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Himeyuri ―魔法を嫌う元学園最強の主人公ー  作者: 小鳥遊 千夜
第六章 マジック・ウィザード・トーナメント前夜祭――魔導客船テティス編

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第191想 それぞれの過ごし方


――魔導客船テティス。


 各国の要人や代表選手達が交流を深める中で、青龍魔術学園の面々も中な時間を過ごしていた。



「やぁ、お嬢さん!良かったら今度一緒に――」


「結構です」


「あっ…ちょっと待って!?せめて名前だけでも~!!」

 郷夜(ごうや)が声を掛けた女子生徒は、まるで風のように去っていった。


「くっ…これで十七連敗……」

 郷夜が膝をつく。


「まだ諦めてなかったのか、お前」

 燈也(ともや)が呆れる。


「当然だろ!オレ様は世界中の美女と友達になる男だからな!」

 郷夜は立ち上がる。


「ただのナンパだろ。」


「聞こえが悪いな!出逢いってのは運命なんだぜ?」


「何回目の運命よ?…1日に三十回くらい運命使ってるでしょアンタ」

 流水(るみ)が呆れる。


「恋は一期一会だからな!」


「お前の恋は軽すぎるんだよ!」


「そんことねぇぜ。オレ様は世界中の女性を平等に愛しているからよ。」


「最低の政治家みたいなこと言うな!!」

 燈也が即座に切り捨てた。


「…と言うわけでオレ様はもう一声行って来るぜ!」

 郷夜の目が輝いた。


「おい、待てよ!……ったく懲りねぇな……」

 燈也が頭を抱える中で、郷夜は再び人混みへ消えていった。



 一方その頃――


「うめぇ……これ全部食べ放題とか神か?」

 雄介(ゆうすけ)は感動していた。


 目の前には巨大ローストビーフ、

 高級寿司、高級スイーツ、高級料理が並んでいる。


「くう~来てよかったァァ!!。」

 雄介の座る席には皿の山。


「おい、どんだけ食ってんだよ。まだ来て数分しかたってないだろ?」

 燈也が呆れる。


「問題ない。まだ十五皿目だ」

 雄介は真顔だった。


「問題しかねぇよ!」


 雄介は止まらない、もはや戦場だった。


 料理との――


「これが全国レベルか……」

 燈也が雄介の食べっぷりをみながら呟く。


「何の全国よ?」


「…大食い選手権。」


「んなわけあるか!」

 流水がツッコみを入れる。


 その奥では異様な空気が流れていた。


「……」

 魔法執行部部長、”高天原帝亜(たかまがはらてぃあ)”がグラス片手に壁際へ立つ。


「……」


 その反対側には風紀委員長、”白金凛(しろがねりん)”。


「……」


 更に生徒会副会長、”夏色みかん”。


 三人の視線が交差する。


「相変わらずですわね。」

 みかんが微笑む、だが目は笑っていない。


「その制服の着崩し方、執行部の模範とは思えませんわ」


 帝亜を見ながらみかんが呟く。

「仕事が出来れば問題ないでしょ?」


「問題ありますわ。」



「私は夏色に賛成だな」

 凛が一歩前へ出る。


「珍しいわね。」


「風紀を守るものとして、校則は遵守(じゅんしゅ)すべきだろう?」


「それは校内の話でしょ?ここは学校じゃないわ。」


「学園の代表として参加している以上同じことだ。」


「堅いわね…。それって融通が利かないだけじゃない?」


 ピキッ。

 

 ――凛の額に青筋。


「貴様は…いつもそうやって屁理屈ばかりだ。」


「論理と言ってほしいわね?」


「どちらも品がありませんわ」

 みかんが口元に扇子を当てる。


 帝亜と凛が同時に振り向く。


「誰のせいよ!!」&「誰のせいだ!!」


 そんな様子を周囲の仲間達が頭を抱える。


「…始まったか。…顔を合わすといつもこうなんだよな。」

 膤斗(ゆきと)がため息を吐く。


「今日くらい休戦出来ないのかなぁ……」

 ななみも苦笑する。


「飯冷めるな」

 雄介が料理を食べながら話す。


「お前はそれしか考えてねぇのか…」


「ローストビーフが一番大事だろ!!」



「だから生徒会が学園を支えておりますの!!」

「実働部隊は執行部でしょ?」

「秩序を守っているのは我々風紀委員なんだがな!!」



「はぁ……」

 三人同時にため息。


「話になりませんわ。」

「同感だ。」

「時間の無駄だったわね。」


 三人とも別方向へ歩き出す。



「結局何だったんだ?」

 燈也。


「いつもの縄張り争いでしょ。」


「犬と猫と狐みたいなものですね。」

 癒水が苦笑しながら笑う。


「それって仲良しなんでしょうか?」


「それはないでしょ!」

 流水が即答した。


 その言葉に周囲からは小さな笑いが漏れる。


 その時だった――


「……」


 帝亜がふと黙りわずかに眉を寄せ、額へ手を当てた。


「どうかしたか?」

 英明が気付く。


「少し……気分が悪いわ。」

 帝亜の声はいつもより小さい。


「大丈夫?」

 ななみが心配そうに顔を覗き込んだ。



「ええ。ただ少し船に酔ったみたい…」


「そういえば、…結構揺れてますよね」


「そうか?全然分からん。」

 雄介が大量のローストビーフを頬張りながら答える。


「お前は食うことしか考えてないだろ!」

 膤斗が呆れる。


「失礼なっ…!!」


 雄介は真顔だった。


「今はローストビーフとエビしか考えてないぞ!」


「大して変わってねぇじゃねぇか!!」



 その最中にも船が揺れる。

 魔導客船とはいえ海の上だ、慣れない者には十分堪える。


「外の空気吸ってきた方がいいんじゃないのか?」

 英明が言う。


「そうね……そうするわ」

 帝亜はゆっくり頷いた。


「一人で大丈夫ですか?」


「大丈夫よ。少し風に当たれば落ち着くと思うから」

 ストールを軽く整えながら立ち上がる。


「無理しないでね」


「分かってるわ」


 そう言って帝亜は会場を後にし、外のデッキへと足を向けた。


次回 『第192想 隣にいる理由』


豪華客船テティスの静かな夜。


賑やかな会場から少し離れ、

燈也と怜花は月明かりに照らされた海を眺めていた。


強者達が集う世界大会。


その中で怜花の胸に浮かぶのは、

自分に対する小さな不安。


本当に自分はここにいていいのか。


そんな彼女へ燈也が伝える言葉とは。

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