第211想 最後の仕事だ
――紅音の魔法陣に呼応するように、空気が震え熱量が一気に跳ね上がる。
「いきますわ。」
紅音は静かに右手を掲げ、巨大な炎が渦を巻く。
『世界を焦がす紅蓮よ。神炎となれ!』
≪Lv3 上級火魔法 ギガ・イグニ!!≫
巨大な火球が一直線に鬼堂へ襲い掛かる。
それに続くように燈也が地面を蹴る。
≪補助魔法加速強化!!≫
≪攪乱魔法!!≫
身体能力を上げ、残像を出しながら鬼堂の側面へ回り込む。
「またその技か!小細工なんざ、全部まとめて潰せば同じだぁ!」
紅音の魔法諸共、剛腕で薙ぎ払う。
「燈也さん!!!」
後方にいる怜花が叫ぶ。
「ガハハ!!…まずは一匹!」
勝利を確信した鬼堂が笑みを浮かべている。
「……残念。」
背後から声に鬼堂が振り向く。
「本物はこっちだ!!」
「なっ!?」
懐へ入り込んでいた燈也の右腕へ魔力が集束する。
≪夢幻の断斬!!≫
魔力の刃が鬼堂の胸部装甲へ突き立てられる。
ギィィィィン!!
「馬鹿なっ…!?」
火花が飛び散り、胸部装甲にヒビが入り、鬼堂の動きが鈍る。
その隙をベルガは見逃さない。
「今だぁ!!」
両手を勢いよく床へ叩き付ける。
『闇よ縛れ。魔神の枷となれ!』
≪悪魔黒鎖!!≫
床一面が黒く染まり、無数の鎖が鬼堂を拘束する。
「こんなもんで…」
鬼堂が力を込める。
バキバキバキッ!!
「この俺を止められると思うなァァァァ!」
鎖が引き千切られる。
「チッ…相変わらず馬鹿力だな!だがよ……まだ終わりじゃねぇ!」
ベルガの影がさらに広がり、鬼堂の足元が巨大な闇へ変貌した。
「これが俺のフルパワーだ!!」
『世界を覆え、光を喰らえ、漆黒の宴の始まりだ。』
≪悪魔蝕影!!≫
巨大な影が鬼堂の身体へ絡み付き力を奪っていく。
「なっ……なんだ?身体が……重い……!」
「……今のうちだ!決めろ!」
ベルガがさらに魔力を注ぎ込む。
「ええ、終わらせますわ。」
紅音の三重の魔法陣が空中へ浮かぶ。
『燃え盛る翼よ。空を裂き、獲物を焼き尽くせ。』
≪Lv4 上級火魔法 フラム・アクィラ!!≫
さらに紅音は指先を前へ向けた。
『紅き翼は閃光となる。一閃に全てを穿て。』
≪Lv4 上級火魔法 ルベル・ヒルンドー!!≫
「重唱……!」
二つの炎が巨大な鳥となり翼を広げるように魔法が重なる。
轟ォォォォォォン!!
凄まじい爆炎が通路を飲み込む。
「ぐああああああああっ!!」
鬼堂の絶叫が響く。
やがて炎が晴れると、膝をついた鬼堂の姿があった。
装甲は焼け落ち、魔力炉は激しく火花を散らしている。
「……やるじゃねぇか。」
鬼堂は笑う。
「終わりだ、降伏しろ」
燈也が魔力の刃を向けたまま静かに睨む。
「軍人が……降伏なんざするかよ。」
鬼堂は静かに首を横へ振る。
「まだやる気か。なら、俺達だって…」
ベルガが睨む。
「いや、勝負は……俺の負けだ。」
鬼堂は静かに笑う。
一瞬だけ静寂が流れる。
「……だが。」
鬼堂は胸部装甲へ手を当てた。
「まさか、その反応……!」
紅音の表情が変わる。
「フッ…そうさ。最後の仕事だ!お前らも道連れにしてやる!」
鬼堂が豪快に笑う。
胸部の魔力炉が真っ赤に輝き始め
ギィィィィィン…… っと高い駆動音が響く。
「まずいわ!」
リエラの声に、燈也は鬼堂を見据えたまま叫ぶ。
「分かってる!」
燈也が駆け出す。
「負けても任務だけは果たす。それが……帝国軍人だ!!」
鬼堂は最後まで獰猛に笑う。
次回 『第212想 譲れぬ信念』
鬼堂の命を懸けた最後の一手が、燈也たちを危機へと追い込む。
窮地に陥る燈也たち――そこへ、思いもよらぬ人物が姿を現す。




