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Himeyuri ―魔法を嫌う元学園最強の主人公ー  作者: 小鳥遊 千夜
第六章 マジック・ウィザード・トーナメント前夜祭――魔導客船テティス編

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212/230

第211想 最後の仕事だ

 

 ――紅音(あかね)の魔法陣に呼応するように、空気が震え熱量が一気に跳ね上がる。


「いきますわ。」

 紅音は静かに右手を掲げ、巨大な炎が渦を巻く。


『世界を焦がす紅蓮よ。神炎となれ!』

≪Lv3 上級火魔法 ギガ・イグニ!!≫


 巨大な火球が一直線に鬼堂へ襲い掛かる。


 それに続くように燈也が地面を蹴る。

補助魔法加速強化アクセル・ブースト!!≫

攪乱魔法アンチ・ヘイズ!!≫


 身体能力を上げ、残像を出しながら鬼堂の側面へ回り込む。


「またその技か!小細工なんざ、全部まとめて潰せば同じだぁ!」

 紅音の魔法諸共、剛腕で薙ぎ払う。


「燈也さん!!!」

 後方にいる怜花が叫ぶ。 


「ガハハ!!…まずは一匹!」

 勝利を確信した鬼堂が笑みを浮かべている。


「……残念。」

 背後から声に鬼堂が振り向く。


「本物はこっちだ!!」


「なっ!?」


 懐へ入り込んでいた燈也の右腕へ魔力が集束する。


≪夢幻の断斬マギア・ブレイカー!!≫


 魔力の刃が鬼堂の胸部装甲へ突き立てられる。


 ギィィィィン!!


「馬鹿なっ…!?」


 火花が飛び散り、胸部装甲にヒビが入り、鬼堂の動きが鈍る。


 その隙をベルガは見逃さない。


「今だぁ!!」

 両手を勢いよく床へ叩き付ける。


『闇よ縛れ。魔神の枷となれ!』

悪魔デモン・黒鎖ブラックチェイン!!≫


 床一面が黒く染まり、無数の鎖が鬼堂を拘束する。


「こんなもんで…」

 鬼堂が力を込める。


 バキバキバキッ!!


「この俺を止められると思うなァァァァ!」

 鎖が引き千切られる。


「チッ…相変わらず馬鹿力だな!だがよ……まだ終わりじゃねぇ!」


 ベルガの影がさらに広がり、鬼堂の足元が巨大な闇へ変貌した。


「これが俺のフルパワーだ!!」


『世界を覆え、光を喰らえ、漆黒の宴の始まりだ。』

悪魔デモン・蝕影イクリプス!!≫


 巨大な影が鬼堂の身体へ絡み付き力を奪っていく。


「なっ……なんだ?身体が……重い……!」



「……今のうちだ!決めろ!」

 ベルガがさらに魔力を注ぎ込む。


「ええ、終わらせますわ。」

 紅音の三重の魔法陣が空中へ浮かぶ。


『燃え盛る翼よ。空を裂き、獲物を焼き尽くせ。』

≪Lv4 上級火魔法 フラム・アクィラ!!≫


 さらに紅音は指先を前へ向けた。


『紅き翼は閃光となる。一閃に全てを穿て。』

≪Lv4 上級火魔法 ルベル・ヒルンドー!!≫


「重唱……!」


 二つの炎が巨大な鳥となり翼を広げるように魔法が重なる。


 轟ォォォォォォン!!


 凄まじい爆炎が通路を飲み込む。


「ぐああああああああっ!!」

 鬼堂の絶叫が響く。


 やがて炎が晴れると、膝をついた鬼堂の姿があった。


 装甲は焼け落ち、魔力炉は激しく火花を散らしている。


「……やるじゃねぇか。」

 鬼堂は笑う。


「終わりだ、降伏しろ」

 燈也が魔力の刃を向けたまま静かに睨む。


「軍人が……降伏なんざするかよ。」

 鬼堂は静かに首を横へ振る。



「まだやる気か。なら、俺達だって…」

 ベルガが睨む。


「いや、()()は……俺の負けだ。」

 鬼堂は静かに笑う。


 一瞬だけ静寂が流れる。


「……だが。」


 鬼堂は胸部装甲へ手を当てた。


「まさか、その反応……!」  

 紅音の表情が変わる。


「フッ…そうさ。最後の仕事だ!お前らも道連れにしてやる!」

  鬼堂が豪快に笑う。  


 胸部の魔力炉が真っ赤に輝き始め

 

 ギィィィィィン…… っと高い駆動音が響く。


「まずいわ!」

 リエラの声に、燈也は鬼堂を見据えたまま叫ぶ。


「分かってる!」

 燈也が駆け出す。


「負けても任務だけは果たす。それが……帝国軍人だ!!」

 鬼堂は最後まで獰猛に笑う。


次回 『第212想 譲れぬ信念』


鬼堂の命を懸けた最後の一手が、燈也たちを危機へと追い込む。

窮地に陥る燈也たち――そこへ、思いもよらぬ人物が姿を現す。


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