同じ穴の狢⑥
「ねえ、そこにいるのは誰?」
「……」
僕は一言も発することなく、立ち止まった足を動かして、その場を後にした。所定の場所まで行って、土を捨てて帰って来た。帰りもシャルロット様の牢の前を通ったが、今度は足を止めなかった。
ただし、頭の方はこれでもかというほどフル回転していた。
その後も、遺物を掘りながら、ずっと考え続けた。
シャルロット様に何があったのか?
助けるべきか?
その場合、どれくらいのリスクがあるだろうか?
助けるとして、どうすればいいのだろうか?
そんな疑問が泡のようにふつふつと沸いては消えていった。そして、その日の作業が終わることまでには、おおよそ自分の中で答えを出すことができた。
僕はいつも通り夕食を食べ、他の作業員たちとすこし会話して、いつもより少し早く就寝した。
そして、全員が寝静まったころに、こっそりと起き上がった。
とにかく、シャルロット様と話をしないことには何も始まらない。地下牢を抜け出してシャルロット様に会いに行くと決めた。
ショコラにはめられていた呪詛相殺の腕輪を外す。僕の目の呪いが復活する。すぐに、インベントリから沈黙の仮面を取り出して、口元に装着した。目の呪いが消え、声が出せなくなる。黒マントもとりだして、身にまとう。
これで沈黙の密猟者の完成だ。火都で変身した以来だろうか。けっこう、久々な気がする。
自分自身の布団に簡易的なデコイを置いた。懐中時計をとりだして、支援妖精を起動した。
さっそく転移魔術で、鉄格子を跳びこえた。迷宮の中だが、ここはかなり魔力が薄い。この程度の距離なら転移は可能だ。アルテミスの補助があればなおさら簡単だった。
暗い通路を、足音を殺して進んでいく。同僚の作業員たちは全員眠りこけていたから、特に気にしなかった。問題なのは、見張りがいる通路の突き当りだった。そこはT字路になっていて、常に松明の明かりがともっていた。
その道を通らなければ、迷宮の外にも、シャルロット様の牢へも行けない。
わずかな壁の凹凸に隠れながら近づいて空間把握で確認したら、見張りも眠りこけていた。なんとも不真面目な、ゆるんだ監視体制だが、今はありがたいことこの上ない。そーっと、T字路を通り抜けた。
ここの作業員たちには、僕の顔をみられている。ショコラにもらった腕輪のせいで目を隠す必要がなくなったからだ。だから、この姿の僕をみられるのは、ちょっと洒落にならない。
見られたらどうするか……。まだ、答えを決めていない。
見られる前に気絶させてしまおうとは決めているけれど、それだけだ。見つかってから考えればいいだろう、ということにしている。
意外とすんなりとシャルロット様の牢屋の前まで来ることができた。カーテンの奥でかすかに寝息が聞こえる。まだそこにいるようだ。
転移魔術で、鉄格子をすり抜けた。
シャルロット様が、ベッドの上に横になって眠っていた。




