナ・フォーム)

 周囲の物と、英明の残像に組み合わさり、姿を錯覚させる。


「どう。こういう使い方も出来るのよ?」


 神代のセンサーが激しく明滅しながら、解析を開始する。


 だが――

『魔力反応重複、対象識別不能』

 

 電子音が次々と警告を発する。


「これは……!」

 神代が初めて驚きを見せた。


「妨害は、アナタだけの特権じゃないってことよ。」

 帝亜は薄く笑う。


 分身の中から英明の声が響く。

「いくぞ……。」


 腰を深く落とし、呼吸を整える。


神楽流(かぐらりゅう)体術(たいじゅつ) 参式(さんしき) (しゅん)!!≫


 居合いの構えで、煙を裂き一直線に神代へ迫る。

 神代の迎撃態勢を整うよりも早く、居合いの一閃が胸部装甲へ叩き込まれる。

 

 だが、それでも刃は装甲を貫かなかった。



 神代は衝撃を受けながらも、小さく息を吐く。

「何度やっても無駄ですよ、帝国最高峰の防御性能ですから。」


「それはどうかしらね?」

 煙の向こうから帝亜の冷たい声が響く。


「あなたを斬らせる気なんて、最初からないわ。」

 帝亜は静かに左手を前へ伸ばした。


「どういうことです?」

 神代が振り向く。


「装甲をよく見てご覧なさい。」


「こっ……これは?」

 神代の表情が変わる。


 外骨格の右腕の関節部が付け根から切断されていたことに気付く。


「まさかこれが狙いだったとは……」

 神代は切断面を見つめながら、小さく苦笑する。


「そうよ。装甲は硬くても、関節までは覆えないでしょ?」

 帝亜は表情を変えない。


「くっ……やれましたね。」

 神代は静かに目を閉じ、悔しげに呟く。


「……実に見事です。」

 だが、その口元からまだ笑みは消えていない。

 そう言って残された左腕ユニットをゆっくり起動させながら、神代は静かに顔を上げた。


「ですが、まだこれで終わりませんよ。」


次回 『第215想 技術だけでは届かない』


 魔法を封じる帝国軍最強の対魔導兵装。

 追い詰められる帝亜と英明に、神代が切り札を解き放つ。技術か、それとも人の意志か。

 最後に立っているのはどちらか――


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