第185想 選ばれし魔導士達
――魔導客船テティス。
「間近でみると更にでっけぇ……」
郷夜が素直に口を開ける。
「そりゃそうでしょ。っていうかあんまキョロキョロしないでよ!
田舎丸出しで恥ずかしいじゃない!」
流水が呆れる。
「お前だってさっきまで見上げてただろ?」
「見てないから」
「いーや、見てたね!」
「だから見てないって言ってるでしょ!そんなだからモテないのよ!」
「なんだとー!」
そのやり取りに怜花が苦笑した。
「あはは……」
「皆さん、列を崩さないようにお願いします」
レイリアスが静かに注意する。
船内に入ると大理石のような白い階段、赤い絨毯。
天井には巨大なシャンデリアが輝いている、
その光景に燈也達は思わず足を止めた。
「うわ……すごい」
癒水が小さく息を呑む。
華やかなドレスや高級スーツに身を包んだ、数え切れないほどの来賓客。
そして各国から集まる各校の選手達。
まさに世界の縮図だった。
「青龍魔術学園の皆様ですね。」
受付の女性が微笑む。
「今回のクルーズは2泊3日を予定なっており、選手の皆様の個室もご用意しております。
また船内の各施設も自由にご利用頂けますのでどうぞお楽しみくださいませ。」
「うひょー!!マジかよ!!早く行こうぜ!」
「待て、まだ受付が済んでないだろうが…。」
受付を済ませ、部屋の鍵を受け取った燈也達は会場へと足を進める。
その時、会場の奥から大きな笑い声が響く。
「ハッハッハッハ!!」
恰幅の良い男がグラスを掲げる。
「今年も盛り上がりそうだな!」
「投資額も相当だと聞きましたよ」
「当然だ!」
男は胸を張る。
「これだけの大会だ!儲からなきゃ困る!」
周囲が愛想笑いを浮かべる。
「あの人……ニュースで見たことあります。」
怜花が視線を向ける。
「ゴールド・レイマン氏、今大会の主要出資者の一人だよ」
近くにいた来賓が話している。
また別の場所では――
「どういうことだVIPルームが満室ではないか?」
低い声、スーツ姿の男が不機嫌そうに眉を寄せる。
「すみません、別の方が現在使用しておりまして……」
「知らん」
男は受付を睨んだ。
「キミは主催側の人間を待たせる気かね?」
「も、申し訳ありません!」
慌てるスタッフ。
近くの来賓達が気まずそうに視線を逸らした。
「永良口様も相変わらずだな……」
「毎年あんな感じらしいぞ」
さらに奥には何人もの警備員で守られたスーツ姿の男が難しそうな顔で
秘書の1人に話しかける。
「今年の収支報告は?」
「現在集計中です。」
「急ぎなさい。」
金縁眼鏡の男が書類をめくる。
「大会は利益を出してこそ価値がある」
秘書が慌てて頭を下げた。
「は、はい。それであの、委員長…」
「なんだね?」
「開会式の準備も……」
「そんなもの後にしなさい。」
男は数字から目を離さない。
「なんか凄い人ばっかだな……」
郷夜が小声で呟く。
「近寄りたくないタイプも多いわね」
流水も同意した。
その時。
壇上近くで歓声が上がる。
「岸村大臣、お写真お願いします!」
「こちらにも!」
大勢に囲まれた眼鏡の男が満面の笑みを浮かべる。
「ははは!」
カメラへ向かって角度を変える。
「大臣、何かコメントをお願いします!」
「ははは、もちろんです!」
次々と応じていた。
一通りの記者達とのやり取りが終わると後ろに控える男性に声をかける。
「しかし、石川上級議員、何やら今年は警備員が少なくないかね?」
「問題ありませんよ」
スーツの男性が答える。
「本当にかね?」
「ええ、警備には選りすぐりの人員を配置しております。
それにここには世界の強者達が集まっています、この状況で攻めるバカ等居る筈がありませんよ。」
男が満足そうに頷いた。
「なら結構…」
「それよりも迫る次期選挙の時は何卒ご支援の程…」
「うむ。分かっておる。
この大会が成功した折には君の評価は盤石のモノとなるだろう。」
「ありがとうございます。」
「なんか大人達って大変そうだな」
郷夜が周囲を見回しながら呟く。
「アンタは楽観的だからね。」
流水が答える。
「まぁ、汚い大人よりもそっちの方がマシかもな…」
燈也が笑う。
次回 「第186想 各校代表、集結」
マジック・ウィザード・トーナメントへの出場者達が一堂に会する魔導客船テティス。
燈也たちは、各地から集まった数多の強豪校と顔を合わせる。
いずれも世界の頂を目指す若き魔導師たち。
それぞれが己の誇りを胸に、静かに闘志を燃やす。




