↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
山賊リーグへようこそ  作者: 十七夜
2:亀村にて
PR
22/79

解説者4

「ねえ、育ててもらっておいて、なんであいつは別のチームに移ったわけ? そういうの、恩知らずって言うんじゃないの? あ。言うんじゃなかった、です……っけ?」


見たところ、健太と猿渡はひんぱんに声を掛け合っていて、ふたりの間に確執があるとは到底おもえなかった。

それで、なぜ、あえてライバルチームなどに行く必要があるのだろう。

男性が、ふむ、と腕を組んだ。


「打倒健太に燃えておる怜司から口説かれたようだが、よくは分からん。まあ、健太の元に望がおっては、怜司に勝ち目がなかったのはたしかだな。望を横取りされた恨みが健太の側にもあるんで、毎回、黒と赤の対決は白熱するんだ。もしかしたら、望はそういう盛り上がりを狙ったのかもしれんがな」


翔は、豚汁を飲み干し、お椀を下ろす。


「──あいつ、どのくらいすごいの? 強豪校のセレクションに受かるくらい? プロの下部組織でも入れるくらいかな? それとも、U-16代表にだって入れちゃうレベル?」


腕を組んだまま、男性はさあな、と笑った。


「事実は、そのいずれでもない、ということだけだ。才能があっても、監督の言うことを聞かないやつは試合に出してはもらえんだろう。上にいるやつは大概すごいが、すごいやつがみな上に行けるとは限らないのよ、坊主」


分かるような分からないような気分で、翔はあいまいにうなずいておく。


「まあ、あれにその気があれば、どこででもやれるだろうて。現に、望は六チームのすべてに混ざって、さまざまなレベルの大人たちとプレーしておるし、ポジションもキーパー以外はどこでもこなしよるからな」


実はキーパーもこなすとは、どうやら彼は知らないようだ。

翔はゲームを見ていて、ひとつ気づいた。

おそらく、猿渡が球技大会の前半に見せたゴールから飛び出すスタイルは、黄色チームの長身キーパーをお手本にしていたにちがいない、と。

蹴られる危険を省みずにシュートをブロックに行くところなど、そっくりだとおもう。


「あの、黄色のキーパーのひとって、何者なの……デスか?」

「ありゃ、ただの素人だぞ」


えっ、と翔は男性の顔を仰いだ。


「留学生たちを連れてきてプレーさせておるだけだ。キーパーがいなけりゃゲームにならないからあいつがやっておるが、ルールを知っているかもあやしいもんだ」


でも一応、ペナルティエリアを出たらキーパーだろうと手でボールに触れてはならないことぐらいは知っているらしい。

長い足で幾度もボールを弾き返し、猿渡のシュートチャンスをことごとく潰している様は、実にみごとだ。


「ただ、タロウは武道をやっておってな。ボールや接触を恐れず飛び出してくるんで、相手のフォワードにはやっかいなキーパーだろう。望も、タロウからゴールを奪うのにはいつも苦労しておる」


だからこそ、翔を抑えるのにも有効だと踏んだのだろうか。

だとすると、あのいまいましいだけだった前に出るキーパーっぷりも、どことなくほほえましくおもえないではない。

ほら、と男性が指を差す。


「ああして、ゴールを背にしてボールを受ければいいんだが、スピードにのったプレーが得意な望は、動きを止めてボールを受けるということがいまひとつ苦手なんだ。それで、ミドルシュートを狙ったりもしているがの。撃つと分かっていれば相手も撃たせまいとする」


自分なら、そこでキックフェイントを使うな、と翔はおもった。

まるで心を読んだように、男性がにんまりとほほえむ。


「そうやってな、互いに出方を窺い、対策を講じ、観客もその駆け引きを味わうのが、ここでのフットボールの楽しみ方というわけだ」


男性は、翔の肩をポン、と叩いた。


「まあ、楽しんで行くんだな。自分でもプレーしたくなったら、裏に降りて行くといい」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。