色褪せた世界、4
それから、シャルロット様の機嫌は激烈に悪くなった。
目を合わせてもらえず、問いかけに返事がくることはなく、僕の作った食事は拒絶された。
ベルさんを誰より大切に思うシャルロット様のことだから、無理もないことだとは思うけれど、つらくないわけではない。ないが、おおむね僕のせいなので文句などない。そもそもシャルロット様のなさることに文句などあるはずもないのだ。
僕は一晩じっくりと『心当たり』について考えてみたが、やはり時期尚早だという結論にいたった。
僕の『心当たり』について、わかりやすくいうと『ゲーム終盤でおこるイベントを今おこしてしまおう』ということだった。今のレオンハルトたちの状況から考えて、まだせいぜいゲーム中盤がいいところだ。終盤に突入するにはまだ早い。ただでさえ、展開がイレギュラー寄りになりつつあるのだ。これ以上、ひずみを大きくしたくない。
……っていうか、そのイベントの難易度を考えるとまだ早い。早すぎる。準備が全然足りていない。無理だ。
僕はあきらめてため息をついてベッドにもぐりこんで眠りに落ちた。
***
「……んー……、うわっ!?」
目を覚ますと、椅子にすわったシャルロット様が、冷たい目で僕の顔をのぞきこんでいた。心臓が止まるかと思った。
「……おはよう、クリム」
「お、おはようございます、シャルロット様」
「答えは、でたかしら」
「答え……? あ、ああ、例の件ですか……」
「でたかしら?」
「ええと……、落ち着いて聞いていただけますか……?」
「私は落ち着いているわ」
僕とシャルロット様では『落ち着いている』の定義が違うな、と思った。
「……結論からいうと、今すぐは無理です」
「えっ?」
僕が結論を伝えた瞬間、シャルロット様は険しい顔をぱっと驚きにかえた。かすかに期待をふくんだ表情になる。
「今すぐってことは……」
「はい。近い将来……数年後だと思いますが、その頃にはもしかしたら……」
「本当!?」シャルロット様は大声でいい、おそらく無意識に僕の手をにぎった。「本当に!?」
「え、ええ」僕は手をひっこめた。発狂しそうだった。「その、詳しい方法とかはお教えできないのですが……」
「構わないわ」シャルロット様は打って変わってうきうきした様子で立ち上がった。「ベルとまた一緒に、普通に、過ごせるならなんでもいいし、何年でも待てるもの」
「……」
僕はシャルロット様がはしゃぐのをみてホッとした反面、一つ確信したことがあった。
この人はまだ、クライマックスで起こることについて何も知らない、ということだ。
ブラズ殿下の命令で、レオンハルトたちと戦うことになるなど、想像さえしていないに違いない。そうでなければ、こんな風に数年後の未来におもいをはせて無邪気に期待などできるはずもない。
「なによ、黙って私のことを見つめて……。まさか嘘だなんていわないわよね……?」
「ち、違いますよ!」僕はあわてて両手を振って身の潔白を示した。「誓って!」
「……なーんか怪しいけど、まあいいわ。お腹空いたから、ご飯作ってよ」
「わ、わかりました。すぐ用意します」




