収束する螺旋、6
「というわけで、王都が大変なんだ。一緒に来てくれ」
僕はいま起きている問題について、レオンハルトたちに話した。がけ下に転がっている無惨な馬車の残骸を、みんなで見下ろしながら。
「なるほどなあ」
レオンハルトが腕組みしながらうなずいている。神妙な顔だが、馬車を残骸に変えたのは紛れもなく彼らしい。
「すぐにでも王都に飛んだ方がいいな」
レオンハルトがそういうと、キャリオ様、スクエラ、リズリーの三人はそろって五秒間ほどレオンハルトの顔をじっと見たが、やはりそろって目をつぶってうなずいた。
「わかりました、いいでしょう」とキャリオ様。
「賛成です」とスクエラ。
「問題ない」とリズリー。
「なんでさっき俺の顔をみたんだ?」これはレオンハルトだ。
「こほん! それにしても……」キャリオ様が咳払いしてレオンハルトの疑問をスルーしながら言う。
「ブラズ殿下も大胆ですね。そんなに堂々と陛下の暗殺を企てるとは……。聖教会は全面的にクーデターに加担しているということですか?」
「おそらく」
僕はうなずいた。
……僕は、四人に真相を話していない。「ビスキュイ殿下こそがクーデターの黒幕だ」という真実は伏せて、「ブラズ殿下がクーデターを企てた」ということにしておいた。
内容としては基本的には同じだ。ブラズ殿下が聖教会騎士団や僕たちが見ている前で、陛下を殺した。僕たちは巫女の手から逃れてきたのだと……。
イニチェは何も言わなかった。彼はずっと無言だ。ただ黙って腕組みをして立っているだけだ。おそらく真相には気づいているのだろうが、黙っていてくれているのだろう。
「ふむ……、変ですね」
キャリオ様は首をかしげた。僕はドキッとした。どこか破綻があっただろうか。いや、そりゃたくさんあるか……。
「どうしてシャルはブラズ殿下の下へ行ったのでしょう? あのシャルが自分の意志でそうするとは思えないのですが……」
「僕にもわかりません。今回、何が起こっているのか……」
「……」キャリオ様は小鳥の首をなでながら、黙って僕を見つめている。
「わかりました。いずれにしても、王都で邪教徒の方々が殺されているのは本当なのですね?」
キャリオ様は僕よりもむしろイニチェに質問したようだった。
イニチェは腕組みを解き、目を開けてうなずいた。
「ああ。いま、王都では聖教会騎士団が暴れまわっているだろう。王都に残った邪教徒は、もうほとんど死んでいるはずだ」
「でもまだ生き残りはいる。そうですね?」
「……どうかな。それはもう誰にもわからないんじゃないかな」
「わかりました」キャリオ様はうなずいた。
「聖教会騎士団を止めましょう」
「……いいのか?」レオンハルトが言った。
「巫女として、天使に選ばれた者として、それで……」
「関係ありません」キャリオ様はきっぱりと首をふった。
「巫女である前に、天使に選ばれた者である前に、私は私という人間です。私が、正しくないと感じたことを、正しくないと言う。それのどこが問題なのですか?」
「……そうだな」
レオンハルトはうなだれて言った。なんだか元気がない。珍しいな。
「さて」キャリオ様は僕たち全員をぐるりと見回した。
「私たちは王都へ行って、聖教会騎士団の暴挙を止め、ブラズ殿下のクーデターを……阻止します。どうも、もう陛下は崩御なさったようですが、暴力で玉座を奪うようなならず者に王権を預けるわけにはいきません。一度白紙に戻すべきだと思います。……異議のあるかたは?」
「反対意見のある方はいませんね? では、行きましょうか。執事さん、転移の門を開いてください」




