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僕はあなたをハッピーエンドへ連れていく  作者: 甲斐柄ほたて
アンエクスプロアド・スカーレットの報酬
222/277

紅い世界、8

「ダメだ。わからん」


 レオンハルトが投げやりに言った。十分近く、ダンジョン入り口をじっと見つめていたが、わからなかったらしい。


「仕方ない。全員で一斉に入ろう。オーロラのときと同じで、離れ離れになることはないだろ。……いや、ちょっと待て」


 がっくりと肩を落として妥協案を話し始めていたレオンハルトだが、おもむろに顔をあげて僕をみた。


「クリム、お前、スカーレットのことを知ってるって言ってたじゃないか。この入口に入ったらどうなる? なぜ言わなかった?」


「あー……、えっと……、忘れてたっていったら、怒る?」


「怒らない」言葉とは裏腹に、レオンハルトは右の拳を左の手のひらに勢いよく叩きつけた。衝撃で近くの木に積もった雪が地面に落ちた。「怒らないから、言ってみろ」


「え、えーっと、この入口はね……どういう仕掛けだったかな……?」


「……思い出せそうか?」レオンハルトは左右交互に拳を叩きつけながら僕の目の前に立った。


「あ、あとちょっと思い出せそうだから! 本当に、あと少しで――!」


「心配するな。絞り出すのを手伝ってやろう」レオンハルトはそういって僕の頭のこめかみのあたりに、そっと拳をそえ、力を込めてぐりぐりと回した。僕は頭が割れるかと思った。


「いだだだだだだ!? ギブギブギブ!」僕は何度もレオンハルトの腕をタップした。


「思い出したか?」レオンハルトは絞り出す手を止めずに言った。


「思い出した! 思い出したから、やめて!」


「仕方ないな……」


 そういった後もレオンハルトは二秒ほどぐりぐりした後、ゆっくりと拳をどけた。


「はあ、はあ……。いま楽しんでなかった?」僕は頭をおさえながらいった。


「なんのことだ?」レオンハルトは肩をすくめた。


「この入口は……」僕は入口を指さした。「トラップだ。ここからは入っちゃいけない。絶対に」


「入るとどうなるんだ?」


「どうなったっけな……」


「まだ足りないのか……?」


 僕はレオンハルトがもう一度両手をあげたのを見て、慌ててスカーレット攻略の記憶をひっかきまわした。なにせこのトラップの入り口は、ゲームでは一週目の一回目しか入っていない。そのときにひどい目にあったから二度と入らなかった。だからほとんど覚えちゃいない。一度神様に消されてた記憶でもあるし……。


「おーい」レオンハルトは僕の目の前で手をふった。


「ちょっと待ってよ」僕はむっとしていった。「すごく前の記憶だから、そう簡単には――」


「わっ!?」右の方で女の子の声がした。


「フロイ!?」やはり右の方で女の子の声――ユンの声だろう――がした。


 僕がそちらに目をむけるより早く――少し補足すると、僕はこのときまだ魔力の濃度に順応できておらず、空間把握(スペーシャル)はうまく機能していなかった。だから主に光学視界(オプティカル)に頼っていたのだ――、すぐ近くにいたスクエラが走る気配がした。

 だから、僕はむしろそちらに意識がいってしまった。


 そして、気づいた時には、フロイをくわえた狼型の魔物が『トラップの入り口』の中にフロイごと入っていくのが見えた。


「えっ……」僕は一瞬呆然として固まった。世界が凍りついたかと思った。


 だが、それで終わりではなかった。

 凍りついていたのは僕だけで、その間にスクエラは三歩分の距離を疾走していた。フロイを助けるつもりだったのだろう。

 彼女はそのまま入口から中に入ってしまった。


 ためらいなく。

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