↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕はあなたをハッピーエンドへ連れていく  作者: 甲斐柄ほたて
ホィールオブフォーチューンの崩壊
251/277

うごめく陰謀、5

 シャルロット様はすぐにでも王宮のビスキュイ殿下に会いに行こうと言い出したが、団長に「殿下は現在は別の都市に視察に出ている」といわれて冷静になった。

 結局、ビスキュイ殿下に文句をいいに行くのは、後日あらためて日程を調整したのち、ということになった。

 そして、シャルロット様が聖教会の掃討作戦に参加するのも、それまでは一旦保留ということになった。


「ですが、ご留意ください」団長は去り際、やや渋い顔で言った。

「今日この場で、私とそう合意したとしても、教皇猊下まで話がおよべば、この取り決めもまた白紙になるやもしれません」


「わかってるわよ、そんなこと」


 シャルロット様はどうでもよさそうにひらひらと手をふった。だいぶ素の部分が出てきている。もはや、団長のことを「聖教会騎士団団長」どころか、「客人」とさえ思っていないようだ。


「その時はまた使いでも何でも出しなさい。追い返すだけよ。何度でもね」


「……承りました」団長は焼き栗を丸ごと呑み込んだような顔でお辞儀をした。

「明日、あらためて伺います。本日は失礼しました。これにて」


「ええ、ごきげんよう。お元気で」


 シャルロット様が適当に手をふると、聖教会騎士団団長と副団長は屋敷を後にした。

 彼らを見送ってきたベルさんが、戻るなり言った。


「あのようなぞんざいな扱いをしてよろしかったのですか?」


 どの口が言うんだろうか、と思った。


「いーのよ、別に」


 シャルロット様は、ぐで~っと洗濯物のようにソファにもたれかかっている。およそ淑女らしからぬ姿勢である。


「あれくらい、全然大したことないわ。あいつに内心で嫌われたかもしれないけど、影響ないでしょ。むしろそれで協力をあきらめてくれるなら万々歳よ。ありえないけど」


「シャルロット様がいいなら、いいのですが……」


「そんなことより、重要なことがあるでしょ」


 シャルロット様はそういって、起き上がりテーブルに肘をついて悩ましげに頭を抱えた。


「ビスキュイに会いに行くとき、何を着ていけばいいかしら……?」



 ***



 ベルさんがシャルロット様につきっきりで服選びのサポートをすることになったので、夕飯の買い出しは僕一人で行くことになった。

 僕はポケットから、メモをとりだした。


「えーと……、テーラー川ね……」


 買い出しではあるが、転移魔術を使えば時間は稼げるので、一度イニチェたちに会ってみることにした。

 色々なことが起こりすぎて訳が分からないが、イニチェたちと会って話がしたかった。暗殺を予告したところで素直に聞いてくれるとは思わないけど、相談には乗ってくれるんじゃないかと思ったのだ。


 メモしていた住所にたどり着くと、そこは以前にも来たことのある宿屋だった。僕がビスキュイ殿下のところで執事をしていたとき、フロイに木製のシンボルを渡したときに、来たところだ。

 レンガ造りの古びたたたずまいで、ワビサビがあってなかなかいい。ワビサビがなんなのか、よくわかってないけど。


 中に入ると、中年の主人が新聞紙越しに僕をじろりとにらんだ。「友人を訪ねてきました」というと、彼はふたたび新聞紙に目を落とした。

 階段をのぼって、目的のドアをノックした。


「だれ?」ユンの声がした。


「クリムだよ」


「おお!」


 驚いた声とともにドアがいきおいよく開いて、僕は危うく鼻をぶつける所だった。


「久しぶり、クリムさん!」


「久しぶり……っていうほど、日数経ってないけどね」


 スカーレットから帰ってから、まだひと月も経っていない。


「あー、それもそっか。まあ、とりあえず、入ってよ」


「ありがとう」


「おもてなしはできないけどね!」


 ユンはそういって、シシシと笑った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。