収束する螺旋、4
「どう思う?」とイニチェ。
「どうだろうね」これは僕だ。
洗脳した神父から、レオンハルトたちの行き先について仕入れた情報についてイニチェと相談することにした。神父は用済みなので眠らせた。
「王都に戻ったらレオンハルトたちがもう戻ってるかもしれないけど、戻ってなかったら結局トロッピカまで行かなきゃいけないよなあ」
「まだトロッピカにいるんじゃないのか?」
「うーん、どうだろう」僕は首をひねった。
「あそこって、正直あんまり目ぼしいものがないんだよね。ダンジョンも数えるほどしかないし。面白いイベントもあるっちゃあるけど、あのパーティーの誰も謎解きなんか興味ないだろうし……」
「なんの話だ?」
「正直、トロッピカはもう出ていると思う。でも王都にむかう途中のどこかじゃないかなあ」
「他の目的地は? 可能性ないのか?」
「あるよ。全然あると思う」僕は頭を抱えて、長椅子に寝転んだ。
「港町も近くにあるし、港から孤島にむかうこともできるし、近くに高い山だってある。他にもいろいろ……ロケーションには事欠かないね」
「でもトロッピカには無いのか?」
「トロッピカには無いね」
「お前のそのトロッピカに対する評価の低さは何なんだ……?」
背もたれのむこう側から聞こえてくるイニチェの呆れ声を僕は無視した。
「仕方ないね」僕はため息をついた。
「トロッピカには行こう。で、レオンハルトたちが王都にむかっていたら、もうあきらめて先に王都に戻ろう」
「他の地域なら?」
「是が非でも追いかけ、どこにいても追い詰めて、王都に連れ戻す」
「指名手配犯みたいだな」
「王都に戻ってくるとすれば、レオンハルトたちなら二日くらいだろうけど、他は見込みないってことだからね。時間をかけても探さなくちゃ」
「トロッピカと王都の道中にいた場合は追いかけないってことか?」
「ああ。たぶん探しているうちにレオンハルトたちが王都についてしまう。意味がないよ」
「あいつら、そんなに足が速いのか? レオンハルト以外は速そうに見えなかったが……」
「ちゃんとした道があれば、陸路はめちゃくちゃ速いはずだよ」僕は空中に指でスーッと線を引いた。
「手紙に書いてあった。東の港町で問題を解決したときに、その町の領主から特別な馬車をゆずられたって。普通の馬車は馬がひくけど、それは魔力で動くんだって。なんでも昔ダヴィが作ったらしいんだけど……」
「ダヴィ? 誰だ?」イニチェが聞いた。
「魔剣鍛冶師だよ。凄腕の」
「魔剣って……馬車なんだろう、それ……」
「馬車だけど魔剣なんだよ」
「なんだそりゃ……」
イニチェは腑に落ちていないようだったが、僕は続けた。
「とにかくそれをレオンハルトが手に入れたから、道中はすごく速くなったそうだよ。頑丈な馬車だから、森の中も木々をなぎ倒して行けるし、」
「いいのかそれで」
「弱い魔物ならノンストップでひき殺せるって」
「人もひき殺さないのか?」
「いつかひき殺すだろうってスクエラは書いてたね。でもそんなことより運転が荒いから、乗り物酔いがひどいって書いてたよ」
「そんなことより?」
「キャリオ様もおんなじ意見だって」
「そんなことよりの部分じゃないよな? 乗り物酔いの話だよな」
「それも書いてあったよ。両方だってさ」
「……どうなってるんだよ、勇者と巫女の一行は……」
「君に言われるようなら、世も末だねえ」
「……やっぱりお前、シーザー教徒のこと馬鹿にしてるだろ?」
「冗談じゃないか。セーフだろ?」
「冗談にしてる時点で、アウトなんだよ」




