迷路③
三十分ほど迷宮内を探索すると、私兵たちの詰め所があった。扉の外から空間把握で中をみたら私兵がたくさんいる部屋があったのだ。
僕は転移魔術で中に侵入して、彼らを制圧した。
最初に明かりを消したから、顔は見られなかったはずだ。
『入っていいぞ』
声をかけると、シャルロット様が扉を開けて中に入ってきた。六人の私兵が伸びているのをみて少し驚いたように目を丸くする。
「すごいわね」
『大したことない。素人じゃなかったが、魔術師はこいつだけだったしな』
「それでも速すぎるわよ。どうやったの?」
『どうもこうも……。ただ殴ったり魔術をかけただけだ』
「さっきから、何してるの?」
『セッティングだ。できた』
私兵たちの手足は縛った。さらに、彼らの内一人だけを椅子に座らせる。殴ったのではなく、魔術で気絶させた奴だ。こいつが一番意識を取り戻す可能性が高い。
『起きろ』
何度か頬を叩くと、男は目を覚ました。男が何か言う前にシャルロット様が言った。
「ねえ、暗いんだけど。明かりつけていい?」
『ダメだ。……おはよう、気分はどうだ?』
「最悪だよ、クソ野郎」
男は唾を吐いた。汚いな。
「誰だ、てめえら?」
『敵だよ』
僕は男の頭に手を触れた。支援妖精を補助モードに切り替える。
『命令を受諾しました。【洗脳】を開始します』
「ハッキング……?」
シャルロット様がつぶやいていたが、返事をせず魔術に集中した。この魔術はアルテミスの補助があっても難しい。とても、返事をするような余力はない。
洗脳の魔術の原理は、「相手の精神プログラムに手を突っ込んで、コードを書き換える」ような乱暴なものだ。もっとも、書き換えることのできる領域はかなり狭い。経験次第、という感覚だが、僕の実力だとちょっとした秘密を吐かせる、くらいが関の山だ。
しかも、相手が魔術師なら書き換えを妨害されてしまう。実戦ではまず使い道のない魔術だった。
『もう明かりをつけていい』
「それが邪教徒の魔術なの?」
シャルロット様は魔術で指先に火をともし、壁にかかったランプに明かりをつけながら言った。
「意外と静かなのね。もっと暴れるかと思ったわ」
『悪魔憑きと勘違いしてないか?』
「アクマって、何?」
しばらくして、洗脳が完了した。
男は、胡乱な目つきで僕とシャルロット様をみつめている。
『昨日、メイドを捕まえただろう』
男はうなずいた。
『そのメイドがどこに捕まっているか知っているか?』
男はうなずいた。
『案内しろ』
男はうなずいて、部屋の外へ出た。僕たちも後から続いた。




