表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
118/163

はじめての迷宮の話⑪

 警鐘が聞こえてから、すぐにどたどたと足音が近づいてきた。ユンとフロイは「ひっ」と小さく悲鳴をあげて、地下牢の奥の方へ逃げて行った。

 やってきた足音は僕の鉄格子をつかんだ。


「お前の仕業か!?」

 例の血の気の多い方の看守だ。唾を飛ばしながらまくし立てている。

「なにをした! どうやったんだ!?」

「……なんの話ですか?」

 全く心当たりがなかったので、彼の飛ばす唾が届かない位置までさがった。


 本当に、何の話だろうか。僕がユンとフロイとしゃべっていたから飛んできた、というわけではないらしいが……。

 あの警鐘は僕とは関係ないのか?

 でも、僕のところへ来たということは、魔物とかでもないだろう。つまり、来たのは人間だ。

 さらに、この慌てようからすると……。


「……聖教会騎士団でも来たんですか?」

「なぜわかった!? やはり、貴様の仕業だな!? 殺しておくべきだったんだ! いま殺してやる! こっちへ来い!」

「違いますよ」

 僕はその場で両手を上げた。

「あなた達の敵と言えば、聖教会。攻め込んできたとなれば、聖教会騎士団でしょう。難しい話ではないと思いますけど」

「馬鹿にしてるのか!」

「馬鹿に教えてるだけです」

「殺してやる!」

「落ち着いてくれ。看守殿」


 入口から、新しい足音が近づいてきた。


「イ、イニチェ様……。しかし、」

「よしよし、まだいるね。よかった」

「? イニチェ様、それはどういう……」

「悪いけど、下がってくれるかな。彼と話がある」

「え、ええと、しかし、危険では……」

「……」


 イニチェはしばらく、看守を無言で見つめた後、後ろを振り返った。

 もう一人の看守は、たぶんいなかったのだろうと思う。

 次の瞬間、イニチェは看守の額を指でトンと叩いた。看守は声を発する間もなく、膝から崩れ落ちた。


「……何をしたんだ?」

「君は知ってるんじゃないのか?」

「どういう意味?」

「教本がなくなったけど、大騒ぎにはならなかったろ? 誰のおかげかなあ?」

「……」

「逃げなかったんだな」


 その声の調子から、ユンとフロイのことを言っているのだと、わかった。「二人を人質にして逃げる」よう誘導しているという想像は正しかったらしい。


「どういうつもりだったんだ?」

「想像通りだよ」

「罠だったのか?」

「ああ……。いや、そこまでじゃない。俺は君に帰って欲しかった」

「どうして? あなたに得なんてないですよね?」

「俺たちは君の処遇について毎日もめていた。そのせいで対立まで生じ始めていた。バカバカしいと思うだろ? たかが子供が入りこんだくらいで」

「まあ、そうですね」

「ま。君が教本を盗んだって俺は思ってるから、少々複雑な気分だけど。それでも、君を使って外と交渉しよう、なんてこと言い出す奴に比べたら、マシさ。そうだろ?」

「それは、ありがとうございます。助かりました」

「いえいえどういたしまして。でも、恩には着てもらおうかな」

「え?」

「二人とも、出ておいで。いるんだろ?」


 イニチェは地下牢の奥に声をかけた。

 ユンとフロイは暗闇の中から、手をつないで不安そうにでてきた。

 イニチェは外を指さした。


「聖教会騎士団が迷宮ダンジョンに入ってきた。二人と逃げてくれ」

「どうして僕に頼むんだ?」

「邪教徒じゃないのは君だけだ。生き残れるとしたら、君が一番可能性がありそうだろ?」

「どうしてこの二人なんだ?」

「才能があるから」

「話の通じる相手なのか?」

「期待しない方がいい。基本的に、彼らは問答をしない。答えてくれ。やるのか、やらないのか」


 イニチェは僕の目をみている。


「答えてくれ」

「わかった」

「やるのか?」

「ああ、やる」

 僕はうなずいた。


「二人を連れて、迷宮の外まで無事に連れていくよ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ