第191想 それぞれの過ごし方
――魔導客船テティス。
各国の要人や代表選手達が交流を深める中で、青龍魔術学園の面々も中な時間を過ごしていた。
「やぁ、お嬢さん!良かったら今度一緒に――」
「結構です」
「あっ…ちょっと待って!?せめて名前だけでも~!!」
郷夜が声を掛けた女子生徒は、まるで風のように去っていった。
「くっ…これで十七連敗……」
郷夜が膝をつく。
「まだ諦めてなかったのか、お前」
燈也が呆れる。
「当然だろ!オレ様は世界中の美女と友達になる男だからな!」
郷夜は立ち上がる。
「ただのナンパだろ。」
「聞こえが悪いな!出逢いってのは運命なんだぜ?」
「何回目の運命よ?…1日に三十回くらい運命使ってるでしょアンタ」
流水が呆れる。
「恋は一期一会だからな!」
「お前の恋は軽すぎるんだよ!」
「そんことねぇぜ。オレ様は世界中の女性を平等に愛しているからよ。」
「最低の政治家みたいなこと言うな!!」
燈也が即座に切り捨てた。
「…と言うわけでオレ様はもう一声行って来るぜ!」
郷夜の目が輝いた。
「おい、待てよ!……ったく懲りねぇな……」
燈也が頭を抱える中で、郷夜は再び人混みへ消えていった。
一方その頃――
「うめぇ……これ全部食べ放題とか神か?」
雄介は感動していた。
目の前には巨大ローストビーフ、
高級寿司、高級スイーツ、高級料理が並んでいる。
「くう~来てよかったァァ!!。」
雄介の座る席には皿の山。
「おい、どんだけ食ってんだよ。まだ来て数分しかたってないだろ?」
燈也が呆れる。
「問題ない。まだ十五皿目だ」
雄介は真顔だった。
「問題しかねぇよ!」
雄介は止まらない、もはや戦場だった。
料理との――
「これが全国レベルか……」
燈也が雄介の食べっぷりをみながら呟く。
「何の全国よ?」
「…大食い選手権。」
「んなわけあるか!」
流水がツッコみを入れる。
その奥では異様な空気が流れていた。
「……」
魔法執行部部長、”高天原帝亜”がグラス片手に壁際へ立つ。
「……」
その反対側には風紀委員長、”白金凛”。
「……」
更に生徒会副会長、”夏色みかん”。
三人の視線が交差する。
「相変わらずですわね。」
みかんが微笑む、だが目は笑っていない。
「その制服の着崩し方、執行部の模範とは思えませんわ」
帝亜を見ながらみかんが呟く。
「仕事が出来れば問題ないでしょ?」
「問題ありますわ。」
「私は夏色に賛成だな」
凛が一歩前へ出る。
「珍しいわね。」
「風紀を守るものとして、校則は遵守すべきだろう?」
「それは校内の話でしょ?ここは学校じゃないわ。」
「学園の代表として参加している以上同じことだ。」
「堅いわね…。それって融通が利かないだけじゃない?」
ピキッ。
――凛の額に青筋。
「貴様は…いつもそうやって屁理屈ばかりだ。」
「論理と言ってほしいわね?」
「どちらも品がありませんわ」
みかんが口元に扇子を当てる。
帝亜と凛が同時に振り向く。
「誰のせいよ!!」&「誰のせいだ!!」
そんな様子を周囲の仲間達が頭を抱える。
「…始まったか。…顔を合わすといつもこうなんだよな。」
膤斗がため息を吐く。
「今日くらい休戦出来ないのかなぁ……」
ななみも苦笑する。
「飯冷めるな」
雄介が料理を食べながら話す。
「お前はそれしか考えてねぇのか…」
「ローストビーフが一番大事だろ!!」
「だから生徒会が学園を支えておりますの!!」
「実働部隊は執行部でしょ?」
「秩序を守っているのは我々風紀委員なんだがな!!」
「はぁ……」
三人同時にため息。
「話になりませんわ。」
「同感だ。」
「時間の無駄だったわね。」
三人とも別方向へ歩き出す。
「結局何だったんだ?」
燈也。
「いつもの縄張り争いでしょ。」
「犬と猫と狐みたいなものですね。」
癒水が苦笑しながら笑う。
「それって仲良しなんでしょうか?」
「それはないでしょ!」
流水が即答した。
その言葉に周囲からは小さな笑いが漏れる。
その時だった――
「……」
帝亜がふと黙りわずかに眉を寄せ、額へ手を当てた。
「どうかしたか?」
英明が気付く。
「少し……気分が悪いわ。」
帝亜の声はいつもより小さい。
「大丈夫?」
ななみが心配そうに顔を覗き込んだ。
「ええ。ただ少し船に酔ったみたい…」
「そういえば、…結構揺れてますよね」
「そうか?全然分からん。」
雄介が大量のローストビーフを頬張りながら答える。
「お前は食うことしか考えてないだろ!」
膤斗が呆れる。
「失礼なっ…!!」
雄介は真顔だった。
「今はローストビーフとエビしか考えてないぞ!」
「大して変わってねぇじゃねぇか!!」
その最中にも船が揺れる。
魔導客船とはいえ海の上だ、慣れない者には十分堪える。
「外の空気吸ってきた方がいいんじゃないのか?」
英明が言う。
「そうね……そうするわ」
帝亜はゆっくり頷いた。
「一人で大丈夫ですか?」
「大丈夫よ。少し風に当たれば落ち着くと思うから」
ストールを軽く整えながら立ち上がる。
「無理しないでね」
「分かってるわ」
そう言って帝亜は会場を後にし、外のデッキへと足を向けた。
次回 『第192想 隣にいる理由』
豪華客船テティスの静かな夜。
賑やかな会場から少し離れ、
燈也と怜花は月明かりに照らされた海を眺めていた。
強者達が集う世界大会。
その中で怜花の胸に浮かぶのは、
自分に対する小さな不安。
本当に自分はここにいていいのか。
そんな彼女へ燈也が伝える言葉とは。




