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Himeyuri ―魔法を嫌う元学園最強の主人公ー  作者: 小鳥遊 千夜
第六章 マジック・ウィザード・トーナメント前夜祭――魔導客船テティス編

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第209想 第三幹部・神代千景

 

 時間は少し(さかのぼ)る――魔導客船テティス。

 帝亜の客室。


「……気持ち悪い。」

 ベッドに横になったまま、帝亜(てぃあ)は額へ手を当てる。

 顔色はまだ少し青い。


「少しは楽になったか。」

 その隣では英明(ひであき)が腕を組み、静かに様子を見ていた。


「……半分くらいね。」


「だったら今日は大人しく寝ておけ。何かあれば俺が起こしてやるから。」

 英明は苦笑する。


「お願い。」

 帝亜が目を閉じた。


 その時だった。


 ゴォン……っと船体全体へ鈍い衝撃が走る。


「!」


 二人が同時に目を開く。


「……何?」


 さらにドドドッ……


 今度は大勢の人が走るような振動。


 英明が窓へ近付く。


「外じゃない。船体内部のようだ。」


 それから少しして船内放送が雑音混じりに切り替わった。


『我々は”アイゼン・レギオン”。帝国連合軍の正統後継組織である。

 現在この船は我々が制圧した。抵抗は無意味だ。従わなければ死ぬ。』


「……テロ。」

 部屋の空気が凍り、帝亜の目が細くなった。


「…そのようだな。ここは危険だ。」

 英明は即座に扉へ向かう。


「ええ。」


「取り敢えず人目に付かない場所。地下の整備区画…そこに隠れるぞ。」


 帝亜も立ち上がるが少しふらつく。

「っ……」


 英明が肩を支える。


「無理するな。」


「……分かってる。」

 帝亜は苦笑しながら、二人は客室を出る。



 ――そして現在

 人気のない非常通路を使い、地下整備区画へ。


「……最悪。狭いし、揺れるし、…気分悪い。」

 配管が何本も走る細い通路を歩きながら、帝亜は顔をしかめる。


「文句は後で聞く。今は生き残るのが先だ。」

 英明は前方を警戒する。


「分かってるわよ。」

 二人は息を潜めながら進んでいく。


 その時、カチャ…… っと金属音が聞こえ、英明が素早く帝亜の肩を掴む。

「止まれ。」


 二人は太い配管の陰へ身を隠した。


 コツ……コツ……と足音が聞こえ、一人の男が歩いてくる。

 白衣に眼鏡、そして黒いケースを抱えている。


「……」


 男は壁際へしゃがみ込み、ケースを開く。

 中から現れたのは、見慣れない金属装置。


 男はそれを慣れた手つきで壁内部へ固定していく。


 カチッ。ピッ。


 装置の緑色のランプが点灯する。


「これで完了ですね。」

 男は淡々と作業を終えると、その場を離れていく。


(…あれは、おそらく。)

 帝亜が小さく息を吐いた。


「……今の見た?」


「ああ。…爆弾だな。」

 英明も真剣な顔だった。


「ええ。おそらく……いざという時にこの船を沈めるつもりでしょうね。」


「解除できるか?」

 英明が尋ねる。


 帝亜は装置を見つめる。


「たぶん。でもかなり複雑な構造みたいだから、時間が掛かるわ。」

 帝亜は装置を見つめる。


「やるしかない。頼むぞ。」


「まず工具は……これで十分ね。」

 帝亜は装置の前へしゃがみ込む。


「中は、…電子と魔導式のハイブリッド。それに加えて、二重認証…厄介ね…」

 細い指が迷いなく内部へ伸びる。


 その時――


「……ほう。」


 背後から声に二人が同時に振り返る。


 そこには、先ほどの白衣の男が立っていた。

 その正体は帝国残党軍随一の頭脳を持つ第三幹部の”神代千景(かみしろちかげ)”。


「驚きました。まさか私の仕掛けを見破る方がいるとは……。」


「あなたが製作者ね…?」

 帝亜は静かに立ち上がる。


 神代は眼鏡を押し上げる。


「ええ。自信作です。しかし困りましたね。

 できれば、誰にも気付かれず終わる予定だったのですが。…。」


「部長、ああいうタイプは話が長い。まず止めるぞ。」

 英明が一歩前へ出る。


「同感ね。」

 帝亜も静かに頷いた。


「ほう、合理的で勇敢な学生だ。ここで始末しなければいけないのが実に惜しい…。」

 神代は肩をすくめる。


 帝亜が眼鏡の奥から鋭い視線を向ける。

「悪いけど…あなたの計画はここで終わりよ。」


「随分と自信があるようですね。

 それではその自信が本物かどうか…実験して差し上げましょう。」

 神代は薄く笑い手を掲げる。


次回  『第210想 鋼鉄の拳!三人の共闘』


 一方、燈也達に立ちはだかるのは、帝国残党軍第二幹部・鬼堂剛鉄。

 燈也、ベルガ、紅音が力を合わせ、常識外れの怪力を持つ鋼鉄の悪鬼へ挑む!

 圧倒的な力を前に、三人の共闘が始まる!

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