第179想 星空みたいな君に見惚れて
「……あの」
控えめな声で立っていたのは、怜花だった。
淡い蒼色の浴衣に深い紺の帯。
淡い赤の髪には、小さな星飾り。
決して派手ではない、
けれど、不思議なくらい目を引く。
まるで静かな夜に溶け込むような綺麗さだった。
「……どうでしょうか?」
怜花が少しだけ視線を逸らす。
指先は帯の端をそっと握っていて、緊張しているのを感じる。
「……」
燈也が、言葉を失う。
ほんの数秒――だが、
怜花には、その沈黙がやけに長く感じた。
「……燈也さん?」
「あ……いや」
燈也が我に返ったように頭を掻く。
照れくさそうに視線を逸らしかけながらも、正面から怜花を見る。
「…すげぇ似合ってるぞ。」
「っ……」
怜花の肩が小さく揺れ、みるみるうちに顔が赤くなっていく。
「そ、そうですか………よかったです。」
俯きながらも、嬉しそうに微笑む。
その姿に燈也の胸が少しだけ熱くなる。
怜花が照れたまま続ける。
「その、皆さんが綺麗だったので……
私だけ変じゃないかなって少し不安で……」
「変なわけあるか。
むしろ一番、怜花っぽいと思ったぜ」
「……私、っぽいですか?」
「ああ、派手じゃないけど、ちゃんと目を引くっていうか、
夜空で静かに光る星みたいな感じでさ。」
「……っ」
怜花の呼吸が止まり耳まで真っ赤になる。
「なんだか、それ……」
「ん?」
「すごく、恥ずかしいです……」
「え、なんで!?」
「そ、そういうこと自然に言うからです……」
怜花が顔を隠すように俯く。
「……?」
燈也は自覚がないまま首を傾げた。
その様子があまりにもいつも通りで、怜花は困ったように笑ってしまう。
「ふふ……」
「なんだよ?」
「いえ……燈也さんらしいなって」
その笑顔は、どこか安心したみたいに柔らかく、燈也もつられるように少し笑う。
「まあ、似合ってるのは本当だから」
「……はい」
怜花が小さく頷く。
その言葉を胸にしまうみたいに、大事そうに。
時が止まったかのように沈黙が流れるが、
不思議と気まずくはない。
外では祭囃子が鳴り始めており、祭りを楽しむ賑やかな声が遠くから響く。
その時、
「……青春してんなァ」
後ろから郷夜のニヤついた声。
「っ!?」
怜花がビクッと肩を跳ねさせる。
「うるせー!」
燈也が即座に振り返る。
「いやだって、完全に二人の世界だったじゃねーか?」
「そんなんじゃねーよ!!」
「でも、不知火先輩顔赤いですよ?」
翔太の追撃。
「だから違ぇよ!っていうか、お前まで乗るな!」
「す、すみません……!」
ロビーに笑い声が広がる。
その中で、怜花は少しだけ顔を赤らめながら幸せそうに微笑んでいた。
「よーし!
それじゃあ全員揃った事だし祭りに行こうぜ!」
郷夜が勢いよく手を上げる。
まるで燈也達を歓迎してるかのように、祭囃子が少しだけ大きく聞こえた。
次回 『第180想 青雲祭、開幕』
青雲祭、開幕!
浴衣姿の仲間達と過ごす、賑やかな夏の夜!
笑って、騒いで、少しだけ距離も近づく――。




