パーティー②
僕はかんかんに怒りだしたシャルロット様に背を向けて、ビスキュイ殿下の屋敷まで帰った。
屋敷の門の前にショコラが立っていた。衛兵はいない。彼女は僕をみるとため息をついた。
「遅い」
「デジャヴですね」
「……」
ショコラは僕の冗談を無視してさっさと屋敷の中に入っていった。僕は続いた。
「腕輪はどうしました?」
玄関扉を閉じて、ショコラが言った。
「なぜ目隠しをしているのですか」
「あっ……」
そうだった。腕輪はダンジョンの幽霊にわたしてしまったのだった。外さないようにと言われた腕輪だったのに。
「えーと……」
「……」
「……失くしました」
「……」
たっぷり十秒、ショコラは僕をにらんでいた。
「……失くしました、で済むとでも?」
「そ、それはその……」
「あの腕輪は極めて貴重なものなのですよ」
「わ、わかっています」
「なら、心当たりのある場所を片っ端から探してきなさい」
「あー……」
「なんですか?」
「実は、失くした、というのは嘘です。本当は、人に渡しました」
「奪い返してきなさい」
ずいぶんと物騒なことを言う。
まずいな。かなり怒っている。想定内ではあったけれど……。
「あの、その、無理です。もう会うことができないので」
「死んだということですか?」
「ある意味……」
最初っから死んでたし。
「なら、なおのことその人には必要ないでしょうが」
「その人の遺体がある場所に、そもそも行けないんですよ」
「……一体どこに置いてきたのですか?」
「まともな手段ではいけないダンジョンの中です」
「……」
「ええと……」
ショコラは僕をにらんで、ぼそっとつぶやいた。
「クソクリム……」
「えっ」
「もういいです。わかりました。わかりましたとも。ですが、あの腕輪はもともと殿下の持ち物です。腕輪を失ったことは、あなたが、一人で、包み隠さず報告なさい。私は知りません」
「わかりました」
「ふん」
ショコラはつい、とそっぽをむいた。
「あの、殿下は今どちらに?」
「二階の書斎にいらっしゃいます」
「わかりました」
僕はショコラに礼をいって、書斎にむかった。ショコラはその場に立ったまま、僕を後ろからにらんでいたようだった。怖かった。




