白い世界、2
「気に入らない……」レオンハルトは繰り返した。「わかってるのか? 無謀すぎるぞ、クリム。【未踏の紅】に挑むだと? この五人で? 一人を助けるために? 正気じゃないぞ」
「レオ。賛成なのか、反対なのか、どっちなのですか?」
キャリオ様がいうと、レオンハルトは肩をすくめた。
「反対だ。五人で行って、五人死ぬぞ。決まってる。あそこは十二年前に出現してから、ずっと未踏破のままだ。少なくとも百人以上があそこに入ったが、誰一人帰った者はない。先代の勇者でさえ、例外じゃない」
「知っています」
「勝算があるといったな。そんなもの、どこにあるんだ?」
「【暁の聖剣】」
そういうと、レオンハルトは眉をピクリと動かした。キャリオ様達はレオンハルトの表情の変化に気づいたようだ。僕と彼の顔を見比べている。
僕はニヤっと笑った。
「聖剣が今どこにあるか、知っていますか?」
「……王宮大聖堂の地下だと聞いている」とレオンハルト。
「つまり、先代の勇者は、自分の聖剣をおいて、最も困難なダンジョンに挑んだと?」
「何が言いたい?」
「奇妙な話ですね」
「あれは最強の魔剣だ。失うわけにはいかなかったんだろう」
「本当にそう信じているんですか?」
「……」
レオンハルトはじっと目を伏せて黙り、ギリシア彫刻のような表情で動かなくなった。やがて再び口を開いた彼は、一言「あるのか?」と尋ねた。
「あるはずです」僕はうなずいた。「今日、転移魔法陣を使うために王宮大聖堂にいきました。僕の目で感知できる範囲に、聖剣らしきものはありませんでしたよ」
「だからって、スカーレットにあるってのは、早計だろ……」レオンハルトは天を仰いだ。「飛躍しすぎている」
「聖剣があれば、勝算はありますか?」
「……ああ」レオンハルトは僕をみた。「聖剣を使ったのは一度だけだが……、あの魔剣は特別なものだ。たしかに勝算はあると思う」
「ですが、先代は帰っていないのでは?」キャリオ様がいった。
「あの人より、俺の方が才能はあったさ」レオンハルトはこともなげに言った。「体術も魔力量も、俺の方が上だった」
「でも、僕には負けましたよね」
「……お前、俺を説得したいんじゃなかったのか?」
「いえ、ツッコんでほしいのかな、と思いまして」
「忘れてただけだ!」
こうして僕はレオンハルトの説得に成功した。




