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はじめての迷宮の話⑨

 三か月ほど経過した。

 僕は教本にあらかた目を通した、というか全ページのテキスト化は完了した。内容はまだわからないことも多いけれど、これでいつここを抜け出しても、この本の内容は習得できるだろう。一冊だと難しいだろうけど、この本全体の内容の理解を進めれば半分以上はわかるはずだ。

 独学なら十分だろう。


 さて……、僕がここにこうして捕まっている間、邪教徒たちに動きがなかったかと言うと、どうも内部ではけっこう言い争いが起こっているようだった。つまり、僕が有罪であることは確定しているものの、その刑罰までは決定していなかったのだ。どれくらい監禁されるのか、解放されることはあるのか、さくっと殺してしまうのか。

 まだいずれとも、決まっていないのだ。


 どうしようか。もうここに三か月もこもりっぱなしだ。父上たちには旅に出ると言ってあるけど、三か月も音沙汰無しではさすがに心配しはじめるかもしれない。たぶん、もうこれ以上、僕の手札が増えることはない。

 本格的に脱出することに考えを巡らせていくべきだ。

 ……というか、ぶっちゃけ教本に夢中になり過ぎた。脱出するのが難しそうだからって、読書にかまけてしまったのだと思う。反省すべきだろう……。


 とはいえ、どうやって牢を破ればいいだろう。いや、牢を破壊することはまあ、容易い。普通の鉄のようだし、魔術でちょちょいのちょいだ。

 問題は看守であり、その奥の村人……というか邪教徒たちだ。彼らが強い。多分まともにやり合ったら、今の僕では二人までしか相手にできない。三人以上でむかってこられたらあっという間に負ける。

 重力魔術はを使えば、たしかに何とかなると思う。しかし、【支援妖精アルテミス】の補助がないと使えない。つまり、集中力が必要だ。ここぞという時に使うものであって、逃げながら使えるようなものではない。


 ……精神系魔術を使用すれば、逃げられるだろうか。看守や村人たちの精神に干渉して、この村から、迷宮ダンジョンの最深部から脱出する。

 可能だろうか。

 精神系魔術は邪教徒たちのお家芸だ。当然、対策くらいあるんじゃないだろうか。教本にはその対策の記述は無かったが、それすら想定して、彼らを上回る必要があるのではないか?

 僕ならできると言いたいところだが、厳しいだろう。というか、何の情報もなしに実行できない。上手くいけばいいが、行かなかった場合、今度こそ殺されるだろう。彼らの秘伝ともいえる精神系魔術が外の人間である僕に漏れたのだ。殺さない理由がない。

 まあ、だったら隣の牢に教本なんか置いておくな、という話だが……。


 ちなみにあそこに教本が置いてあったのは、前にそこにいた住人が魔術の研究者で、その教本を書いていたから、ということらしい。それが、看守たちの会話でなんとなくわかったことだ。

 研究のし過ぎでおかしくなって牢屋に入れられ、そのまま亡くなったそうだが、看守たちにとっては尊敬すべき人物だったらしい。だから教本も手をつけずに置いていたようだ。

 そんな本を中身だけ食べるような真似をして申し訳ないとは思う。

 でもやっぱり、だったら置きっぱなしにしておくなよ、って話だ。


 だから、僕が習得した魔術はある種、邪教徒たちの中でも異端なのかもしれない。普通の邪教徒たちの魔術よりも、効きは良い……対策も十分ではないのかもしれない。

 しかし、やはり突破できるものでもないだろう、と思う。

 教本にかかれていたのはごく基礎的な魔術だった。少なくとも、ゲームで登場したような魔術と大差ない。おそらく、基礎的なものの味付けが微妙に違うとか、より洗練されている、といったことなのではないかと思う。

 実際、書かれている内容は非常に難解で読みにくかったし。狂人あつかいされた人物が著者だと聞いて少し納得した面もあるくらいだ。そのぶん、理解できれば相当な力になるという実感もあるのだが。


 脱線してしまった。

 まあ、そういうわけで脱出するためには少々手札が足りないな、と思っていた。だからアルテミスを改良したり、覚えたての精神系魔術の練習をしてみたり、色々なことをはじめていたのだが……。


 ある日、予想外のことが起きた。

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