収束する螺旋、7
全員で王都へ転移した。
転移した場所は、王宮の中庭……ではない。いきなり敵陣のど真ん中に転移するなどもってのほかだと、レオンハルト以外のみんなが止めたので、王都に数ある広場の一つにした。ちょうど一昨日、散歩中のイニチェたちとすれ違った場所だ。
王都は意外にも、静かだった。
いつもの王都と変わらない街並みが広がっている。広場はどこも壊れておらず、見渡す限りの住宅街や商業店舗も無事だ。
いや、聖教会騎士団が戦っている相手はせいぜい百人程度の邪教徒だけなのだからそれほど不自然ではないのかもしれないが……。でも、王都のどこかで煙の一本でも立ち上っているものと思っていたのに、それもない。
しかし不気味なことに、人の姿が全くなかった。
誰一人、影も形もない。しんと静まり返った広場の真ん中で、ただ噴水だけが静かに水の流れる音を立てている。
「誰もいない……」スクエラがつぶやいた。
「広場にも通りにも、店の中にも……。裏路地にも……」
僕は住宅街の家々の窓をみた。どの窓もカーテンが閉められている。僕は、心の中で謝って、近くの家の中を魔術で透視した。
「家の中には、人はいるみたいだね」
「うーむ……」
レオンハルトは腕を組んで、僕たちを振りかえった。
「このまま王宮に踏み込むのもいいとは思うが……、どうしてこうなったのか調べた方がいいかもしれん。みんなはどう思う?」
「あら、ずいぶんと民主的ね」とキャリオ様は笑った。
「失敗して気が小さくなっちゃった?」
レオンハルトの顔がむすっとつぶれた。
「……失敗などしていない」
「それはさすがに無理があるでしょう……」
「……」
レオンハルトは口をへの字に曲げたまま黙ってしまった。キャリオ様は残念そうに肩をすくめた。
「まあ、いいです。続きをどうぞ」
「さて、どうする? 俺はどうやら今、人の意見をきく心の余裕があるようだ。……普段と違ってな」レオンハルトは不機嫌そうにそう自虐し、キャリオ様をにらんだ。
「どうだ? 意見のあるものはいるか?」
しかし、誰の手も上がらない。
レオンハルトはため息をついた。
「おいおい、引っ込み思案だな……。そんなんだから友達がいないんだよ」
みんなでレオンハルトを袋叩きにした。
「まったく、もう! このっ……ばーか!!」
キャリオ様は地面に横たわって伸びているレオンハルトにむけて大声で叫んだ。
「まったく。そんなに気になるなら直接聞きゃあいいでしょう!」キャリオ様はすぐ近くのアパートメントを指さした。珍しく眉間にしわを寄せている。
「友達はあんまりいませんけど! 引っ込み思案ですけど! 心優しい私は、確認しに行きますよ! 行きゃあいいんでしょう!」
「そんな怒らなくても――」とレオンハルトが言いかけると、
「うるさい!」
キャリオ様はピシャリと叫んだ。
どうも「友達」発言が相当シャクに障ったらしい。どすどすと荒々しく歩いていった。
「俺、そんなに悪いこと言ったかな……」とレオンハルトが言うので、僕たちは笑った。
「言ったね」と僕。
「言ったな」とリズリー。
「自覚ないの?」とスクエラ。
「さすが勇者だ、と言っておこう」トリはイニチェだった。
レオンハルトは不細工な犬のような顔になった。




