白い世界、6
三日後、僕たちはスノータウンの北に位置する山脈の中腹にいた。山脈は思っていたよりずっと寒かった。というか、四六時中、吹雪いている。吹雪いていない天候の安定したタイミングで進むのだが……、「山の天候は変わりやすい」ということを身に染みて理解させられた。
「ねえ、クリム」スクエラが僕をみた。
「なに?」
「もうちょっとくっついていい?」
「いいけど……これ以上、何をどうくっつくわけ?」
「細かいこと、言いっこなしよ」
そういうと、スクエラは遠慮も躊躇もなく、よりくっついてきた。
僕たちは吹雪をしのぐために、即席でシェルター(つまり、かまくら)を作った。その中で、少しでも体温を奪われないようにお互いにくっついているのだ。しかし、そのくっつきは円形ではない。線だ。リズリー、レオンハルト、僕、スクエラ、キャリオ様の順でくっついていた。「殿方と肌をくっつけるのはちょっと……」といってまだ恥じらいを捨てられないキャリオ様と、「私、クリムとくっつきたい!」と恥じらいもへったくれもないスクエラの希望をフルに採用してこのようになった。
そういうわけで、スクエラとは肩も膝もくっついていたが、さらに腕を組み、頬までくっつけてきた。
「おい……」レオンハルトがうなるようにいった。機嫌の悪そうな声だが、怒っているわけではない。寒いのだ。「密閉空間でいちゃつくな。気まずいだろ……」
「あらまあ」スクエラは口元に手を添えた。「妬いてるの?」
「黙れ、ちんちくりん」
「ちょっとぉ! 誰がちんちくりんよ、誰が!?」
「どうどう。スクエラ、どうどう」
「クリム、私のこと牛か馬だと思ってる?」
「あー……。どっちかっていうと、子猫かな。スクエラ、小さいし」
「子猫かあ。いいわ。許す。かわいいから」
「ありがとう」
「……俺のちんちくりん発言と何が違うんだ?」
レオンハルトがつぶやくと、リズリーがどうでもよさそうに返答した。
「好感度と気遣いだろ……」
***
吹雪が止んだ。僕たちはかまくらから這い出て、一面真っ白になった世界を進んだ。雪は柔らかく、深い。歩くたびに太ももまで沈みこむ。自然、呼吸が荒くなる。けれども、空気は冷たく澄み切っていて、肺に鋭く突き刺さる。僕たちは死後の審判を待つ罪人のように顔を伏せながら一歩ずつ進んでいった。
今回の歩行は、長かった。吹雪がくることなく、数時間休まず進むことができた。
雪の丘を越え、氷の谷を跳び越え、巨大な魔物の死体を踏み越えて、僕たちは進んだ。
そしてついに、視界の果てに、それを見た。
白い山脈を覆って揺蕩う、紅いオーロラを。




