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Himeyuri ―魔法を嫌う元学園最強の主人公ー  作者: 小鳥遊 千夜
第六章 マジック・ウィザード・トーナメント前夜祭――魔導客船テティス編

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第184想 強者達が集う魔導客船”テティス”

 

  ――合宿が終わってから、数日後。

 青龍魔術学園の校庭には、朝から張り詰めた空気が漂っている。


 校庭中央には、青龍学園の紋章が刻まれた大型の魔導バスが停車しており、

 既に周囲には教師達や一般生徒達まで集まり、小さな人だかりになっていた。


 これは来月開催される”マジック・ウィザード・トーナメント”の前夜祭へと向かうために

 待機しているのだ。


「うわぁ……なんかマジで代表選手って感じしてきたな…ああ、緊張してきた!!」

 郷夜(ごうや)が感心したようにバスを見上げる。


「今日は前夜祭、単なる顔合わせのパーティーだ。別に戦いに行くわけじゃないんだぞ。」

 燈也(ともや)が呆れたようにため息をついた。


「いやだってよ!?各校の魔導士達が集まる大会だろ!? 

 もっとこう……、血みどろ殺伐空間を想像しちまったぜ・」


「お前はいつも極端なんだよ。」

 燈也が肩を竦める。


「えぇ~? でも実際ヤバい奴ばっか来るんだろ?」


「否定はできないわね」

 流水(るみ)が腕を組みながら答えた。


「各校の代表って時点で、最低でも一芸持ちばっかりでしょうから。」


「うぅ……胃が痛くなってきました……」

 怜花(れいか)が小さく肩を縮こませる。


「今から緊張してどうすんだよ」

 燈也が苦笑する。


「だ、大丈夫ですっ! 頑張りますから!」


「ああ、その意気だ」


 そんなやり取りの横で。


 帝亜(てぃあ)は腕を組み、静かに燈也達を眺めていた。


「……相変わらず、面白い子達ね。」


 その横顔には、いつもの余裕がある。


「……騒がしいのは苦手なんだがな」

 英明(ひであき)が面倒くさそうに呟く。


「まぁそんなこと言わずに、

 旨いものも沢山食えるかもしれないし、楽しんで行こうぜ。」

 膤斗(ゆきと)が英明の肩に手を乗せながら笑う。


「フッ…お前は相変わらずだな。」


「こういうのは楽しまないと損ってもんだろ?」


 そこへ――


 コツ、コツ、と重い足音が響き空気が少し変わる。


「……あれは」


 郷夜が小声を漏らす。


 校舎側から歩いてきたのは、教頭の片霧国光(かたぎりくにみつ)


 見た目は40代程で、長身に長い銀髪、ロングジャケット。

 鋭い眼光に狼のような獣耳、左目の傷跡を持つ獣人であり、

 ただ歩いているだけなのに、鋭い威圧感があり、一般生徒達が、思わず道を開けていた。


「相変わらず怖ぇ……」

 郷夜がヒソヒソ呟く。


「黙ってれば完全に裏社会の人だもんね」

 ななみも小声で同意した。


「オラ、聞こえてんぞガキ共」


「ひぇっ!?」


 二人が肩を跳ねさせる。


 国光は煙草を咥えたまま、ふっと鼻で笑った。


「……まぁいい」


 そして、集まった代表生徒達を見回す。


「今回は理事長が同行だ。俺ァ学校に残る。

 留守を守る奴ァも必要だからな」


 その言葉と同時に、後方から優雅な足音が近づいてくる。


「皆さん、準備はよろしいですか?」


 理事長のレイリアスが静かな微笑みを浮かべながら現れる。


「すげぇ…理事長直々か……いつ見ても美しいぜ」

 郷夜が小声を漏らす。


「当然でしょ。学校の代表者なんだから。」

 流水が答える。


 レイリアスは生徒達を見渡し、静かに頷いた。


「今回の前夜祭には、各国の要人も多数参加しています。

 皆さんの振る舞い一つで、青龍学園への評価も変わるでしょう」


 レイリアスが微笑む。


「うげぇ……そう言われるとなんだか、胃が重くなってきたぜ」

 郷夜が露骨に顔をしかめた。


「大丈夫ですよ。静かにしてれば問題は無いんですから。」

 癒水が優しく笑う。


「アイツにそれが出来ればの話だがな。」


「ハハッ…言えてる!」


「うるせー!」


 そのやり取りに周りから笑いが漏れる。


 だが、国光だけは笑わずに、煙草の煙を吐きながら、低く呟く。


「ったく……いいか、これは遊びじゃねェ。

 パーティーだからって浮かれ過ぎんな……。」


 一瞬で空気が締まる。


「……」

 燈也達が黙って聞く。


「調子に乗ってる人間は…いつか痛い目に遭うぜ?」


 それは教師の言葉というより。戦場を知る男の言葉だった。


 片霧は最後に、ふっと口元を歪める。


「ま、…せいぜい楽しんで来い。前夜祭くらいはな」


 少しだけ空気が緩む。


「片霧先生って不器用ですよねぇ」

 ななみが小さく笑う。


「うるせぇ」


「でも、ありがとうございます」

 癒水がぺこりと頭を下げた。


「……チッ。さっさと行け」


 片霧は気まずそうに煙草を咥え直す。



「では皆さん、そろそろ出発しますよ」


 レイリアスがバスへ視線を向けると扉が静かに開いた。


「おぉ~……高級感すげぇ……!」

 郷夜が目を輝かせる。


「もうはしゃぐがない。恥ずかしいでしょ!」

 流水が即座に首根っこを掴んだ。


「ぐえっ」


「ほら、後がつかえてんだ。遊んでないで行くぞ。」

 燈也が笑いながらバスへ乗り込む。



 数時間程、バスに揺られていると、海が見えてくる。


 海上に浮かぶのは巨大な白銀の影――超巨大魔導客船“テティス”。


 豪華な装飾に幾重にも連なる光、まるで海に浮かぶ宮殿だった。


「いくらなんでもデカ過ぎでしょ……」

 流水が呆然と呟く。


「すげぇー!まるで城じゃねぇか!?」


「これが全部パーティー会場なんですか?」

 怜花も目を見開く。


 船の周囲には、無数の警備艇。既に世界規模の空気が漂っている。


「ええ、そうですよ。」


 魔導バスはゆっくりと停泊ゲートへ近づいていく。


 世界中の強者達が集う宴の舞台へ、生徒達は足を踏み入れようとしていた。


次回  『第185想 選ばれし魔導士達』


 マジックウィザードトーナメント開幕を前に、

 各校の代表選手達が一堂に集う前夜祭が始まる。


 煌びやかなシャンデリア、海上を進む巨大客船。

 集うのは、各国の要人と選ばれし魔導士達ばかり――


 強者達の視線と思惑が交錯する。




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