第203想 追跡者 帝国残党軍第四幹部”風谷俊也”大尉
人気のない通路へ移動した燈也達。
リエラは警備室で手に入れた通信端末を開き、急いで解析を続ける。
「どうだ?」
燈也が尋ねる。
リエラは悔しそうに首を横へ振った。
「……駄目ね。
肝心のデータは暗号化されていて、解除キーが無い限りは解析は難しいわ。」
「最後まで情報を守りやがったか。」
ベルガが舌打ちする。
「そうね……。相手の覚悟は本物ね。」
少しの沈黙が流れ、リエラは別の画面を開く。
「でも、まったく収穫がなかったわけじゃないわ。
どうやら向こうは五つの部隊で行動しているみたいよ。」
「……五つか。」
燈也が画面を見つめる。
そこには五つの識別コードだけが並んでいた。
だがそれ以上の部隊名も、配置も何一つ残されていない。
「リーダーの情報は?」
「残念ながら無いわ。誰が率いているのかも不明
どの部隊が何を担当しているのかも分かりません。」
ベルガが拳を握る。
「くそ、…部隊数は分かっても、敵の隊長は誰も分からねぇってことか。」
「ああ…。まずはそれを探すところからだな。」
――その頃。
簡易に作られた司令室では帝国残党軍の総指揮官”ヴォルフ・アイゼン”と
その前に数名の兵士が整列していた。
「ほっ……報告です。!!通信班より定時連絡ありません。
三回呼び掛けましたが全く応答なし!!」
兵士の少し焦ったような声が響く。
ヴォルフは腕を組んだまま目を閉じる。
「……。」
数秒の沈黙――
やがてゆっくり口を開く。
「……やられたな。」
兵士達がざわつく。
「まさか……。あり得ません!あの大田少尉に限って…」
ヴォルフは静かに首を振る。
「大田は任務途中で放棄する男ではない。……連絡が途絶えた時点で答えは一つだ。」
ゆっくりと目を開き鋭く睨む。
「敵がいる。」
司令室の空気が変わる。
「しかも通信室を狙った以上、こちらの指揮系統を理解している。頭が回る相手だ」
ヴォルフが低い声で続ける。
その時、部屋の隅で口笛が鳴った。
「へぇ…」
第四部隊の隊長、幹部の”風谷俊也”だ。
「まさか俺達に逆らうようなヤツがいるとはねぇ。
面白くなってきたじゃないですか。」
椅子に座ったまま楽しそうに笑っている。
ヴォルフが視線を向ける。
「……風谷」
「はい。」
「連中を見つけろ。捕獲が優先だが逆らうようなら殺しても構わん。」
「了解。鬼ごっこ開始ってわけですね。」
風谷が笑い、腰の拳銃を軽く叩きながら立ち上がる。
「逃げ足が速い奴は嫌いじゃない。
必死に足掻く相手をゆっくりと追い込む。狩りのようなスリルがね。」
ヴォルフは短く告げた。
「風谷…お前は強い。だが、遊ぶ癖がある。」
「否定できませんね」
風谷が苦笑する。
「油断するな、相手は魔法使い。追い詰められた獣ほど牙を剥く。」
「分かってますよ」
その声は先程までと違う、少しだけ真面目な声音。
「…大田がやられたなら相手は本物だ。舐めてかかる気はありませんよ。」
ヴォルフは黙って聞いていた。
「十六年も耐えてきたのはこの作戦の為、必ず見つけ仕留めてやります!」
風谷の瞳から笑みが消え、言葉には軍人としての覚悟が宿っていた。
「ならいい」
ヴォルフは静かに頷く。
「任せてくださいよ。
この『疾風迅雷』と呼ばれた俺からは誰も逃げらないんですから。」
ヴォルフは何も言わずにただ静かに見送る。
「奴らに帝国軍人の恐ろしさを見せてやります。」
そして扉が閉まる。
帝国残党軍の包囲網が、ゆっくりと狭まり始めていた――
次回 『第204想 疾風迅雷の追跡者』
通信班を落とした燈也達だがその動きはすぐに帝国側へ伝わった。
「見ぃつけた。」
現れたのは第四遊撃部隊隊長、風谷俊也。
風のように駆ける追跡者が、逃げ道を一つずつ潰していく。
銃声が響き包囲は狭まり、追い詰められた燈也達。
鬼ごっこは終わりだ――




