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Himeyuri ―魔法を嫌う元学園最強の主人公ー  作者: 小鳥遊 千夜
第五章 湯けむり大騒動!?魔法旅館編

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第174想 追憶のアンコール


 セレナの最後の仕掛けが、燈也(ともや)達を誘う。

 

 空間には光が滲み、辺りが白い霧に包まれ

 重苦しかった墓地の空気が、少しずつ変わっていく。


「うわぁ!!…何が起きてるんだ?」

 郷夜(ごうや)が驚きの声を上げる。


 冷たさが消え代わりに広がるのは――懐かしい景色。

 そして、聞こえてくる歌声。


「……この歌……」

 怜花(れいか)が、震える声で呟く。


「……なな……?」


 ななみの唇から、自然とその名前が零れる。


 墓地の中央、カードの隣に小さな人影が現れた。


 ピンク色の髪、揺れるサイドテール、

 決して忘れることが出来ない少女――柊ななの姿。



「皆してどうしたのだ?…」

 ななが八重歯を覗かせながら笑う。

 

「……」


 誰もすぐには言葉を返せない。


 ななが()()()()()

 あまりにも“いつも通り”の姿で。


「まるで、幽霊でも見たみたいな顔をしてるのだ。」

 ななが首を傾げる。


「いや、幽霊だろ!お前」

 郷夜が反射的にツッコむ。


「相変わらずゴーヤは失礼な奴なのだ!ななは生霊系アイドルなのだ!」


「どんなジャンルだよ!?…ったく驚かせやがって。」


 だが、その瞬間皆の口元が少しだけ緩んだ。


 あまりにも、変わっていない。

 その声が、その存在が


「……ほんとに、ななちゃんみたい……」

 癒水の目に涙が滲む。


()()()じゃないのだ。本物のなのだ!」

 ななが胸を張る。


「……そうね。その元気さ、本人すぎるわ」

 流水が小さく笑う。


「むー!なんかバカにされてる気がするのだ!」


 そのやり取りに、怜花がふっと笑みを漏らす。


「……懐かしいですね」


「だな」

 燈也も静かに答え、笑い声が広がる。

 

 その空気が、苦しいほど温かい。


 だけど、ななみの笑顔が少しだけ揺れる。


「……なな。」

 ななみが、一歩前へ出る。


「おねえちゃん…?」


「……会いたかった。」


 その言葉に、ななの目がわずかに見開かれる。


 そして、


「……ななもなのだ」

 笑顔で答える。


 その瞬間、ななみの瞳から、涙が零れ落ちる。


「……お姉ちゃんっ…どうしたのだ!?」

 ななみの涙にななが驚く。


「お、おい……」

 雄介が心配そうに声をかける。


 だが、ななみは首を振った。


「ご…ごめんね。……取り乱しちゃって…」


 涙を拭いながら笑う。

 その様子を、ななが静かに見つめる。


「……ずっと、心残りだったの。

 わたしがもっとちゃんとしてたら、もっと一緒にいてあげてたら…って」


 声が震える。


「でもね。もう大丈夫…。」


 ななみが、後ろを振り返る。


 そこには仲間達――


「みんなが、いてくれるから…」


 涙声のまま笑う。


「だから……わたし、もう逃げない。」


 ななの目が、静かに揺れた。


「あなたの分までちゃんと進む。

 なながいなくなった時間も、ちゃんと抱えて生きていく」


 声が、少しずつ強くなる。


「だから――私はもう大丈夫。」


 その言葉を周りの仲間が優しく微笑みながら聞いている。


「だから――」


 ななみが、もう一度ななを見る。


 優しく、愛おしそうに…


「おやすみ、なな。」


 その瞬間、ななの表情が崩れる。


「……うん」

 目尻に、ほんの少しだけ涙を浮かべながら、小さく頷く。


「おやすみなのだ、お姉ちゃん。」

 光が揺れななの姿が、少しずつ透けていく。


 

 その姿を見ながら 燈也が静かに口を開いた。


「あのさ……幻なのは分かってる。

 …それでも、お前と会えて良かったと思ってる。」


 ななが目を丸くする。


「……」


 そして、照れ隠しみたいに笑った。


「ふふーん、当然なのだ。」


 最後まで、生意気に。

 最後まで、“なな”のままで。


「皆…()()なのだ。」


 明るい、その声と共に

 ななの姿は、淡い光になって夜空へ溶けていった。


 「ああ、…またな。」

 燈也が小さく呟く。


 

 そして墓地に残されたのは、目的のカード。


「……行くぞ」

 燈也が静かに手を伸ばす、カードを掴む。


 その瞬間――


 カッ!!


 眩い光が、墓地全体を包み込み、トラップも霧も嘘のように消えていく。


「……終わったのか……?」

 郷夜がぽつりと呟く。


「みたいだな」

 燈也が息を吐く。


 吹き抜ける風はどこか清々しい。



 ななみがふと、空を見上げてる呟く。

「…ありがとう」


 涙の跡を残したまま。それでも、ちゃんと笑顔を浮かべている。


 その声に呼応するように――

 どこか遠くで、小さな“灯”が揺れた気がした。


次回 『第175想 灯りは、まだ消えない』


 森を抜け、ようやく帰ってきた燈也達。

 恐怖の夜は終わった――はずだった。


 だが、彼らの胸には確かに残っていた。

 あの森で見た、“導きの灯”。


 そしてセレナだけが気づく。

 あれは、自分の仕掛けではなかったと――。


 小さな謎を残しながらも肝試しは幕を閉じる。


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