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僕はあなたをハッピーエンドへ連れていく  作者: 甲斐柄ほたて
薔薇の肖像は冷たく笑う
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夢②

「そんなことを言うなんて、どういう風の吹き回しですか?」

 朝食の後、「買い物に行きたい」と言ったらベルさんに変な顔をされた。

「普段は巣穴に閉じこもったネズミのように屋敷を出たがらないくせに」

「いいじゃないですか、たまには。……え、なんですか、そのたとえ。どういう意味です?」

「まあいいです。では、今から言うものを買ってきてください」


 僕はベルさんのいったものをメモして、ベルさんにおしつけられた荷物入れのバスケットを持って、屋敷の外に出た。

 行き先はもちろん、市場ではない。

 まっすぐ、ビスキュイ殿下の屋敷へと向かった。途中、通行人に今日の日付をたずねた。僕の記憶と大差ない日付だった。ミント伯の工房で働いていた日数があいまいなので誤差があったが、ほとんどズレはなかった。

 だからこそ、余計に不気味だった。

 どこまで僕の記憶が正しいのか、よくわからない。僕の記憶が正しいとすれば、シャルロット様とベルさんがなにかを忘れていることになる。話をして確かめることも、不可能ではないが……。

 そんなことは、怖くて、とてもできない。

 それより先にビスキュイ殿下と話をしたかった。きっと何かを知っていると思ったからだ。


 ビスキュイ殿下の屋敷についた。いつもは門の外に衛兵がいるから、入れないかと思ったが、門の前にショコラが立っていた。

 彼女は僕をみるとため息をついた。


「遅い」

「どうして、僕が来るとわかったんですか?」

「殿下が来るとおっしゃいました。さあ、ついて来なさい」


 門をくぐって屋敷に入った。衛兵は僕と視線を合わせてくれなかった。

 玄関扉をくぐると、例の肖像画に出迎えられた。


「遅かったな」

 階段の上で絵をながめていたビスキュイ殿下はふりかえるなり、にこりともせずに言った。

「事態を飲み込むまでに時間がかかったのか? 夢だとでも思ったのか? それとも単に寝坊したのか?」

「最後ですかね」

「生意気なやつだ」

 殿下は笑った。

「来い。面白いものを見せてやろう」


 そういって殿下は杖を使って階段を上り始めた。ショコラは僕を置いてさっさと殿下の隣にたった。殿下の手助けをしたりはしない。いつもそうだった。殿下がそれを望まないのだろう。僕もすぐに二人に追いついた。


「面白いものって、なんですか?」

「教えたら、興ざめだろうが。……だが、ヒントくらいは教えてやろう。魔剣絡みだ」

「人の精神に作用する魔剣があるのですか?」

 殿下は足を止めて僕をにらんだ。

「貴様……興ざめだぞ」

「え?」

「ここだ。開けろ」

「はい」


 ショコラが扉を開いた。部屋の真ん中に男が一人座っていた。椅子に手足を縛られている。こちらに背を向けているので顔は見えないが、その丸っこいシルエットで、僕にはそいつが誰かわかった。

 ミント伯だ。

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