第204想 疾風迅雷の追跡者
――魔導客船テティス。
人気のない廊下を、燈也達は慎重に進んでいた。
「今のうちよ。」
リエラが先行し、周囲を確認する。
「ああ。」
燈也が頷く。
その時だった、館内放送用の通信機から、軽い笑い声が響く。
『いやぁ~、通信班がやられちちゃうとはねぇ。』
「……!」
三人が足を止める。
スピーカー越しに声が続く。
『上手く隠れているみたいだけど、鬼ごっこなら俺の方が得意なんだぜ?』
その瞬間、バンッ!!
と前方の壁が吹き飛び、煙の中から一人の男が姿を現す。
長い黒髪をポニーテールに束ねた、
第四遊撃部隊隊長、幹部の”風谷俊也”。
「ほらね、見ぃつけた。よう、ネズミ達。」
二丁拳銃を肩に担ぎ、口元には余裕の笑みを浮かべている。
「隊長クラスか…。」
燈也が静かに構える。
「お?分かる?」
「ああ、勘だがな。お前からはただならぬ殺気を感じる。」
「ハハッ!いいねぇ!その勘、嫌いじゃない!」
風谷は愉快そうに笑った。
その直後、パンッ!
銃声が燈也の頬を掠める。
「早い…!」
「今のはわざとだ、次は当てる。降参するなら今のうちだぜ?」
「……断る!」
「ハハッ…そう来なくちゃな!!」
「俺がやる。」
ベルガが影を広げる。
『逃がさねぇ。闇よ縛れ…!』
≪悪魔黒鎖!≫
黒い影が床を走る。
「遅ぇ、遅ぇよ!」
しかし、風谷は壁を蹴り、縦横無尽に風のように影を回避する。
パンパンパン!!
風谷の二丁拳銃が火を噴く。
「くっ!」
≪魔法障壁!展開≫
透明な障壁が展開し数発の銃弾を受け止める。
だが、ビシッと障壁に亀裂が入る。
「一撃が重い……!」
「軍用弾だ。」
「魔法障壁を抜く気か。」
燈也が眉をひそめた。
「ご名答。」
風谷が笑う。
「魔法使い相手に普通の弾なんか撃つわけねぇだろ?」
「ちっ…」
燈也は怜花を抱き寄せ、物陰に隠れる。
だが――
「燈也くん!右よ!」
リエラが叫ぶ。
燈也は反射的に跳ぶと、
さっきまで燈也がいた場所にナイフが突き刺さった。
「ちっ。今ので終わると思ったのにな。」
「こいつ……!速すぎる!」
ベルガが拳を握る。
「伊達に遊撃隊長じゃないんでね。」
風谷が無線を取り出す。
『おーい。俺だ。逃亡者を発見した。全員こっち来い。』
「まずい!囲まれる」
ベルガの顔色が変わる。
「分かっている、一度退くぞ。」
燈也が即座に判断し、4人が駆け出す。
しかし、風谷は楽しそうに笑うだけだった。
「逃がすと思う?」
パンッ!パンッ!
階段の手すりが吹き飛び、逃走経路を塞ぐ。
「階段が…!」
「正面で戦うだけが戦闘じゃない、相手の逃げ道を潰す。
これが包囲戦ってやつさ。」
風谷は拳銃を回しながら笑う。
燈也は周囲を見渡す、このままでは完全包囲。
「……!」
その時、視線が通路脇の非常用ハッチへ向き、
何かを思いついたように目が細まる。
「ベルガ…10秒だ。時間を稼げるか?」
「任せろ。10秒と言わず、30秒ぐらい稼いでやるよ!」
ベルガがニヤリと笑うと一歩前へ出る。
「何を企んでるかは知らねぇが…ようやく戦う気になってわけか?」
風谷もまた笑みを深める。
「上等だ。かかって来いよ!!」
次回 『第205想 参戦!鳳凰紅音』
通信班を落とした燈也達。
だが、その前に立ちはだかったのは第四遊撃部隊隊長・風谷俊也。
疾風のような猛攻に、包囲網は刻一刻と狭まっていく。
絶体絶命のピンチ。誰もがそう思った、その時。
燃え盛る紅蓮を纏い、一人の少女が姿を現す。
その名は――鳳凰紅音。
戦場の均衡は、今まさに覆される。




