深紅の世界、8
イニチェたちを眠らせて、僕はスクエラのところに戻った。
「……体は大丈夫?」僕はスクエラの前にあったでこぼこ(たぶん柱の名残だ)に腰かけた。「痛いところがあるなら、治せるかもしれない」
「体がだるいの」
「そうか……。ごめん。聖剣でも、血をつくるのはまだ難しくて……」
「いいわ」
「ごめん」
「手をにぎって?」
「うん」
スクエラの手は白く、冷たかった。
「寒い? 火でも起こそうか?」
「ううん。いい。ちょっと寒いけど……」
「火を起こすね」
「手は離さないで」
「わかったよ」
僕は重力魔術で荷物を引き寄せて、中から薪を取り出して準備をした。言われた通り、手は繋いだまま準備した。スクエラはしばらくそれを黙って見ていた。
「ねえ」火をつけ終わったころ、スクエラが言った。「私の記憶もあとで消すの?」
「そうだね……」
「残してほしいって言ったら、困る?」
「ちょっとね」
「それはどっちの意味? 残してくれるの? くれないの?」
「……」僕は微笑んだ。「どっちがいいかなあ……」
「残してよ」
「わがままだね」
「今回、それはクリムじゃない?」
僕は笑った。
「いつもは君がわがままだって、わかってるんだ?」
「今回はクリムがわがままだって、わかってるのね?」
「……そりゃね」僕は振り返って、眠りこけているみんなをみた。「これだけ多大なる迷惑をかけたんだから、わがまま以外の何物でもないよ」
「わがままじゃないわ」スクエラは僕の手をにぎる力を少し強くした。「わがままじゃない」
「わがままだよ。たった今、君がそう言ったじゃないか」
「シャルロット様のためにやったことでしょ?」
「シャルロット様が命令したわけじゃない。僕自身の意思でやったことだ」
「でも、わがままじゃないわ」
「君は頑固だねえ」僕は火の加減をすこし弱くした。「相変わらずだ。本当に変わらない」
「子供っぽいって……。いいたい、わけ?」
スクエラは体勢を変えた。すこし苦しそうだ。
「……おしゃべりしすぎたかな?」
「え? まだ大丈夫よ」
「ううん。無理してることくらい、わかるよ」
「……」
「おやすみ、スクエラ」
「……おやすみ、クリム」




