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僕はあなたをハッピーエンドへ連れていく  作者: 甲斐柄ほたて
ホィールオブフォーチューンの崩壊
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反響する真実、8

「手助け? とんでもない!」


 僕は叫んだ。僕はもう天使(ミカエル)に背を向けている。シャルロット様は目を丸くした。


「こんな奴の相手はごめんです。逃げますよ!」


 後ろで天使が剣のようなものを構えるのがわかった。僕が転移魔術で逃げる前に攻撃しようという魂胆なのだろうが、甘い話だ。


「攻撃はしていいのよね?」


 いいですよ、と答える前にシャルロット様は氷の弾丸を天使に何発か撃ち込んでいた。天使はマリーナに憑依しているだけだから、見た目はまるっきりただの子供なのに、容赦のない話だ。

 僕は転移門を開いて、ベルさんとシャルロット様の手をつかんだ。


「アルテミス! 時計台へ!」


 そう叫んでから、僕は二人を連れて転移した。



 ***



 三人が消えた後、天使は誰もいなくなった空間を斬った。


「……消えたぞ!」ミカエルはビスキュイを振りかえって言った。

「時計台と言っていた。そちらへ飛んだようだ! 追いかけるか!?」


「追わんでいい」ビスキュイは気のない様子で答えた。

「あれはただのブラフだ。本当は全然違う方へ転移したんだろうよ。……お前、『見える』んじゃないのか?」


「時計台の方を見ていた! ええい、こざかしい!」


「しかし、誤算だったな。姉上があんなに早く正気に戻るとは……。天使にクリムを攻撃させたのがまずかったか……」


「どうするんだ?」ミカエルはビスキュイを見上げて指示を仰いだ。

「もう残り時間は無いが……」


「もう戻っていい」ビスキュイはしっしっというジェスチャーをした。

「今日はもう来ないだろう。だが、いずれ必ず来る。そのときまで温存していろ」


「わかった」


 ミカエルはうなずき、目をつぶった。

 再び目を開いた時には、マリーナに戻っていた。


「……ミカは失敗したの?」


「ああ」ビスキュイは不機嫌そうな声を出した。マリーナとは問答をしたくないようだった。

「下がっていろ」


 しかし、マリーナはその場に立ったまま、周囲を見渡している。


「……何をしている?」とビスキュイ。


「よかったね」


「はあ?」


「よかったね、あの人、殺されなくて。逃げてくれて」


「……」


「休んでていいの?」


「ああ……。ショコラ!」


「はい」どこからともなくショコラが現れ、ビスキュイの隣に立った。

「なんでしょう、殿下」


「あいつをどこか……控室にでも連れて行ってやれ」


「わかりました」


 ショコラはお辞儀をすると、命令通りマリーナをどこかへ連れて行った。

 誰もいなくなった中庭で、ビスキュイは一人で煙管(キセル)に火をつけた。


「ちっ……。不味(まず)いな」



 ***



 僕、シャルロット様、ベルさんは王都の中の川の近くに転移した。

 道端にいきなり現れた僕たちをみて、通行人は目を丸くした。

 やけに人が多く、騒がしい。


「危なかった……。助かりました、シャルロット様」


「……」


 お礼を言ったが、シャルロット様はまるで反応を示さなかった。


「シャルロット様?」


「ん、ああ……。どういたしまして」


 返事はあったが、まるでそっけない。完全に上の空だ。

 それはそうか。

 伯父である王が死に、

 殺したのは父であり、

 その父を操っていたのは弟だったのだから。


「ここはどこですか?」ベルさんが言った。

「王都の中のようですが」


「知人の宿の近くです」


「邪教徒の……?」


 シャルロット様が言った。

 まだ上の空のようだったが、彼女は気合をいれるように頬を何度かパシパシと叩いた。


「……ふう! そういうことよね?」


「そうなのですか?」ベルさんが食いついた。

「本当に邪教徒とつながりがあったのですね」


「まあまあ、ベル。いいじゃない。これくらいやんちゃでも、仕方ないわよ」


「シャルロット様がそうおっしゃるなら……」


「盲目すぎません?」


「あなたの両目を節穴にしてあげましょうか? ええ?」


 ベルさんは完全に本気の目だった。


「遠慮しておきます……」


「それで、その知人というのはどこにいるの?」シャルロット様はきょろきょろと周囲を見回し、ある一点を指さした。

「ひょっとして、あそこ?」


「え?」


 みると聖教会騎士団が、古い宿屋に群がっていた。

 もちろんそここそが、知人すなわちイニチェたちが宿泊していた宿だった。

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