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労働の話⑧

「なにしてるんだ、グリムは……」

「さあ? おれが見本にハンマーを作ってやったらああなった」

「ハンマーにおかしな呪いでもこめたんじゃないだろうな」

「失敬だな! こめてねえよ!」


 好き勝手言われている気がするが、気のせいだろう。だって気にならないし。

 僕はリズのハンマーを見つめ、軽く振りながら、シチューを口に運んだ。


「おいおい、こぼれてるぞ、グリム」

「あごに垂れてるな」

「ああもう、まったく。垂れてることくらい気づけよ」

 あごになにか触れた気がする。

「服が汚れるだろ。ったく……」

「甲斐甲斐しいな」

「うるさいな! からかうなよ!」

 ダヴィの笑い声とリズの怒鳴り声が聞こえた気がした。





 ***





 リズのハンマーを観察し続けていて、気づいたことがある。リズも言っていたことだが……「丁寧に作る」「均質」「継ぎムラ」「力の伝達のズレ」……。このあたりのことがキーだった。

 リズのハンマーと僕のハンマーの最も大きな違いは、その均質さにあったのだ。

 僕は、リズにハンマーを作るように言われていた。おかしななりゆきではあったけれど、働くことになった以上は、ちゃんと仕事はしようとは思っていた。いいハンマーを作ろうと。

 だから僕は「とにかく頑丈」なハンマーを作ろうとしていた。意識的にそう思っていたわけじゃない。思い返せばそうだった。仮想物体イマジナリーを生成するとき、ひたすら「頑丈になれ、頑丈になれ……」と、そんな風に念じながら生成していたわけだ。


 結果的に、それが「よくなかった」のではないだろうか。

 それがリズのハンマーを観察して、たどり着いた僕の結論だ。

 リズのハンマーは、こう言っては何だが、それほど頑丈とは言えない。僕が全力で「頑丈」に作った仮想物体より強度は低いのだ。

 ただ、全体としての強度は高い。

 要するに僕のハンマーは、強度や脆さといった性質にムラがある。すべての箇所について全力で頑丈にしようとしていたため、たとえば300メートルを全力疾走するときのように最初、中間、最後でスピードに違う、みたいなことが発生する。

 全力の集中力はそう長くは続かない、ということ。

 だから全力の頑丈さは、決して均質にはならない。

 頑丈さと言うと、やや正確さに欠けるか。頑丈さには、たとえば鉄のようにひっかいても傷はつかず、叩くとやや変形してもそう大きく元の形から変わらないという頑丈さもあるが、石のようにひっかいてもやはり傷はつかないが叩くと割れてしまうような頑丈さもある。

 単純な強弱だけではなく、頑丈さの方向性……種類も考えなければならない。

 均質ではないハンマーは、つまり鉄と石が混ざったようなものなのだと思う。鉄も石も頑丈だけれど、比重とか弾力とか脆さといったものが違うから、全体としては頑丈とは言えない。そこには歪みが生じるからだ。

 鉄と石のハンマーは、木製のハンマーで叩けば壊れることもあるのではないだろうか。

 そして、リズのハンマーは木製のハンマーなんじゃないだろうか。


 部分的な強度が高くとも、全体の強度が均一ではないハンマーは、

 部分的な強度は低くても、全体の強度が均一なハンマーに劣る。


 リズのハンマーが僕のハンマーを砕いたのは、そういうことだったのではないか。

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