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僕はあなたをハッピーエンドへ連れていく  作者: 甲斐柄ほたて
薔薇の肖像は冷たく笑う
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迷路②

 僕は転移魔術テレポートで牢屋から外に出たが、シャルロット様は出ようとしなかった。


『来ないのか?』

「出たのがバレたらベルが危険なのよ」

『今晩中にメイドを見つければいい。俺一人だけメイドのところに行っても、むこうも同じこと言うに決まってる。いいから来い』

「……」


 シャルロット様は納得していない様子だったが、牢屋の外へ出た。きょろきょろと左右の通路を見比べた。


「それで、どっちへ行けばいいの?」

『さあ』

「え、知らないの? てっきり地図とか見てきたんだと思ったわ」

 シャルロット様の声には失望がにじんでいた。僕は肩をすくめた。

『そんな時間は無かった』

「ふーん……。あなたって、思ったより私のこと気にしてるのね?」

『願望か?』

「で、どっちに行くのよ?」

『右へ行こう』

「理由は?」

『ない』

「あっそう」

『ただ、もし誰かいたら、捕まえたい』

「拷問でもするの?」

 シャルロット様は冗談っぽく笑いながら聞いた。僕はうなずいた。

『近いな』

 シャルロット様は笑うのをやめた。

「無闇に人を傷つけるのはやめてよ」

『この状況でもそんな綺麗ごとを言うのか?』

「……」

『安心しろよ。別に傷つけたりはしない。ただ、秘密をしゃべってもらうだけだ』

「それって、邪教徒の魔術を使うってこと? あなた、邪教徒なの?」

『だったら?』

「その魔術、私にも教えてよ」


 僕は驚いて、隣を歩くシャルロット様の顔を見た。口元に笑みが残っていたが、目は本気だった。


『邪教徒の魔術は……』

「学ぶだけで罰せられるのよね。知ってるわ、そんなこと」

『いい覚悟だな』

「どうも」

 シャルロット様は服のすそをつまんであげる仕草をした。

「私は、みんなを守れるようになりたいのよ」

『見上げた心がけだ』

「本当にそう思ってるの?」

『だが、魔術は教えない』

「だと思った。理由は?」

『二つある。邪教徒の魔術は門外不出だ』

「だから教えられないって?」

『違う。秘伝だからな。不正に魔術を学んだものに対して、呪い(マーキング)が施されるようになっていた。それが一つ目の理由だ』

「あなたは邪教徒ではないの?」

『違う。サルトゥと敵対してただろ』

「ああ、そっか。どんな呪いなの?」


 シャルロット様は質問した。

 僕が今言ったことは、嘘ではない。僕の目の呪いが、それだ。この呪いは邪教徒の精神系魔術の教典を読んだことによるものだと、僕は思っている。あの後も何度か邪教徒とは遭遇することはあったけど、目の呪いが発現したり悪化したタイミングとは一致しない。それはむしろ僕が精神系を使用するタイミングと同期していた。

 他人に精神的な作用を及ぼすことで呪いが進行する。

 そういう系統の呪いだった。シャルロット様には「魔術を学ぶと呪われる」と言ったが、それは正確ではない。というより、僕も正確な条件を把握していない。学ぶことがトリガーではなく、あの教典自体が呪われていた可能性もある。

 ともかく僕にはシャルロット様に精神系を教える気はさらさら無いし、呪いについての詳細も言うつもりはなかった。

 よって、質問は無視した。


『二つ目は、あんたはこんな魔術知らなくても十分強いだろ』

「強さだけではダメなのよ」

『あんたの強さなら十分だ』

「……」


 シャルロット様は頬をふくらませた。

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