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僕はあなたをハッピーエンドへ連れていく  作者: 甲斐柄ほたて
薔薇の肖像は冷たく笑う
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同じ穴の狢⑦

 僕はちょっと安心した。もしかしたら、移動してしまっているかもしれないと思ったからだ。それと……ケンカ別れしたけれど、僕自身がまだシャルロット様のことを嫌いになっていないということも、確認できたからだ。


 シャルロット様を揺り起こした。


『起きろ、お姫様』

 マスクのせいでしゃべれないので、支援妖精アルテミスに代理で発声させた。

『ここから出してやる』

「んぅ……。あと五分……」

『さっさと起きろ、ぐうたら姫!』


 僕は耳元で言った。途端、シャルロット様は目を開き、弾かれたように起き上がって、なにか叫ぼうとした。僕はすかさず、彼女の口をふさいだ。彼女は僕をみて、目を見開いた。僕の顔を認識したらしい。恐怖から驚愕へ、少しずつ表情が変わる。

 手を離した。


『久しぶりだな』

「あなたは……おしゃべり仮面(サイレントトーカー)……」

『誰がおしゃべり仮面だ。沈黙の密猟者(サイレントポーチャー)だ。何度言わせるつもりだ?』

「グリムと呼んでも?」

『勝手にしろ』

「どうしてここにいるのですか、グリム?」

『想像に任せる』

「ひょっとして、クリムの差し金?」

『さあな』

「クリムは……元気?」


 ちょっと泣きそうになった。


『……ここに住むつもりか? 脱出するのを手伝ってやりに来たんだが?』

「あら、ごめんなさい」


 シャルロット様は素直にベッドから下りた。服装は、僕らの作業着と大差ない。ボロボロの布きれだった。いつものドレスではない。手袋もないし、素足だった。


『なぜ裸足なんだ? 靴くらい作れるだろう?』

「魔術を使っちゃダメなのよ」

『また魔封じのアーティファクトでもつけられたのか?』

 シャルロット様は首を横にふった。

「いいえ」

『なら、なぜ作らない? そもそもどうして脱出しなかったんだ? 魔術を封じられていないなら、造作も無いだろう?』

「……」

 シャルロット様はじっと、僕の目を見つめてきた。

『おい、なんの真似だ?』

「あなた、どうやって私がここにいるってわかったの?」

『なに?』

「私たちが捕まるところを見てたのかと思ったけど、そうじゃないわね? 見てたなら、そんな質問はしないもの」

『いい加減にしろ。腹の探り合いなんか、してる暇は……。待て。いま、私たちと言ったか?』

「言ったわ」

『なるほど、大体わかった。メイドが捕まったんだな?』

「そうよ」

『あんたとメイドは、ここに忍び込むかなにかしてるうちに見つかって、捕まった』

「そうよ」

『あんたは、メイドを人質にされたから、魔術も一切使わず大人しく捕まっていた、ってところか』

「そうよ」

『お人好しだな』

「ベルを探すのを、手伝ってくれるかしら?」

『……』


 僕はすぐには返事をしなかった。このままシャルロット様と一緒に、ベルさんを探してこの施設を歩き回るのは得策ではない。ここは廃棄された迷宮ダンジョンが元になっている。かなり広いし、人もいる。中心部に行けば魔物もいるはずだ。

 しかも、僕は誰かに顔を見られたらアウトだ。

 ここは一度、出直した方が……。


 服を引っ張られた。

 振り返ると、シャルロット様は泣きそうな顔で僕をみていた。


「お願い。ベルを一緒に、探してちょうだい」

『……わかった』

 是非もない。僕はうなずいた。

『その代わり、一つ条件がある。あんたの魔力を分けてくれ』

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