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深紅の瞳に囚われて  作者: Marron
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幕間:舌の上の温度


湯気が、天井の手前でほどけていた。


皿の上には、棗が用意した料理が並んでいる。

雪人は椅子に深く腰掛け、箸を取ったまま、片手でスマートフォンを眺めていた。


「棗。聞いてくれよ」


画面から目を離さずに言う。


「今日、悠人のところに行ったんだがな。思ってたより、あいつ……」


少し間が空く。


「……だいぶ、狂ってたぞ」


棗は返事をせず、味噌汁の椀を雪人の前に置いた。

陶器が卓に触れる音が、短く響く。


「雪人様」


丁寧な声。


「食事中に、スマートフォンを操作するのはおやめください」


雪人はようやく顔を上げ、鼻で笑った。


「はぁ。おまえは母親かよ」


そう言いながらも、スマートフォンを伏せる。

箸を持ち直し、料理を口に運ぶ。


噛む。

一瞬、目が細くなる。


「……料理は最高なのにな。なんでこうも俺に反抗的なんだよ」


棗は表情を変えない。


「それは、ご自身の胸に手を当ててお考えになればよろしいのではないでしょうか」


雪人は吹き出しそうになり、喉で笑った。


「そういうところだって言ってるんだよ。まったく」


文句を言いながら、次の一口を運ぶ。

他の皿には、視線も向けない。


「でな」


雪人は箸を止めずに続ける。


「悠人のセンチネルの子。あれは、いい」


言葉を探すように、少しだけ間を置く。


「まだ粗いが、磨けば相当なものになる。軍も評価で揉めてるらしいぞ。YかZかでな」


棗は黙ったまま、雪人の皿の減り具合を見ていた。


「Zになれば、何年ぶりだ?」


雪人は楽しそうに言う。


「ああいうのは丁寧に磨かないと駄目だ。時間をかけてだ」


箸が皿に触れ、乾いた音がする。


「あとで、連絡しておいてくれ」


棗は頷く。


「かしこまりました」


一拍。


「今回は、どの程度の“寄付”にいたしますか」


雪人は箸を置き、少しだけ考える素振りをした。

視線は宙を彷徨っている。


「……景気よく、100でいい」


「承知しました。明日にでも手配いたします」


それで会話は一度切れた。


雪人は再び料理を口に運び、ゆっくり噛む。

舌の上で、味を確かめる。


「しかしな」


ぽつりと零す。


「悠人のやつ。あの子を守ろうとしてる顔が、妙に必死でさ」


小さく笑う。


「……可愛いんだよ。ああいうの」


棗は返事をしない。

ただ、雪人の皿に、静かに料理を足した。


「守るつもりで、磨いてるつもりなんだろうな」


雪人は言い、箸を動かす。


「でも、まだ途中だ。完成には程遠い」


その声は、楽しげだった。


「今後が、楽しみで仕方ない


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