パーティー④
お礼を言って、部屋を出た。とりあえずおとがめは無しらしい。ほっとしてため息を――
「殿下はなんと?」
「んぐっ!?」
――思わず、ため息を飲み込んだ。みれば、すぐ隣にショコラが立っていた。無表情で。
「おとがめは?」
「あ、ありません」
「そうですか。残念です」
「ずっと待っていたのですか?」
「必要なら、暴れるあなたを取り押さえて王宮まで連行しなければなりませんからね」
「暴れませんよ」
「どうだか」
ショコラは肩をすくめた。珍しく、すこしだけ表情があった。
「では、私はこれで」
「あ、待ってください」
「はい?」
「あの、ミント伯に連絡したいのですが、どうすれば……」
「ミント伯?」
「はい」
「……」
ショコラはしばらくの間、じろじろと僕をながめていたが、やがて鼻を鳴らした。
「連絡したい内容を紙に書いて私のところまで持ってきなさい。検閲したのち、送っておきます」
「検閲、するんですか?」
「します」
即答だった。まあいいけど……。
僕は部屋に戻って、ひとまずベッドにもぐりこんだ。朝食を取るような時間だったが、疲れていたのでいつの間にか眠ってしまっていた。
起きたとき、テーブルの上にパンと冷めたコーヒーが乗っていた。
遅い朝食を済ませて、ミント伯への手紙に取りかかった。手紙というものを、僕はほとんど書いたことがない。字を書くのも慣れないし、時節の挨拶のような決まり文句だってうろ覚えだ。しかし、よく考えれば内容的には秘密文書なんだから、形式にはこだわる必要がない。……そう割り切って、ざっくりと文章を書いた。あとでショコラやミント伯に文句を言われるかもしれないが、気にしないことにした。手紙なんて文化がこの世にあるのが悪い。
手紙を書き終えた頃、ショコラが昼食を運んできてくれた。メニューは朝食と同じだった。
「手紙は書きましたか?」
「ええ、まあ。あまり上手くは――」
言い終える前にショコラは手紙をかすめ取った。
「――上手くは、書けなかったのですが……」
「たしかに。上手くないですね。てんでめちゃくちゃ。とても貴族の子息の手紙とは思えない仕上がりです」
「しょ、しょうがないじゃないですか。久しぶりだったんですから」
「ミント伯は延命されるのですか?」
「ええ。三年ほど」
「へー……」
「へーって」
「これでも感心しているのですよ、クリム殿」
「え?」
「殿下が一度決めたことを覆すことなど、滅多にあることではありません。よほど気に入られたのですね」
「光栄ですね」
「あるいはミント伯ともども八つ裂きにするために泳がせているだけ、という可能性もありますが」
「上げてから落とす必要、あります?」
「ともかく、手紙は出しておきます。内容はそのままでいいでしょう。この一世一代の失敗作を出してみるのもまた一興ですから」
「なんですって?」




