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Himeyuri ―魔法を嫌う元学園最強の主人公ー  作者: 小鳥遊 千夜
第六章 マジック・ウィザード・トーナメント前夜祭――魔導客船テティス編

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第204想 疾風迅雷の追跡者

 

 ――魔導客船テティス。


 人気のない廊下を、燈也(ともや)達は慎重に進んでいた。


「今のうちよ。」

 リエラが先行し、周囲を確認する。


「ああ。」

 燈也が頷く。


 その時だった、館内放送用の通信機から、軽い笑い声が響く。

『いやぁ~、通信班がやられちちゃうとはねぇ。』


「……!」

 三人が足を止める。


 スピーカー越しに声が続く。

『上手く隠れているみたいだけど、鬼ごっこなら俺の方が得意なんだぜ?』


 その瞬間、バンッ!!

 と前方の壁が吹き飛び、煙の中から一人の男が姿を現す。


 長い黒髪をポニーテールに束ねた、

 第四遊撃部隊隊長、幹部の”風谷俊也(かぜたにしゅんや)”。


「ほらね、見ぃつけた。よう、ネズミ達。」

 二丁拳銃を肩に担ぎ、口元には余裕の笑みを浮かべている。


「隊長クラスか…。」

 燈也が静かに構える。


「お?分かる?」


「ああ、勘だがな。お前からはただならぬ殺気を感じる。」


「ハハッ!いいねぇ!その勘、嫌いじゃない!」

 風谷は愉快そうに笑った。


 その直後、パンッ!


 銃声が燈也の頬を掠める。


「早い…!」


「今のはわざとだ、次は当てる。降参するなら今のうちだぜ?」


「……断る!」


「ハハッ…そう来なくちゃな!!」


「俺がやる。」

 ベルガが影を広げる。


『逃がさねぇ。闇よ縛れ…!』

悪魔(デモン・)黒鎖(ブラックチェイン)!≫


 黒い影が床を走る。


「遅ぇ、遅ぇよ!」

 しかし、風谷は壁を蹴り、縦横無尽に風のように影を回避する。

 

 パンパンパン!!

 風谷の二丁拳銃が火を噴く。


「くっ!」

魔法障壁(プロテクション)!展開≫


 透明な障壁が展開し数発の銃弾を受け止める。


 だが、ビシッと障壁に亀裂が入る。


「一撃が重い……!」


「軍用弾だ。」


「魔法障壁を抜く気か。」

 燈也が眉をひそめた。


「ご名答。」


 風谷が笑う。


「魔法使い相手に普通の弾なんか撃つわけねぇだろ?」


「ちっ…」

 燈也は怜花を抱き寄せ、物陰に隠れる。


 だが――


「燈也くん!右よ!」


 リエラが叫ぶ。


 燈也は反射的に跳ぶと、

 さっきまで燈也がいた場所にナイフが突き刺さった。


「ちっ。今ので終わると思ったのにな。」


「こいつ……!速すぎる!」

 ベルガが拳を握る。


「伊達に遊撃隊長じゃないんでね。」

 風谷が無線を取り出す。


『おーい。俺だ。逃亡者を発見した。全員こっち来い。』


「まずい!囲まれる」

 ベルガの顔色が変わる。


「分かっている、一度退くぞ。」

 燈也が即座に判断し、4人が駆け出す。


 しかし、風谷は楽しそうに笑うだけだった。


「逃がすと思う?」


 パンッ!パンッ!


 階段の手すりが吹き飛び、逃走経路を塞ぐ。


「階段が…!」


「正面で戦うだけが戦闘じゃない、相手の逃げ道を潰す。

 これが包囲戦ってやつさ。」

 風谷は拳銃を回しながら笑う。


 燈也は周囲を見渡す、このままでは完全包囲。


「……!」


 その時、視線が通路脇の非常用ハッチへ向き、

 何かを思いついたように目が細まる。


「ベルガ…10秒だ。時間を稼げるか?」


「任せろ。10秒と言わず、30秒ぐらい稼いでやるよ!」

 ベルガがニヤリと笑うと一歩前へ出る。



「何を企んでるかは知らねぇが…ようやく戦う気になってわけか?」

 風谷もまた笑みを深める。


「上等だ。かかって来いよ!!」



次回 『第205想 参戦!鳳凰紅音』


 通信班を落とした燈也達。

 だが、その前に立ちはだかったのは第四遊撃部隊隊長・風谷俊也。

 

 疾風のような猛攻に、包囲網は刻一刻と狭まっていく。


 絶体絶命のピンチ。誰もがそう思った、その時。


 燃え盛る紅蓮を纏い、一人の少女が姿を現す。


 その名は――鳳凰紅音。

 

 戦場の均衡は、今まさに覆される。



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