第190想 四大魔法学校の長達
――魔導客船テティス。
要人達の挨拶も一段落し、生徒達の交流を始める中、
その一角でひときわ周囲の視線を集める集団があった。
四大魔法学校の長達である。
「久しぶりねぇ、レイリアス」
艶やかな赤髪を揺らしながら近付いてきた女性が笑う。
朱雀魔導学院理事長――”紅蘭”。
鳳凰の血を引く魔女で四千年を生きる存在、魔法ランクはSS。正に伝説のような存在。
「お久しぶりです、紅蘭。相変わらず元気そうですね」
レイリアスは微笑む。
「当然よ。まだまだ若い子達に囲まれて生きる予定だもの」
紅蘭が髪をかき上げる。
「その発言を聞く度に年齢が気になりますね」
「言ったら焦がすわよ?」
「失礼しました」
「ガハハハハハハ!!相変わらず仲が良いなお前ら!!」
突然会場が揺れるような大声。
振り返るとそこには獅子の獣人、白虎魔法アカデミー校長――”砕牙”。
番長のような厳つい風貌は伊達ではなく極限まで鍛え上げられた肉体に砕けぬものは無く、
魔法ランクもレイリアスや紅蘭と同じSSランクの超人だ。
「砕牙、あなたも相変わらずですね。」
「おう。久しぶりだなレイリアス!!」
熊が人間を掴むような勢いで砕牙が握手を交わす。
「今年も良い生徒が育っているようだな!!」
「ええ。でもそれは貴方の所もでしょう?」
「当然だ!!青春は爆発だからな!!」
砕牙が胸を叩く。
「毎回言ってるけどそれの意味が分からないのよね」
紅蘭が呆れる。
「なにィ!!分からんか!?」
「分からないわ」
「まだまだ熱血が足りんぞ!!」
「あんたは暑苦し過ぎるのよ。」
「フォフォフォ」
今度は穏やかな笑い声が聞こえ白髪の老人が近付いてくる。
玄武魔法館館長――”黒鉄鉄重”。
齢数百年の高齢であり、落ち着きと壮大さを感じさせるが
かつて魔法大戦で名を馳せた豪傑であり、黒い龍を倒したと言う伝説もある人物。
ランクはSSでまさに達人。
「皆元気そうじゃのう」
「お久しぶりです。」
レイリアスが頭を下げる。
「前に会ったのはいつじゃったかな?」
「去年のマジックウィザードトーナメントの時以来ですね。」
「そうじゃったかの?フォフォフォ」
鉄重は笑う。
「最近忘れっぽくてのう。」
「それさっきも五回くらい聞いたわ」
紅蘭が呆れた様子で呟く。
「まぁ、しかし今年は面白そうだな!」
砕牙が腕を組む。
「ほう?何か見つけたか?」
「決まっているだろう!!若者達だ!!」
砕牙が豪快に笑う。
「今年は特に燃えている!!
うちのベルガも良い目をしていた!!」
「あら、私の方も良い子が育ってるわよ。」
紅蘭が微笑む。
「フォフォフォ…儂の孫もようやく形になってきたしの。」
鉄重が頷く。
そして、 三人の視線が自然とレイリアスへ向く。
「そちらはどうじゃ?今年の青龍は」
鉄重が尋ねる。
レイリアスは静かにワイングラスを置き少しだけ笑う。
「さて、どうでしょうね?」
「フォフォフォ…相変わらず隠しよる」
鉄重が笑う。
「ああ、その顔は何かある顔だな!!」
砕牙も同意する。
「気になるわねぇ」
紅蘭も悪戯っぽく笑う。
「特にあの男の子、”不知火燈也”だったかしら?
随分と騒がれているみたいだけど……」
「ええ、良い子ですよ」
レイリアスは窓の向こうを見る。
「まだまだ未熟な部分はありますが、
それでも…今大会の良き台風の目となってくれることでしょう。」
――少し離れた場所、燈也達はその様子を見ていた。
「なんか凄い人達集まってんな……」
郷夜が呟く。
「ですね。近付くのが怖いぐらい…」
癒水も頷く。
「でも意外ね、あの理事長が凄く楽しそう」
流水が呟く。
燈也が視線を向けると、
確か学園長の表情がいつもよりも柔らかい。
長い時を生きてきた者同士――
きっと、それだけの付き合いがあるのだろう。
「フォフォフォ…今年はどこが優勝するかのう?」
鉄重の笑い声が響く。
「決まっている!!青春が勝つ!!」
砕牙が即答した。
「だから意味が分からないのよ」
紅蘭が頭を抱える。
そんなやり取りにレイリアスは小さく笑った。
四大魔法学校、その頂点に立つ者達。
だが、今だけは長年の友人同士の穏やかな時間が流れているのだった――
次回 『第191想 それぞれの過ごし方』
魔導客船テティスで束の間の自由時間を楽しむ燈也達。
賑やかな船内で、選手達は思い思いの時間を過ごしていく。




