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Himeyuri ―魔法を嫌う元学園最強の主人公ー  作者: 小鳥遊 千夜
第六章 マジック・ウィザード・トーナメント前夜祭――魔導客船テティス編

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第194想 平和の値段

 

 ――魔導客船テティス、上層デッキのVIPホール。


 巨大なシャンデリアに磨き上げられた大理石の床。

 高級料理に生演奏の音楽。

 そこでは各国の要人達による華やかな社交界が開かれていた。


「はっはっはっ!」

 大きな声で笑うのは資産家であり主要出資者のゴールド・レイマン。

 腹の出た中年男性が高級スーツに、両手には宝石だらけの指輪をいくつも身につけている。


「いやぁ、今回の大会は素晴らしい!」

 

 ワイングラスを揺らす。


「放映権も観客数も過去最高を叩き出せそうだ!」


「さすがレイマン氏、目の付け所が違いますな。」

 周囲の実業家達が頷く。


「これだから商売人は恐ろしい。」


「はっはっは!夢や感動も結構、ですが最後に勝つのは数字ですからな!」

 ゴールドが上機嫌に笑う。


 その近くでは豪華なソファへ腰掛けているのは大会主催の1人――永良口剛(えらぐちつよし)

 高価そうな葉巻に手をかけながら、会話に勤しんでいた。


「さて、今年の優勝候補は?」

 誰かが尋ねる。


 永良口は鼻を鳴らした。


「順当にいけば、玄武魔法館だろうな。

 去年の優勝校だ、スポンサーもさぞ満足することだろう。」


「ほう、では青龍のSランクは?」


「知らん。いくらSランクだろうと、所詮は学生だ。

 多少強かろうが、大会全体に影響などない。」

 永良口は肩を竦めた。


 周囲が苦笑するが、本人は全く気にしていない。

 むしろ興味すらなさそうだった。


「重要なのは話題性。優勝校よりも、どれだけ視聴率を取れるかだ。」

 永良口は葉巻の煙を吐く。


「なるほど。最近の若者は強さより人気ですからな。」


「そういうことだ。」


 その横では金平(かねだいら)委員長が料理を口へ運びながら話す。


「大会運営費も随分膨らんで、いやぁ苦労しましたよ~。

 それでも予算は削れませんからね。」


 そう言いながらキャビアを頬張るが誰も突っ込まない。


「選手達の宿泊費、輸送費。宣伝費。会場警備費…どれも金がかかる。

 運営というのは本当に大変ですよ。」


 そう言いながら最高級の肉料理へ手を伸ばす。


「ですが今年は黒字でしょう?」


 誰かが尋ねる。


「もちろんです。スポンサー契約数も過去最高ですからな。」

 金平は満面の笑みを浮かべる。


「それは結構。」


「いやぁ、本当にありがたい話ですよ。」



 その少し離れた場では岸村(きしむら)大臣が記者達に囲まれていた。


「大臣!こちらへ!」

「大臣!一枚お願いします!」


 岸村は待ってましたと言わんばかりに笑顔を作る。


「ははは!困ったな。今日の主役は選手達ですよ!」

 その言葉とは裏腹にカメラの中央へ立つ。

 勿論、角度まで意識していながら。


「え~。この大会は私が推進してきた政策の成果でもあります!

 若者育成!国際交流!未来への投資!それが私のモットーですから」


 記者達がメモを取り、岸村はますます上機嫌になる。


「ぜひその辺りも記事にしてください!」


 少し離れた場所では(かなで)議員が数人の政治家と話していた。


「来年度予算ですが。教育関連を増やす方向で?」


「増やすのは構わん。だが票になる地域を優先しろ。」

 奏議員はグラスを傾ける。


「なるほど。」


「理想だけでは選挙は勝てん。」


「仰る通りですな。」


 誰も反論しない、その方が楽だからだ。


 ホールのあちこちではこうした

 利権や投資、そんな話ばかりが飛び交う。


「今年はどこへ投資する?」


「来年のスポンサー枠についてですが…」


「新規事業の認可も欲しいところですな。」


「議会への根回しはどうなっているのか?」


 そんなことを言いながら、笑顔で握手し乾杯している。


 だが、

 選手達の努力、大会の理念、平和の尊さ、

 そんな言葉を口では語っていても――

 彼らの頭を占めているのは、自分の立場や将来のことばかりだけだ。


 それぞれの思惑を胸に魔導客船テティスは優雅に進み続ける――


次回 『第195想 魔導客船テティス襲撃』


 豪華客船テティスの船内では選手達は交流を楽しみ、

 大人達も社交界を楽しんでいた。


 だがその裏では、アイゼン・レギオンの魔の手が迫る。

 十六年の時を経て帝国の亡霊が再び動き出す――


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