色褪せた世界、7
「え、旅行、ですか……?」
ベルさんは僕の顔とシャルロット様を交互にみた。僕はうなずいた。
「はい。ベルさんの身体によく効く薬草があると聞いたので、ちょっと遠出して取ってこようかと」
「本当ですか?」ベルさんは僕ではなく、シャルロット様をみた。「まさか本当はクビにするつもりでは……」
「ちがうちがう」
シャルロット様は気の抜けた様子で手を振った。ベルさんは、それをみて本当だと判断したようだ。肩の力を抜いてベッドにもたれた。
「そうですか……。どこへ行くのですか?」
「北の方です。けっこう寒そうなところまで行こうと思っています」
「そうですか……。では、お土産はチーズがいいです」
「チーズ?」
「チーズが名産になっている街が多いんですよ、北は」
僕は北へ旅に出る前日、ベルさんとそんな話をした。僕としては、けっこう上手く演技をしたつもりだった。ベルさんが自分の病状についてなにか勘繰るようなことはないだろうと。けれど、シャルロット様の見解は違った。
「バレちゃったかもねえ」
病院からの帰り道、シャルロット様はそういった。
「えっ……。僕、なにかヘマしましたっけ」
「うーん、どこがどうってわけじゃないけど、なんか雰囲気がね。ベルのために旅に出る割に、なんでもない風だったじゃない? そういうところが、ちょっと不自然だったかも」
「僕はいつもこうですよ」
「レオンハルトたちとも合流するって教えちゃったのは、まずかったわよ」
「それは……」
返事をしようとして、言葉につまった。確かにそうかもしれない。ただ薬草を取ってくるだけなら、レオンハルトたちに協力してもらわずに一人でとってくる。普段の僕ならそうしたはずだ。レオンハルトたちに協力してもらうというところに、大ごとな感じが出ていたのか。
「ま。私がフォローしておくから。あなたは気兼ねなく、攻略に専念してちょうだい」
「それなら、心を乱すようなことは言わないでほしかったですね」
「へえー……、言うようになったわねえ。執事の分際で?」
「シャルロット様も、遠慮がなくなりましたね」
「ふん」
こうして僕は北方へと旅立つことになった。




