パーティー⑥
パーティ会場へむけて走る馬車の中で、そんな疑問をビスキュイ殿下にぶつけてみた。殿下は無表情で煙管の煙を吐きながら笑った。
「なんだ、気づいていたのか。なにも言ってこないから、てっきり一日中ボーっと天井の染みでも数えているのかと思っていたぞ」
「いくらなんでももう少し有意義な時間の使い方をしてますよ」
「仕掛けは打ってある。どんなものかは、お楽しみだな」
殿下は喉の奥を鳴らして笑った。教えてくれるつもりはないらしい。
馬車が目的地、つまりパーティ会場に到着した。
会場は、王都内にあった。広大な森林の近くにあるミント伯の所有する邸宅が会場だった。幽霊屋敷が五つ分くらいすっぽり入るような建物が三つは並んでいる。会場はそのうちの一つだった。中に入るとすでにたくさんの貴族たちがいた。
「あまりそわそわしないでください、クリム殿。ただでさえ目立つんですから」
「え、そわそわしてるってわかりました?」
目隠ししているから視線が動いてるかどうかなんてわからないはずだけど。
「雰囲気でわかります」
「それって当てずっぽうってことですか?」
「いいからあなたは大人しくしていなさい」
「いてっ」
貴族の方々の目には見えない速さで眉間を小突かれてしまった。痛い。
「あまり遊ぶなよ、お前たち」
「申し訳ございません、殿下。すべてクリム殿のせいです」
「知っている」
「僕の扱い、ひどくありません?」
「いまさらだろ」
「いまさらですね」
「ひどい!」
「ほら見ろ、メインキャストのお出ましだ」
ビスキュイ殿下が言った。たしかに会場が少しざわついている。トアン卿が来たのかな、と思ったら違った。
玄関から入ってきていたのは、シャルロット様だった。
「シャルロット様……?」
「ふふふ、黙っていた甲斐があったな」
殿下は笑っている。
「ご存じだったのですか?」
「そう言っている」
「もしや、殿下が招待したのですか?」
「少し違うな。招待したのは、あくまでミント伯だ」
それってほぼイコールじゃないか、と思った。
「すぐに勘づくだろうから、いま種明かしをしてやろう。今夜、私は何もしない」
「え、ど、どういうことですか?」
「私は人前が苦手でね。トアン卿を追い詰める役は、姉上に代わってもらう」
「シャルロット様と連絡していたのですか?」
「ふむ。連絡はしているが……それは誤解を生む返答だろうな。私と姉上は時々手紙のやり取りをしているが、今回の件について相談したことは、ない」
「……」
「今夜、姉上がトアン卿を追いつめるといったが、それはあくまでも私の予想に過ぎない。姉上が十分な証拠をつかめるよう、気づかれないうちにサポートはしたがな」
「シャルロット様はあなたの手のひらの上、ってことですか?」
「……」
ビスキュイ殿下は答えず、にやりと笑った。




