第189想 王者、玄武魔法館!
白虎魔法アカデミーの面々と別れた後。
「いやー、濃かったな」
郷夜が頭の後ろで手を組む。
「アンタが言えた口じゃないでしょ…」
流水が呆れる。
「特にあの鬼の兄ちゃんは面白かったぜ?」
「アンタと同類だったものね。」
「失礼な!」
そんなやり取りをしていた時だった――
会場の空気が変わり、周囲の視線が一方向へ集まる。
「……?」
癒水が振り返る。
赤い絨毯の向こうから、一団が歩いてきていた。
全員が黒を基調とした制服。
無駄な私語は無く堂々とした足取りはまるで軍隊のようだ。
「”玄武魔法館”……」
怜花が小さく呟く。
玄武魔法館――昨年度の優勝校であり大会最多優勝記録を誇っている。
四大魔法学校の中でも最強と名高い学校、その代表チームだった。
先頭を歩く青年が立ち止まる。
鋭い目に鍛え抜かれた身体、そして燈也と同じSランク保持者――”黒鉄鉄景”。
そして燈也の旧知だった。
「久しぶりだな、不知火。」
「ああ、…黒鉄」
燈也も自然に答える。
「知り合いか?」
郷夜が首を傾げる。
「部活で少し…な。」
「俺は今でも覚えている。俺はあの日、お前に勝てなかった」
鉄景の言葉に、周囲が静かになる。
「引き分けだったろ」
「勝てなかった事実は変わらない。
それに俺の防御が抜かれたのは後にも先にもお前だけだ。」
「頑固だな、相変わらず…」
「だから今度こそ決着をつける」
真っ直ぐ迷いなく、鉄景は燈也を見据えた。
「ああ。だが遠慮はしないぜ?」
燈也は少し笑う。
「勿論だ、そうでなくては勝つ意味が無いからな。」
二人の間に火花が散る。
「相変わらず暑苦しいですわね~」
横から涼しい声。
優雅に長い髪を揺らす玄武魔法館の選手の1人”緑間竜羽”だった。
「戦う前から決勝の話など、捕らぬ狸の皮算用ですわ~」
「竜羽…。」
「ですが、三顧の礼を尽くして待っていた宿敵との再会というのも
これはこれで美しいですわね~」
龍羽はそう言って自慢の胸を張る。
「意味違うだろ。」
仲間の赤山炎也が即座に突っ込む。
「お前絶対分かってねぇだろ?」
「細かいことは気にしませんわ~」
「いや、気にしろよ!」
「それにしても遅いわね」
「そんなのどっちだって良いじゃん。
さっさと挨拶済ませて移動したいんだけど?効率悪いでしょ?」
青城美麗が腕を組む。
「スピードは大事だが、お前は効率効率言い過ぎなんだよ」
炎也が肩をすくめる。
「効率は重要よ?そんな無駄ばかりだから、アンタは遅いんじゃない?」
「この俺が遅いだと!?」
「事実でしょ?」
早速言い争いを始める二人。
その横で。
「あの、お二人ともそれぐらいで、青龍学園の皆さんの前なんですから……」
おずおずと頭を下げ口論している二人をなだめる女子生徒――”黄鈴寺クレハ”。
「久しぶりだな」
燈也が返す。
「お久ぶりです。お恥ずかしい所を見せてしまいましたね。」
クレハは微笑む。
「でも、今年も優勝旗を届けたいので、負けませんから」
言葉は丁寧、だが瞳は本気だった。
そして鉄景が最後に口を開く――
「最強を証明するなら、お前を倒さなければ意味がない。」
拳を握る。
飾り気のない。真っ直ぐな言葉に燈也は笑う。
「それは俺も同じだ。」
「ああ、だから決勝で会おう」
鉄景はそう言うと王者の風格を纏いながら去っていた。
郷夜がぽつりと呟く。
「なんつーか……今までで一番ヤバそうだったな?」
その言葉に、誰も否定しなかった。
四大魔法学校、その頂点に立つ玄武魔法館。
トーナメント優勝候補、その実力は偽りではない――
次回 『第190想 四大魔法学校の長達』
世界最高峰の魔法学校を率いる者達。
不死鳥の魔女”紅蘭”、豪胆なる獣王”砕牙”、黒鉄の老賢者”黒鉄鉄重”
そして青龍魔術学園長――雷神の”レイリアス”
四大魔法学校の頂点に立つ者達が、一堂に会する。




