火都のある日常の話⑦
「本当に死ぬかと思いましたよ、シャルロット様」
「女の子のハダカをのぞこうとしたのよ? むしろまだ生きてることに感謝してほしいくらいだわ」
僕たちはみんなでロビーにいた。
レオンハルト様とスクエラとベル嬢は三人で、むこうの方でピンポンっぽい遊びをしている。レオンハルト様と女性陣二人の勝負のようだったが、ベル嬢は勝負とは関係なくレオンハルト様本人に球を撃つと決めているらしく、時折叫び声が聞こえてきた。少なくとも、球の質量はピンポンと違うようだ。
僕、シャルロット様、キャリオ様はすわって牛乳を飲んでいる。
シャルロット様たちは僕とレオンハルト様が気絶している間に、温泉に入っていたらしい。
だからみんな、風呂上がりだ。
「それには私も同意ですね」
キャリオ様がうらめしそうな声でいった。ちなみに小鳥は僕の額をずっとつついている。痛い。やめてほしい。キツツキかお前は。
「執事さんたちのなめまわすような視線……。忘れられません。夢にでそうです」
「私、前々から不思議だったんだけど、キャルってものは見えてるの? 目は見えないのよね?」
「見えるわよ」
シャルロット様の問いに、キャリオ様は平然と答えた。
「私の目は見えないけど、エルの目を通して見てるの」
「へえ、天使の視界ってこと? どんな感じなの、それ」
「ここにいても、火都全体まで見えるの。見ようと思えばね。あと、エルが見せてくれれば。でも、普段はそんなに遠くまでは見せてくれないの」
「今は何が見えてるの?」
「執事さんのおでこ。赤くなってる」
「でしょうね。すごく痛いですから」
「さっきから何の音かと思ったら、クリムだったのね。頭、大丈夫?」
「大丈夫ですが……、今の質問はなかなかショッキングなフレーズでしたね」
「そう? まあ、わざとだったんだけど」
「シャルロット様ならそうでしょうね」
「ねえ」
キャリオ様は牛乳を飲み干した。天使がばさばさとはばたいて頭の上に戻る。
「執事さんを借りていいかしら。マッサージしてほしいんだけど」
「あー……、ああ……」
シャルロット様はうめいた。
「そうね。そうだったわね」
「なにかまずいの?」
「別に……?」
「? そう? そうよね。さっきも聞いたもんね。じゃあ、執事さん、あっちに行きましょうか」
キャリオ様は仕切りがあって半分個室のようになっている部分を指さした。主には食事をする場所のようだ。
「横になれるスペースがあるみたいだし」
「はい、キャリオ様」
「待って」
僕たちが立ち上がると、シャルロット様は待ったをかけた。僕たちが何事かとシャルロット様の言葉を待っていると、彼女は手に持っていた牛乳をすべて飲み干した。半分以上残っていたが、今までのペースを無視して一気に飲んだのだ。
「私も……、行くわ」
シャルロット様は言った。
「私も、マッサージしなさい、クリム……」




