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僕はあなたをハッピーエンドへ連れていく  作者: 甲斐柄ほたて
薔薇の肖像は冷たく笑う
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薔薇の肖像④

 僕は、ショコラに案内された一室で目を覚ました。とても広い部屋で、明るく、手入れが行き届いている。シャルロット様の屋敷で僕に与えられた部屋よりもちろん広かったし、実家の僕の部屋より広かった。なによりベッドが上等だった。ふかふかの度合いが違う。

 着替えを終えた頃、ドアがノックされ、返答する前に開かれた。


「来なさい」


 知らない女性……かと思ったが、その表情からすぐにショコラだとわかった。

 ただし、いつものタキシードではなく、ドレスを着ていた。


「この家ではノックの返事は待たないルールなんですか?」

「……」


 僕の冗談がつまらなかったのか、ショコラはむすっとした表情のまま、ドアを開けっぱなしで出ていった。僕は彼女を追いかけた。


「どこへ行くんですか?」

「トアン卿が出かけるそうです。追いかけます」

「それ、間に合うんですか?」

「支度しているのを確認した、と連絡がありました」


 ビスキュイ殿下たちが何人いるのかわからないが、常にトアン卿の動向を探っているようだ。すごい力の入れようだな。


「どうしてビスキュイ殿下はトアン卿を目の敵にしているのですか?」

「目の敵と言うほどではありません」

 意外にも、返事がかえってきた。ショコラは廊下を歩きながら答えた。

「正確なお考えはわかりませんが、ゲームではないかと思います」

「ゲーム?」

「チェスのようなものです。盤上を動く駒の動きをながめて、楽しんでいるのです」

「それってゲームなんですか?」

「わたしにはわかりかねます」

 そう言ってしばらくして、ショコラは続けた。

「殿下には、言わないでくださいね」

「わかりました」

「お願いします」

「大丈夫です。僕も執事ですから。そういうことを言いたくなる気持ちは、わかります」


 玄関を出て、用意されていた馬車に乗りこんだ。ビスキュイ殿下には会わなかった。てっきり馬車で待ち構えていたりするのかと思ったが。


「ビスキュイ殿下は来ないのですか?」

「こんな細々とした調査では出かけません」

「お屋敷に?」

「はい。おられます」

「どうして、トアン卿なのでしょう?」

「さっきも言いましたが」

「いえ、ゲームだとしても。なぜトアン卿を調べるのかと思いまして」


 馬車が走り出した。ショコラは僕から視線を外して、外の景色を眺めた。今日は曇りだった。


「さあ……気に入らないからでは?」

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