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Himeyuri ―魔法を嫌う元学園最強の主人公ー  作者: 小鳥遊 千夜
第五章 湯けむり大騒動!?魔法旅館編

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第180想 青雲祭、開幕


 赤い提灯、並ぶ屋台。

 漂う甘い匂いと、香ばしい煙。


「うおおおお!!祭りだぁぁぁ!!」

 郷夜(ごうや)が真っ先にテンションを爆発させる。


「もう子供じゃないんだから……」

 聖妓(せいぎ)が呆れる。


「いやいや!祭りでテンション上がらない奴いる!?」


「います」

 黒子(くろこ)が即答した。


「即答!?」


 そんな騒がしい一行の前に、最初の屋台が見えてくる。

 水槽の中を、赤や黒の金魚達がゆらゆら泳いでいた。


「あれは金魚すくい……!」

 流水(るみ)の目が輝く。


「あら、やるの!?」

 帝亜(てぃあ)が食いつく。


「当然でしょ?魚相手に負ける気しないわ」

 流水が袖をまくる。


「なんだ、その自信……」

 郷夜が苦笑する。


 すると、 聖妓が挑発的に笑った。

「ふーん、だったら、皆で勝負しない?」


「勿論、受けて立つわ!」

 流水が自信満々に笑う。

 

「ふふ、面白そうね。」

 帝亜まで参戦する。


「よーし!じゃあ俺も!」


「オレ様を忘れちゃ困るな…

 クジラでも鮫でもなんでも捕まえてやるぜ。」


「風間先輩、その自信はどこから来るんですか…。」

 翔太(しょうた)がツッコむ。


 結局、ほぼ全員参加になった。


 ポイを受け取り、それぞれ配置に付く一行。


「…………」


 その中で、流水だけ空気が違う――

 

 いつにも増して真剣そのものだ。



「お、おい……漁師みたいな目してるぞ」


 雄介(ゆうすけ)が引く。


「魚と心を通わせるのよ」


「意味分かんねぇ……」


「分かってないな。お前ら…そういう所も流水さんの良い所じゃないか。」

 膤斗は自分だけは気付いているという表情で笑う。


 そして、次の瞬間――


 スッ。


 流水のポイが、水面を滑り、

 一匹、2匹と異常な速度で掬っていく。


「はやっ!!」

 恒一(こういち)が叫ぶ。


「速さじゃねぇ…よく見ろ。あれだけ、

 取っても紙は少しも破れてない。なんて手捌きだ!」

 雄介が驚いた表情で眺めている。


「ちょ、ちょっと、何なのよ、あれ!」

 それを見て聖妓が慌てる。


 だが焦った瞬間――ビリッ。


「あっ」


 ポイが破れた。


「弱っ」


「うるさい!!」


「ふっ…甘いわね。金魚すくいは焦ったら負けなのよ……」

 帝亜が聖妓の様子を見て笑う。


「そして、大事なのは数じゃない…質よ。

 私が狙うのはあの子、あの大きさに美しい模様、ふふっ…優勝は貰ったわ!」

 帝亜が狙うのはひと際美しく大きい丸型金魚。だが――


 その大きさの前にポイは無残にも敗れる。

「ああああっ…可愛かったのに…」


「欲張り過ぎましたね。」


 一方で、燈也は意外と安定していた。

「……魚の動きが分かってきたぜ。」


 無理せず、確実に数匹取っていく。


「へぇ…地味に上手いな」

 膤斗が感心する。


「昔、流水姉に誘われてやったことあるからな。」


「なるほど、これは俺も負けていられないな。」


 二人が安定して取っていく、その横では…


「ほらぁぁぁ!!こっち来い魚ぉぉぉ!!」

 郷夜が暴れていた。


 当然、魚は逃げていく。


「ああ~。めっちゃ避けられてるっスね……」

 恒一が溜息を吐く。


「違う!!これは魚側がオレ様の強さに恐れをなしてるだけだ!!」


「現実見てください」

 黒子が的確にツッコミを入れる。



 そして結果は――


 1位はぶっちぎりで流水。


「ふふん♪」

 大量の金魚袋を持ちながらドヤ顔で微笑む。


「強すぎるだろ……」


 2位は癒水。


 優しく掬うせいか、妙に魚が逃げなかった。


 三位が同率で燈也と膤斗。


 下位争いは帝亜と聖妓。


「なんでアンタそんな下手なのよ!」


「そっちこそ!!」


 そして。


 最下位。


「…………0匹だと!!?」

 郷夜だった。


「魚からも嫌われてるとは不憫っスね……」

 恒一が哀れむ。


「黙れぇぇぇ!!」



「納得いかないわ……次!射的で勝負よ!」

 聖妓が腕を組む。


「お、リベンジか」


「今度こそ、決着を付けましょう。」

 帝亜も燃えていた。



 射的屋に移動すると、今度は空気が変わる。


 カラン、と銃が置かれる音。

 

 聖妓の目が細くなる。


「……へぇ」


 妙に様になっていた。


「おお!副部長、なんかそれっぽい……」

 翔太が呟く。


「当然よ」

 聖妓が銃を構える。


 パンッ!

 一発で景品が落ちる。更にもう一発、


 パンッ!


 次々と景品を落としていく。


「うおおっ!?上手いっスね!!」


「ふふん♪」

 さっきまでの鬱憤を晴らすように撃ち抜いていく。


 そして結果は断トツで優勝。


「へぇ…やるじゃねぇか」

 燈也が感心する。


「当然でしょ!!」


 聖妓が当たり前のような表情で髪を払う。

 だが、褒められてちょっと嬉しそうな笑みを浮かべている。


 二位は膤斗。


「こういうの結構得意なんだよな」

 膤斗が銃を肩に載せながら得意げに笑う。


「流石は魔法執行部のエース、何やっても上手いな。」

 燈也が銃を返却しながら膤斗を褒める。


「いや、そういう兄弟も3位だろ?

 初めてであれだけ出来れば十分スゲーと思うぜ。」


 その一方で…


「ぐわぁぁぁ!!なんで当たらねぇ!!」

 郷夜が悔しそうに叫ぶ。


 そして。恒一も下位。


「ハァ…俺、才能ないんスかね……」


「アンタは集中力無さすぎよ」

 黒子が冷静に刺した。



「さて色々遊んだし、少し何か食べないか?」

 燈也が仲間達に提案する。


「……あの、それでしたら」

 愛紗(あいしゃ)が遠慮がちに指を差す。


「わたあめ、食べたいです」


「お、いいじゃん」

 燈也が笑う。


 巨大なわたあめを受け取った愛紗は、目を輝かせた。


「すごい……雲みたい……!」


「ハハハハ…かわいい食レポだな」

 膤斗が笑う。


「焼きそば!たこ焼き!串焼き!フランクフルト!」

 その横で、雄介が両手いっぱいに屋台飯を抱えていた。


「ちょっと、まだ食うの!?」


「祭りは胃袋の戦争だろ!!」

「そんなの聞いたこともないわよ。。」

 流水が呆れる。



「これ、美味しい……屋台と言ったらこれよね。」

 帝亜がりんご飴を食べながら呟く。


「そりゃ良かったな」

 英明が隣でたこ焼きを食べている。


「……お前も食うか?」


「え?」

 帝亜が目を丸くする。


「嫌なら、無理には言わないが…」


「……いただくわ」

 少し嬉しそうに笑った。

 

 そして。

「あの、流水さん…」

 両手にかき氷を持った膤斗が片方を流水に差し出す。


「一緒に食べな…食べませんか?」


「……まぁ、いいわよ。」

 流水がかき氷を受け取り、一口食べる。


「……冷たっ」


 だが次の瞬間、少しだけ笑った。


「でも美味しいわね。」


「!」

 膤斗の顔が一瞬で明るくなる。


「なら、沢山食べて下さい。足りなければどんどん買ってきますんで!」


「アハハ!!いくらなんでもそんなに食べないわよ。」


 その様子を、ななみがくすっと笑う。


 誰もが今を楽しんでいた。

 この時間が、ずっと続けばいいと思うように。


 次回 『第181想 遠い約束の気配』


 夏祭りで賑わう青雲祭。

 仲間達と過ごす賑やかな時間の中。

 燈也は、人混みの向こうに“懐かしい後ろ姿”を見た気がした


 そんな中、誰にも気付かれないように、そっと燈也の袖を引く少女が一人。


「……少し、付き合いなさいよ」

 

 祭りの熱から、少しだけ切り離された夜。


 二人は静かに、花火の見える場所へ歩き出す。


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