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僕はあなたをハッピーエンドへ連れていく  作者: 甲斐柄ほたて
アンエクスプロアド・スカーレットの報酬
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夜の世界、7

 交代で一度ずつ仮眠をとって、出発した。それで大体のメンバーは肉体的・精神的にある程度回復したが、それでもユンとフロイはきつそうだった。特にフロイがしんどそうだ。僕たち三人だけで長時間歩き続けたときのことが尾を引いているのだろう。

 しかし、誰より負荷がかかっていると僕が思うのは、レオンハルトだ。皆気づいているのかもしれないけれど、レオンハルトは一度も寝ていない。レオンハルトが仮眠を取る番でも、目を閉じていただけで眠るつもりはなかったと思う。魔物がでたときに一番最初に反応していたし。もっと休むべきだ。

 まあ、レオンハルトより先に反応できなかった僕に言えたことではないのだろうが……。


「最深部を目指す、でいいんだな?」レオンハルトが前方を指さしながら言った。「そこに魔王がいる。そうだな?」


「うん」僕はうなずいた。「そうだよ」


「『本』でもそうだったのか?」


「うん」


「嘘じゃないな?」


「言っておくけど、僕は忘れたことはあっても、嘘をついたことはないよ」


「どうだかな……」


 レオンハルトは前を見ながら、やや上の空でいった。僕の最後の返事はろくに聞いてなかったに違いない。


「キャリオ」レオンハルトはいった。


「はい」キャリオ様がとてとてと早足でやってきた。「なんでしょう?」


「むこうはどうだ? なにか見えるか?」


「そうですね……」キャリオ様とエルは同じ方向を見つめている。やがて、二人同時にレオンハルトを見上げた。「あと二時間くらいはなにもないだろうって、エルが」


「わかった。ありがとう」レオンハルトは前方を見たまま、礼を言って片手をあげた。


「はい」


 キャリオ様はちょっと背伸びをして、レオンハルトの手にハイタッチをした。レオンハルトは驚いた風もなく、手を下ろし、キャリオ様はスクエラの隣に戻っていった。


「……仲いいんですね?」キャリオ様に聞こえないように僕はささやいた。


「そうか? まあ、ずっと一緒にいるからな」


「……」


「なんだ?」レオンハルトはけげんな顔で水を飲もうとした。


「キャリオ様のこと、好きなんですか?」


「んっ!?」


 僕の言葉で、レオンハルトは勢いよく水をふきだした。


「げほっ、げほっ……!」


「いい反応ですね。なるほど。あなた達の好感度は順調に伸びているようで安心しました」


「なんの、話だっ……」


「好感度システムの話です」


「こう、かん……?」


「こっちの話です」


 いまの彼らの好感度を数値化できるわけもないが、おそらくこのまま終盤にもつれこんでもノーマルエンドに到達できる程度には好感度は高まっていそうだ。

 ノーマルエンドってどんなんだっけ……。たしか、ブラズ殿下と、殿下が召喚した魔王を倒して、それで……。王族は、王様ふくめてほとんど死んでしまったから、ビスキュイ殿下が即位するんだ。で、キャリオ様は今後百年の王国の安寧を宣言して、巫女の任を解かれる。

 レオンハルトとキャリオ様は、ビスキュイ新皇帝陛下の前で、結婚式を挙げる……。あれ、婚約だったっけ? まあいいか。


「うらやましいですねえ」


 僕がレオンハルトを小突くと、その三倍くらいの力で突き返されてしまった。


「うっ!?」


「さっきから、なに言ってるんだ、お前……。お前こそ、スクエラはどうなんだよ」


 レオンハルトはちらりと後ろに目をやった。たぶんキャリオ様と談笑しているスクエラを見ているのだろう。


「仲間として、半端なことするようだったら、ぶん殴るぞ」


「お義父さんですか?」


「意味わかんねえこと言うな。どうなんだよ、マジで」


 レオンハルトは僕をにらんだ。どうも本気らしかった。まったく、レオンハルトといい、シャルロット様といい、冗談が通じない。

 僕は肩をすくめた。


「……ここで死ななかったら、考えますよ」


「先延ばしだな!」レオンハルトは大声でいった。「大事なことは、今すぐ決めろ! ちょっと時間おいて考えるなんて、臆病者のすることだ!」


「な、なんですかそれ……。いいでしょ、臆病なんだから……」


「答えはもう出てるはずだ」レオンハルトは詰め寄ってきた。「だから、死ななかったら、なんてわけのわからん条件をいったんだろ。決めたなら、言えよ。死んだらそれこそわからないままじゃないか」


「期待させたくない」


「期待に応えろ」


「できないこともある」


「それでもやるのが男じゃないか」


「それは君の信条であって、僕のじゃない」


「スクエラが幸せなら、それでいいんじゃないのか、お前は」


「……」


 僕はレオンハルトをにらんだけれど、言葉が出てこなくて、視線を下げた。


「それは、そうかもしれないけど……」


「煮え切らないな」


「煮え切ったら、空焚きじゃないか。危ないよ」


「だから、わけのわからんことをいうな」


「……」


 僕が黙っていると、レオンハルトはあきらめたようにため息をついた。


「まあいい。わかった。このままではいけない、とは思ってるようだしな」


「思ってないよ」


「うるさい。できるだけ早く結論を出せよ」


「できればね」


「ああもう! ああ言えばこう言うな、お前は!」

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